南風のたよりNo30


    南の島の話し・・・家を建てる 


      段取りはすべて狂う

     フィリピンでは、外国人は土地を所有できない。会社を作って、法人としての所有は認められているが、それには煩雑な手続きと、多額の賄賂の要求がつきまとう。私のように金の無い人間には法人なんてとてもじゃないが無理な話だ。
    従って、土地が借り物なので、家を建てると言っても、金を出す以外は、実は私の物なのかどうかも怪しいのである。建物の登記はできるのだが、どうやって登記するのかを私は知らない。事前に図面で敷地の確認と、家の平面図から割り出した税金を納める事は知っていた。そして、それを私は払ったが、レシートの宛名は私では無かった。私は自分の家を建てているつもりなのだが、果たして、私はこの家に住む事ができるのだろうか。
     私はフイリピンで、金にまつわる数々の失敗をして来たが、実は、未だに相当甘い。これは天性の物で、たぶん、「熱帯性馬鹿」なのである。そんな訳で、遅々として進まぬ建築現場で、誰にも文句を言えず、金ばかりが出て行く現状に業を煮やしながらも、「建つ、そして住むのだ」と信じて、じっと腕組みをして大工に睨みを利かせるのであった。  

      建築費の狂い

     フィリピンで家を建てるとなったらまず大工を選び、「じゃぁ、お願いしますね」と日当その他の条件を決め、約束する。契約では無い。図面は大工が引く事も有るが、日本で言う建築士がいて、図面はその人に引いてもらった。家の大きさによっては図面など無い事も多いのだが。
    段取りで一番狂うのが材料である。はじめに決めた数量と金額はほとんど当てにならない。
    フィリピンの一般住宅はコンクリートブロックで出来ていると言っても過言では無い。例えばそのブロックだが、私の場合、はじめに言われた数量の倍近くになっている。と、言う事は、出来ている家は図面とは違う家なのかも知れない。知れない?のでは無くて、確実に違うのだった。
    材料が増えると言う事は手間も増えると言う事である。フィリピンの大工の賃金は日当である。手間が増えると言う事は、日当を払う日数が増えると言う事だから、材料代とダブルで工事費はかさむ。
    日当は週末の土曜日にまとめて払う。私の家の大工は二人。補助要員が2〜3名である。毎週土曜日には5000ペソ必要なのだ。ちなみに、大工たちの昼飯も私持ちだ。その上、時々はアフターファイブに軽くファイブイヤー(ラム酒)の一本も提供せねばならなかったりもして、何かと物入りなのであります。

     材料は自分で買いに行く

     建築材料は自分達で買いに行く。図面にはどんな材料を使うかは書いていない。そう言えば打ち合わせの時に材料や材質の打ち合わせはほとんど無かった。どうやって建築費の概算を出してきたのか不思議であるが、そこがフィリピンの良さなのである。良いのかどうかは別にして、誰かが勘ぐるように、私がフィリピン人に煙に捲かれている訳では無いと信じている。それが証拠に、ドゥマゲッティーの街のどこででも、途中で段取りが狂って建築半ばで頓挫した住宅や、未完成だが建築を一時中段して、とりあえず暮らしている家は沢山有る。甚だしいのは基礎だけで終わっている家などと言うのも沢山有る。それらは金が続かなくなったのだ。
    そんな訳で工事の進ちょくに合わせて材料は買い足して行き、自分の懐具合で材料は変わって行く。
     当初の私の計画では、私の家は本当にバンブ−ハウスだった。基礎から窓の高さまでをブロックで組んで、その上は安いココランバ(椰子の木)とアマカン(竹で編んだ壁)で仕上げるつもりだった。屋根だってココランバにニッパで済ますはずだったのが、何故かこうなってしまったのだ。
    理由は、ダイビングのお客さんが家に来た時に、その手の家では人間的に信用してもらえないだろう・・・などと言う日本的な考え方を、相棒のジェフリーに吹き込まれた事からこんな風になってしまった。当初の予算は4万ペソ、10万円だったのだが。

     コンクリートと鉄の家

     先にも書いたが家の材料はコンクリートブロックである。そして屋根は鉄骨を組んで、その上に波板のトタン張りである。10月現在、足場以外では木材は一切使っていない。すべてコンクリートである。
    例えば窓枠や玄関のドア−の枠もコンクリートで造る。造り方を克明に書けば相当にややこしい文章になりそうだし、私には表現出来そうも無いので止めておくが、とても綺麗に造る。この事から考えるとフィリピンの大工は日本で言う所の左官屋の仕事の方がウエイトは高いのかも知れない。
    鉄とコンクリートの弊害は熱である。屋根は焼ける。だから屋根の何処かに風の通り道を開けておく。そして、天井と屋根の間には2メートル近くもの隙間を開ける。これが少ないと熱がこもってしまって暑くて住みにくい家になる。
    何故それほどまでに木材を使わずに造るのかを考えてみたが、たぶん、コンクリートが安くて丈夫だからだと思う。丈夫の意味は、虫に喰われないと言う意味だ。ココランバは蟻の大好物で、柱だろうが壁だろうが巣を作る。またジェミリーナのような家具を作るのに適している材木は単価が高いので大量に使うと大変な事になる。そんな理由から鉄とコンクリートなのだと思う。

    多分今月完成の予定

    9月の半ばには完成と言っていたのが、今たぶん6分半の出来かと思います。
    今月末には完成すると、希望的観測なのですが、はたしてどうでしようか。資金的にも当初の予算を大きくオーバーしてしまって、ちょっと後悔モードも感じつつ、後に引けなくしている自分を冷ややかに見ています。
    取りあえず、完成までに後一度か二度は続きを書きたいと思います。


    10月1日の姿 1



    10月1日の姿 2


    では、また。

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