南風のたよりNo19


    南の島の話し・・・2度目の正月と寒い冬 


    2度目の正月をドゥマゲッティーで過ごしました。今年は国道沿いからだいぶ引っ込んだ場所に引っ越したために、昨年のようなエキサイティングで騒々しい正月にはなりませんでした。
    ドゥマゲッティーは北緯12〜13度ですから、寒いなんて事はあり得ないなんて思うかも知れませんが、ところがどっこい、寒い日もあるのです。私の家の寒暖計は最低21度を指した事があります。Tシャツにパンツ一丁で寝ている私にとっては、明け方の21度は寒いのです。ドゥマゲッティーが曇り空で風が強く寒い日に日本に電話をしてみると、仙台が大雪だったりする事が良く有ります。3000キロ以上も離れていて何の関係があるのか分かりませんが、不思議に似たような傾向に有ります。
    年が明けてからすぐ、天候は不順になり、ドゥマゲッティーは寒くなりました。
    お正月はドゥマゲッティーの家で一人きりだったので、一人で街に飲みに出かけました。しかし、今年のドゥマゲッティーはオーストラリアのお客さんやヨーロッパの観光客も少ないようで、街中の溜り場も昨年より静かでした。フェリーターミナルの桟橋などでは景気よく爆竹が鳴らされていましたが、全体的には爆竹やファイブスターの爆音も少なく感じました。
    それでも私が晩飯を食べに行ったトッシーノプラザでは、バカでかいスピーカーを設置して、年越しオールナイト簡易ディスコを開いて盛り上げようとしていました。ここに若者が繰り出して来るのはカウントダウンが近付く頃で、私がいた9時〜10時頃は閑散としていました。
    針金で釣り下げられたミラーボールの下で、ストリートチルドレンが踊っていました。
    私はトッシーノプラザへお客さんを連れて行くのが好きです。自分が気に入っている場所は他の人にも紹介したくなってしまって案内するのですが、ほとんどの人はこの場所を気に入ってくれます。
    露店の屋台の集合体、トッシーノプラザの前は未舗装の道路です。昼間ならもうもうと立ち上るほこりが盛大に見えます。
    トッシーノプラザでは土ぼこりの中で飲み食いしているのです。しかし夜はそのほこりも見えないので気にはなりません・・・そう言う問題ではないか?
    手づかみで串焼きの鳥やブタ串を食べるのですが、満足に手を洗う設備はありません。トイレも有りませんので女性は難儀するかもしれない場所です。
    屋台のおばちゃん、NANAIは気を使って、フィリピン人には出さないペーパーナプキンを一袋テーブルに置いてくれます。もしもフィリピン人にそれを使わせても、ほんの2〜3枚で用は足りてしまうでしようが、日本人は3〜4人で50枚入を粗方一袋使い切ります。最近勘定を払う時にビールが2本多く付いていた事に気が付いて聞いてみると、ペーパーナプキン代だ、とNANAIは言いました。なんだ、ちゃっかり金取ってるじゃないか。
    不衛生?騒々しい?勘定は怪しい?・・・それでもここの雰囲気こそがドゥマゲッティーの本当の夜の顔なのだと私は思っています。
    この屋台にお客さんを案内して食事をしていて毎回思う事があります。私らが食事をしているテーブルの下に野良猫や野良犬が集まって来て食べ残しをねだります。犬好き、猫好きの違いは有ってもほとんどの人が食べ残しの鳥の骨や串焼きの魚の頭などを与えます。中には食べ残しとは言いがたい、食べている最中の自分の食べ物を与える人も居ます。私はこの時に軽く冗談のように「今にもっと可愛いいのがもらいに来るから・・・」と言い、犬猫にどんどん与えるのは止めた方が良いと言います。その理由は、ストリートチルドレンが骨に残ったわずかな肉を求めて、私らがテーブルに座った時からこちらの様子をうかがっているからです。
    彼等は食べている最中に来る事はほとんどありません。暗黙のルールなのです。食べ終わってもう手が動かなくなったのを見計らってやって来ます。そして言葉は発せず、残り物の骨を指差して口に運ぶ仕種をします。外国人、特に日本人が食べ残す時しかチャンスは無く、地元の人たちの食べた後には本当の骨しか残っていません。チャンスは多くは無いと言う事です。
    そして彼等の最大のライバルが野良猫、野良犬なのです。犬、猫は食べている最中から押し掛けて来るので有利なのです。ストリートチルドレンもそうしたいのは山々なのでしようが、食べ終わる前に侵入すれば屋台の人たちに追い払われてしまうので我慢しているのでしよう。それとも、人間としての誇りが犬猫と同列になる事を拒むのでしようか。
    ふと日本のホームレスと比較してしまいます。裕福では無い国の最下層は豊かな国の最下層よりもずっとずっと厳しいのだと。こと食べ物にだけ限って言えば、フィリピンの平均的な家庭の食事よりも、日本のホームレスの方が豊かも知れません。(私は日本のホームレスは詳しく知りもしないで書いていますが)

    南風の便りと題して、南の島の楽しい話、エキゾチック・ロマンチック・南国チック・・・?な話しを書く予定でこれを初めたのですが、時間を経るに連れてだんだんフィリピンの社会的な話題や生活の話しに傾いてしまって、楽しくもなければ、南国チックでも無い話題になってしまうのに少々苛立っています。
    バレンシァの美味しい「ハロハロ」の話しを書いても、私が書いたのでは、いくら誇張したところで3行で終わってしまいます。私の見る観点が、エキゾチック・ロマンチック・南国チックとは掛け離れているのでしようね。まあ、真剣に読んでいる人も居ないとは思いますが。


    では、また。

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