南風のたよりNo22


    南の島の話し・・・フィリピンのコーストガード 

     フィリピンにも沿岸警備隊がありまして、今盛んに体制を整えている最中であります。
    昨年まではちょっと大きなフェリーが・・・フェリーと言っても渡し船程度の物で、大型のバンカーボートで対岸や近距離の島へ人を運んでいる船が発着する所に駐在所を作っていました。しかし今年はだいぶ奥地まで進出して来まして、とうとうマラタパイまでやって来ました。
    おやおやと思っていたら、この春にはなんとアポにも駐在所を作ってしまいました。
    で、そんな事が何か私に関係があるのか?と言うと、これが大有りなのです。私がダイビングを業として営んでいる事がバレバレになってしまうのがまず問題1です。そして問題2は、コーストガードが名簿を提出させる事です。名簿にはダイビングボートに乗船する全員の名前を書かなければなりません。私は人の名前とか年令とか、電話番号とか・・・とにかく頭が悪いのでまったく覚えられないのであります。だからいつもお客さんの名前と年令を適当に書くのですが、どうも最近、それがバレているようなのです。それもそのはず、女性はHNAKOと男性はTAROが頻繁に出てくるのですから、敵も変だと思うわけです。
    いったい日本中にはどれくらいの花子と太郎がいるのかと聞かれてしまいました。そして佐藤さんと鈴木さんも沢山いるなぁといわれました。
    最大のポイントは、ダイビングボートに定員が設定された事です。陸を走る軽トラに10人乗っても平気な国が何をしゃらくさい事をと思ったのでありますが、どうも保険を掛けはじめたらしく、保険の設定から来る定員のようです。
    そして、役に経つかどうかは別にして、救命胴衣も搭載が義務付けられたようです。私にしてみれば、役にたつ救命胴衣とは思えませんし、ダイバーはBCDという優れた浮力体を持っているし、エマージェンシーブイやら海面着色剤やら笛やらと小道具はふんだんに持っているので少し多めに乗せろと言ったのですがダメでした。フィリピンも役所仕事はこんなものと・・・。
    しかしいい加減の極みは現地人が船に乗る時であります。ダイバーの定員4名の船にしっかり4名のダイバーが乗っていて、ちょっとアポ島まで乗せてってくれと言う現地人が3名現れたとします。コーストガードも船頭もなんのもん句も挨拶も無く乗せてしまいます。私がすかさずコーストガードの係官に定員オーバーではないのかと言うと、ダイバーの定員が4名なのだ、と屁理屈をこきやがった次第であります。
    あとでこのオフィサーと飲みながら話す機会が有り、ミンダナオでの戦闘の事などといっしょにダイバーの定員と保険の話しを聞きました。保険の適用はダイビングを目的に運行している時にダイバーとしての旅客に限られていると話していました。よって現地人が沈みそうな程乗り込もうが本当に沈もうが関係ないのでした。
    アポ島にも駐在所ができまして、係官が独りぽつんと日除けのひさしの下で暇を持て余していました。昼飯時に少し話しをしてみました。やはり治安上の問題から駐在するようになったとのことでした。この島から余り遠く無い場所にアメリカ軍のヘリコプターが墜落したとのことで、新人民解放軍の仕業と言っていましたが、別の所では事故による墜落だったと聞きました。どちらが本当かは分かりません。
    確かにこの島からでも、高速船なら1時間ちょっとでミンダナオの端っこに着いてしまいますから、テロリストが観光客を襲う事が無いとは言えません。しかし、襲った後に自分の逃げ道も確保できない孤島では、現実には可能性は薄いと思います。
    モスリムの人が居て協力してくれる所はけっこう危ないそうですが、アポは100パーセント、クリスチャンの島です・・・たぶん。
    それにして政府の役人、コーストガードのオフィサーが帰りがけに毎度まいど「チップなチップ・・・少しな」と日本語で言うのはやめてもらいたいです。
    マラタパイも以前の賑わいは無く、ダイバーもまばらになりました。10年前、アポがまだ秘境かと思われていた時にはここからボートを出すのがほとんどで、親方のホアンも大急がしでしたが今は暇です。10年前と同じボートがくたびれてしまって、ペンキの塗り替えもままならない様子です。
    今お客が少なくとってものんびりしているアポ島です。6〜9月ベストシーズンのアポに来てみませんか。



    では、また。

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