よたよたと、山登り


    No.38 長倉沢を詰める

     

      7月12日 桑沼駐車場(9:30)〜大倉尾根(10:20)〜氾濫原(11:20)〜長倉尾根(15:10)〜桑沼駐車場(17:10)

     夏はやっぱし「沢」でしょう、と言う事で、気軽に行けそうな沢を物色してみた次第であります。
    まあ、気軽に行ける沢と言うのがどういう物であるのか、そこん所はとても重要なんでありますが、要するに、危なく無さそうで、それでいて雰囲気はある、と・・・贅沢ですね。
    そんな訳で思いついたのが、氾濫原から大倉沢を詰めて、長倉尾根の水源に出る、と言うコースで在りました。
    へえっ?登ったのは大倉沢じゃなくて、長倉沢になっているが、そこんところはどう言う訳だと言うのは、沢筋を読み違えて間違えて長倉沢を詰めちまったと言う、ただそれだけの事であります・・・大した事では在りません。

     桑沼は水位が下がり、岩が露出してより見栄えが良くなっていました。
    呑気に景色など眺めながら、緊張しない山も良いな、と、氾濫原までお散歩であります。
    大倉尾根までの急登も前日の晴天で道も乾き、滑る事も無くとても気分良く汗を絞って行ったのであります。
    氾濫原到着は11時20分でありました・・・登山靴から沢タビに履き替えながら小休止であります。

    氾濫原の少し上、尾根から降りて来た徒渉点で休憩です

     沢タビに履き替え、一応ザイルの変わりに持って歩いているホームセンターで買った6ミリ20メートルのロープなどもすぐ取り出せる所にぶら下げ、おにぎり一個とアンパン一個を補給して出発であります。
    僅かに、ぽつり、ぽつり、と雨が落ちて来ていますが、高曇りでして、ドッと来る事は無さそうでありました・・・沢で大雨降られたらまずいんですけど。
    徒渉点から大倉沢上流を望む

     歩き初めは明るく開けた渓相で、気分の良いスタートでありました。
    踏みやすい大きめの岩が点在し、傾斜も緩く、なんとなく、全く根拠のない楽勝ムードであります。
    全く根拠が無い理由は明確であります・・・だって、この沢始めてなんですもん、と。
    しかし、私は沢を遡る事にかけて、いくつかの武器を持っているんであります・・・忍耐・根性・気合いの三つであります。 まっ、どれもこれも本人の思い込み一つと言う危うい武器であり、しかも、総てが気持ちの問題であるところがちょっとナニでありますが・・・。
    と、言う事で、私は沢登りの技術も道具も持ち合わせて居ないんでありますが、まあ、どうしても行ってみたい訳であります。

      
    大東の樋の沢を彷彿とさせる形状とナメ沢・・・まだ気楽です

     歩く事30分、左手に水量の少ない沢が合わせて来ました・・・まさか、これじゃないよな?で、地図を広げてしばし思案であります。
    地形図と登山地図と、そして、最新兵器のGPSも総動員してルートを検討する事1分・・・沢が小さいし歩き難そうだから違うだろ、と水流の太い沢を前進。
    12時20分・・・イワナ釣りの釣り師が転がるような早さで下って来るのに遭遇・・・そうだよな、下山の時刻だよな、と。

    岩の上の表土は薄いのか、ブナの大木が根っこから倒れている。

     渓相は悪く無いのですが、倒木がやたらと多くなり、行く手を阻んでスピードががた落ちであります・・・しかし、まだ余裕です。
    この時点ではまだ、本人は水源に向かっているつもりでありますから、午後の二時くらいには詰め終わる予定で居る訳です。
    いや、仮に水源に向かっていたとしても、一度も通った事の無い沢を詰めているのでありますから、まず、いい加減なもんであります。
    ナンと言っても、滝の無い沢や渕のない沢は無いのでありまして・・・やっぱり出て来た訳であります。

    滝が見えて参りましたが、当面の問題は、目の前の倒木です。

     ほーら、やっぱりだもの、と、言う事で滝が出現であります・・・この時点で、まだこれを、登山地図に乗っている「黒滝」だと信じております。
    いやぁ、現れたな・・・しかし、ナンだなっ、倒木のしつこさと言ったら嫌になるな・・・障害物競走になって来たな、と、まだ呑気であります。
    倒木を乗り越えるんでありますが、これらの木は倒れてもなお枯れる事無く葉を茂られている訳でありまして、ゆるく無いのであります。

    ざっと見てドーですか?ベテランさんなら正面から突破できますか?

     さて、目の前に現れた滝は、高さ10メートル弱・・・私の技量では、取りつく島は無し、と言う事でさっさと高巻きを決め込んだ訳であります。
    で、私の見立てでは左から巻いて、と思って登りかけて対岸を見ると、トラバースの危なそうな所に、なんと虎ロープを発見したではありませんか。
    いやぁ、これは有り難や有り難や・・・んじゃぁ、と言う事で、河岸を変えて再度登り始めた訳であります。
    しかし、滝の近くと言うのはどうして一様に急斜面なんですか・・・急じゃなきゃ滝になん無いでしょ、と。
    そんな訳でズルズルに滑る斜面を、草の根っこをひっ掴んでよじ登るんでありますが、足が滑って顔面を地面に強打致しました・・・ああ、眼鏡が。
    で、眼鏡は無事だったんでありますが、その時、お口に腐葉土をたっぷりと含んでしまった訳であります。
    うげぇー・・・と、思いきや、少しカビ臭い気はしましたが、なんとなく嫌な物が口に入った感じでは無く、余り違和感が無い物でありました。
    ミミズやモグラが地中を好む一端を垣間みる事が出来た貴重な体験ではありましたが、二度としたいとは思いません。
    で、滝から上は余り人が入らないのか、歩いていると岩魚が驚いて暴れる訳であります・・・うん、虎ロープも古そうだし。
    水流が細いのでやろうと思えば手づかみも行けるんですが、持って帰るのが面倒で止めました。

     災難の後は大抵穏やかな時が待っているものでありまして、道は平穏でありまして、歩く事30分・・・。

    また出ましたよ・・・今度はきれいな二段滝であります・・・絵になりますなぁ

      うーん・・・私の沢登りの方法としては、滝は総て巻く、と、言う事になっている訳であります。
    いや、やってやれない事は無いんでありますが、万が一を考えた場合、滝から落っこちて中途半端に生きたまま動けず、熊に喰われるのは嫌でありますからね。
    そんな訳でこの滝もまた巻く訳でありますが、これは右岸から大きく巻いた訳であります。
    と、言うのは、取り付いた斜面の岩がボロボロと崩れやすく、程良い手がかりだと思って掴むと抜けて来る訳であります。
    これは、あんまし滝の近くから降りようとすると難儀するな・・・でも、その分薮漕ぎが酷いんですけど、まあ、落ちるよりは痛く無いし、と。

    薮漕ぎの際の目の前の情景を、目の高さで撮ってみました。

     この地点の標高はすでに980メートルになっている訳であります・・・水源の標高は950メートル前後だったはず。
    と、言う事で、なんぼ鈍い私でも、違う沢を登っているな、と気が付く訳であります・・・しかも、予定の2時間は過ぎちまってるし・・・。
    実際、地図で読んだ距離はとっくに歩いているなと思う訳で、しかも、行くべきゴールの場所より標高が高いとなると、さて、私は何所へ向かっているんでありましょうか、と。
    で、GPSを引っ張り出してみますと、見事に坊主岳(三峰山)を目指しているではありませんか・・・そうか、この沢は長倉沢か、そう言う事か、ふぅっー。

    おおっ、沢の前方が開けて明るい・・・あれは正しく長倉尾根だ、が・・・

    そんな訳で無事に滝を巻きまして、また沢に戻ったんでありますが、高巻きで登った斜面のちょっと先にも明るい尾根が見えていたんであります。
    で、その距離、短く見積もれば400メートルで長くても600メートル・・・楽に抜けられる距離であります。
    が、しかし、この段階に至って私の目的は、長倉沢の源流を詰め、水源を確認する、に変更になっていた訳でありまして、尾根に逃げるなんて軟弱な事は出来ないんであります。

    ブナって言うのは倒れやすい、折れやすい木なんでありますか?

       一難去ってまた一難・・・へん、ナン難でも来やがれ、薮漕ぎと倒木乗り越えはもうベテランだいっ・・・しかし、これはちょっと酷いです。
    と、言う事で、沢は倒木と流木と夏草に覆われ、水は見えない状態であります。
    倒木の乗り越えは薮漕ぎよりも厄介で、乗れると思った木がボキっと折れたり、足を置いた枝が沈んだり、まず、サバイバル度は満点でありました。
    で、GPSを見ますと、登山道から離れる事500メートル程の距離を保って坊主岳に向けて登っている訳であります・・・帰り道逆なんですけど。
    しかし、水源を見ずして源流と言う事なかれ、と、言うではありませんか・・・えっ?別に言わないですか?
    そんな訳で、沢登りと言うよりはほとんど薮漕ぎの様相を呈して来た細い沢を、意地で詰めて行った訳であります。

    これが水源であります・・・これより上に水はありませんでした。

     ギャッホー・・・正真正銘の水源だ・・・長倉沢、詰めたドォー、と、喜んだのも束の間であります。
    余りの薮の為かGPSが時に非ぬ方向を示すのでありまして、何だかお前、俺を陥れようとしてないか、と疑う訳であります。
    で、立ち止まるにも薮蚊と申しますか、その様な虫が何千万匹と取り囲む訳でありまして、口なんか開けて息を吸うと、一度に200匹くらい吸い込んじまうか、と言う程に酷い訳で、立ち止まれないんであります。
    で、歩きながら頼りにならないGPSを睨みつけて、なんとか薮の楽な方へ迂回などしつつも、尾根筋の登山道を目指す訳であります。

    出ました・・・三峰の急登が始まる少し下でした1150メートル地点でした。

     ホントーは登山道まで50メートル程度の地点まで来ていたのでありますが、薮が酷くて明るい方が見えません。
    で、自分の帰り道は下り方向と言う事で、少しづつ下がりながら登山道へ出ようと言う余計な技を使ったが為に、なんと、登山道と平行に、余分な薮漕ぎを400メートルも追加すると言う御目出度い事をしてしまった訳であります。
    いや、地図を読むとか、GPSで分るとか・・・まあ、ベテラン様なら雑作も無いんでありましょうが、薮を漕いでいると木の枝や笹がおもしろがって意地悪する訳です。
    小枝が私のメガをを奪い取ったのは一度や二度ではありませんで、その度に、眼鏡はどこだぁ・・・と、やらなくてはならない訳です・
    で、思うんでありますが、明確にグイグイと登る斜面は笹などは比較的少なく、尾根に近い緩斜面は笹薮が酷い訳であります。
    そんな訳で、薮を彷徨いつつ見つけた一筋の光明・・・水の無い沢みたいな筋の先に尾根の明かりが漏れているのを見つけ、登り切って出てみたら、なんと、三峰山が目と鼻の先と言う所でありました・・・いや、そこから見えた訳では無く、雰囲気的なもんでありますが。
    で、本日、沢登りの極意を見つけました・・・沢登りとは薮漕ぐ事と見つけたり、であります。

     さて、 一休みしたかったんでありますが、例の蚊のような虫が何十万匹と襲って来る訳でありまして、沢足袋を脱ぐのも立ったままです。
    腹は死ぬ程減っていますが 、こんな所で座って飯など喰っていられるはずも無く、ポケットにパンを入れまして登山靴に履き替え完了次第出発であります。
    で、先ほどまで水の中を歩いていたので水を飲みたいと思えばいつでも飲めた訳であります・・・がぁ、水筒はどう言う訳か空っぽであります。
    ああ、水飲みてぇ・・・水源まで遠いんだべかねぇ・・・熊の平さえ未だなのに・・・水飲みてぇ・・・じゃ、パン喰おう、などと帰りを急ぐ訳であります。
    私の秘密兵器、虫除けにはミントスプレーは、虫の種類と時期によってか、ほとんど効果がない事もありうる事を知り、ちょっとショックであります。
    で、いつものように大倉尾根から桑沼への下りでは、ズルズル滑って尻餅など付いて転がるようにして下った訳であります。
    はっきり言って、ここの下りは難所でありますよ・・・毎回転びますから。

     で、駐車場到着は、17時10分でありました・・・ホントーに疲れました。

    GPSが示す標高と、相対高度計の値の違いです・・時計はどちらも電波時計で正確ですね。

      

     沢は・・・一人で行くもんじゃ無いかも・・・しかし、次回は大倉沢、詰めてやんぞぉー、と。


     この話 完


    まあ、適当に書いてますんで、眉唾で読んで頂ければ幸いです・・・


    ご意見ご感想は 承っておりませんが・・・


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