南風のたよりNo6


    南の島の話し、新年・・・年越しの話 


    騒々しい年越しはドゥマゲッティーに限った事では無く、フィリピン中で同じようにウルサイ、ばか騒ぎの年越しが行われているのだと思いますが、私はドゥマゲッティーしか知らないので、ドゥマゲッティーの年越しは、と言わせていただきます。
    大晦日の街中は夕方までは込み合っています。バスターミナルには今日まで仕事をして急いで帰ってきた人と、これから帰る人の群れが入り交じってごった返しています。南のバヤワンへ向かうバスには屋根までびっしり人が乗っていました。また、バイスからやってきたバスには、こちらで年越しをする為に戻ってきた人の土産や荷物がバスの屋根に満載になっていました。
    町中の庶民的なスーパーでは、年越しの食べ物を作るための買い出しの人があふれかえっていて、入り口で入場制限をする程でした。買い物カゴの中身はみな同じような物です。メインのごちそうがスパゲッティーなので、スパゲッティーの材料が飛ぶように売れていました。ただし、このスパゲッティーを食べられるのは、ドゥマゲッティーでも中流の人たちから上です。海岸通りの影にある、TINAGOの方の人たちは材料を買うお金が無く食べらません。
    何故スパゲッティーで年越しなのかを地元の人に聞きましたが、誰もその理由は知りませんでした。昔からそうだった、という人が居る反面、20年前にはこんな物は食べなかった、と言う人も居ました。
    私の勝手な推測では、華僑の影響で、年越しに長い食べ物を食べると、長寿になると言う習慣がかたちを変えて根付いて、今はその理由は忘れ去られている、そんな所では無いかと思ったのでした。
    もう一つ、欠かせない食べ物が、ピーナッツで造るお菓子です。
    フィリピンではどこででも見かける一袋2ぺソのハッピーピーナッツを油で揚げます。たぶん塩抜きだと思います。次にそれを空煎りして油を飛ばし、中華鍋にピーナッツを移してその上からコンデンスミルクをたっぷり注ぎます。弱火で焦げ付かせないようにかき混ぜます。スプーンの動きが重くなる頃にはキツネ色になって出来上がりです。
    それを皿に広げて、固まってから食べます。ピーナッツキャラメルです。恐ろしく甘いのですが、ピーナッツのほんのりとした塩味が、うまいかも知れない、と思わせる変なお菓子でした。

    買い物を終えて車に戻る途中の道には、そこら中に露店の花火屋がいます。ロケット花火、爆竹、ファイブスーター爆竹。どこも同じ花火を売っています。私も爆竹を2000発、ロケット花火200本、ファイブスター100発を買い込みました。特にファイブスターは、花火屋のおやじに、慣れないと本当に危険だと念を押されたのですが、なめんなよぉーガキの頃から2B弾で慣れてんだい、と買い込んだのですが、ちょっと心配でした。事実、すぐ近所の鉄工所の人が指を飛ばして病院に走っていきました。
    物凄い量の花火を買い込んだのには訳があります。同行したフィリピン人曰く、来年の運の良さは今晩の花火の量で決まる、などと言うものですから、そんな事なら奮発せねば・・・となったのであります。もっとも、爆竹は200発が一連なので、2000発と言っても10回分でしかないのです。
    さて、スパゲッティーとピーナッツキャラメルとチキンで腹ごしらえをして、ラムコークなど飲みながら時を待ちます。気の早い若者が時折散発的にパーン、パーンと上げはじめますが、まだたまだ、本番は11時頃からです。 11時近くなったので、ビールのケース24本入りを持ち出し、ロケットの発射台をこしらえ、蚊取り線香を棒にくくり着け、着火の棒を作ります。来年は着火マンを用意しようと思いました。
    私の家は国道に面しているので、家の真ん前から真上に向かって発射し、燃えカスが道路に落ちるように打ち上げていました。また爆竹は車の切れるのを見計らって道路にぶん投げます。ファイブスターは聞きしに勝る大音響を発します。本当に指の一本や二本は飛ぶでしょう。それも導火線が短く、とんでもなく緊張する花火でした。
    200発のロケットは意外と早く無くなりそうで、後50発位かな、と言う所で、アクシデントが発生して、戦闘が始まってしまいました。打ち上げている内に風向きが変わり、向かいの家に着弾するようになっていたのですが、私はお構い無しに連発で打ち上げていました。そうすると向いの中国系フィリピン人の家では、これは戦争だ、と言ったかどうかは知りませんが、とにかく、攻撃された以上は応戦せねばと思ったのかどうか、撃ち返してきたのでした。向こうも弾薬は豊富らしく、20発ひとからげ位の勢いで撃ってきます。私は、1下らないから止める、2有るだけ撃ち返して止める、3玉を買いに走って応戦する、の中から迷わず、3を選んで300発を買い足し応戦しました。しかし、それでも12時間近には双方玉切れとなって終戦を迎え、平和な新年へと時は移っていきました。目出度しめでたし。ちなみに、300発のロケット花火は日本円で2500円位です。
    その後、新年を祝うイベントは道路に舞台を移し、車やらバイクやらで空き缶を引きずり回してガラガラと音をたてて走リ回ったり、鉄パイプを引きずって火花を散らしたりと、深夜まで思い思いにパフォーマンスを楽しむのでした。
    翌日は街中が休み状態で静かでした。正月でも関係ないのはダイビング屋とホテルくらいでしようか?レストランもデパートも休みでした。しかし、2日には学校も普通に始まり、街はもう新年のお祝気分はありませんでした。
    それでもまだがんばっているクリスマスツリーがありました。やはり、新年のイベントよりクリスマスの方が大事、は本当だったようです。

    ・・・ではまた。


    では、また。

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