南風の写真便り

       

〜MDS サンタモニカビーチ支店〜


   サンタモニカビーチリゾート・前

 ひょんな事から・・・いや、正直に言えば酔った勢いだったのだが、とにかく、サンタモニカビーチ前にMDSを引っ越す事にした。
もともと自宅兼のMDSには、およそ普通のダイビングサービスの雰囲気は皆無であったので、ビーチ前と言う響きには憧れていた。
そんな訳で、この場所の話が持ち上がってから後は、ひたすら家賃と売り上げの兼ね合いを考え、家賃の値切り交渉に明け暮れた。
月額ウン万円?・・・まるで鶏小屋みたいな建物を破格の高値で借りる事になったが、まあ、憧れのビーチ前だからと飲み込んだ。
それにしても、ここはフィリピンですぞ、と思うだが・・・借りてしまってからでは後の祭り。
多少の勝算はあっての事なのだが、商売のセンスはほとんど無いので、どうなるものやら良く分らない。
勝算とは・・・目の前のサンタモニカビーチのダイビングスポットが、思いの他良いのだ。
と、言う事で、目の前のビーチがとても良いのだから、ここを潜るサービスを作ろう、と言う事になったのだ。





  只今工事中・・・?

 いくら鶏小屋に毛のはえた程度の建物とは言え、要所ではプロの大工も必要だろう、と言う事で、我が家を立ててもらったエリックに助っ人を頼んだ。
最初、こんな鶏小屋は1日でカタが着くと言っていたジェフリーとエリックだったが、取りかかってみるとそうでも無さそうだった。
まず、5年前までサリサリストアーとして営業していた鶏小屋の大掃除に結構な時間が掛った。
フィリピンのサリサリを御存知の人ならばお分かりだと思うが、金網や鉄格子などと言う余計な造作がくっ付いているのだ。
それらの撤去で最初の1日は呆気無く終わってしまった。





なんで? 昼間からビールなの?

 一生懸命大工仕事とペンキ塗に励む一方、こういうイベントがあったならすぐにお祭りにしてしまうのがフィリピン人だ。
経営者としては、こいつら真っ昼間から一体全体何を考えてやがるか、と腹がたったのは随分昔の事。
今では、率先してこのようなお祭りを始めてしまうのが私であります。
いや、始まりは純粋に昼飯のおかずの魚を買っただけだったのですよ・・・純粋に。
買った魚は、たった今まで目の前の海面で飛び跳ねていたヤハラソン(小型のカツオ風)を3キロほど。
ヤハラソンを焼いて昼飯にしようと、ペンキ塗をしている傍らでソッバ(バーベキュー)を始めたのでした。
魚焼き班長はジェフリーでした。
ジェフリーが、炭が足りないと言い出して、bom・・・炭を買って来てくれ、と言われてハイウェー近くのサリサリへ。
サリサリで炭を買う時に店番のおやじさんが、ビールは要らないのか?と聞いて来た。
私は、ワラナァ クワルタァー ァコ(俺、金無いもん)と言ったのですが、おやじさんが、ウータン ナラン(付けとくよ)と言って、冷えたビールを1ケース持たせて寄越したのです・・・これを断れば失礼に当たります、から?
 



  焼き立ての美味さは抜群です

 昼飯準備委員のジェフリーが一生懸命ヤハラソンを焼きます。
3キロで100ペソのヤハラソンは、数にすると15尾位・・・チャンゲ(市場)では倍の200ペソ位になりますよ。
第1段目の5尾が焼き上がったところで、堪らなくなった私がビールを開けてしまいました。
そこへ、香ばしい焼き魚の臭いに釣られた近所の連中が、ふらりふらりと集まります。
最初は遠巻きに眺めていて、何か手伝えそうな仕事を見つけるとさらりと作業に参加します。
そして、一頻り手伝って汗をかくと、ビールのグラスにそっと手を伸ばします。
一杯飲めば後は勢いづいて、お祭り気分へまっしぐらです。
焼たてのヤハラソンを手でむしって、醤油と酢とカラマンシーにトウガラシを入れたソースを付けて食べます。
けっこう沢山塩をかけて焼いているので何も付けなくても美味です。
その場合は日本のカツオの鉛節(ナマリブシ)似ていて香ばしい。
一番美味いのは身の部分よりも熱々の内臓です・・・苦味がビールに最高です。




 オープンエアー風ダイビングサービス・・・?

 いえいえ、何も好き好んでオープンエアーにした訳では無いのです。
ジェフリーはハワイアンスタイルなんて戯けていましたが、とてもとても、そんな立派なものでは有りません。
何せ、元はサリサリストアーですから・・・それにカワヤン(竹)とニッパ(ヤシの葉っぱ)でテラス風に屋根を掛けただけですから・・・。
でも、椰子の木なんか植えてみたら、何となくそれらしく、至ってフィリピンチックにキュートに仕上ったのでした。
まあ、日本語ではっきり言えば、貧乏臭いと言う事になります、か?
それでもビーチの真ん前は風通しが良く、ベンチに座ってぼーっと海を眺めるのには最高です。
いや、しかし、スタッフや私がボーッと海を眺める為の場所では無く、ダイバーのお客様にリラックスしてもらう場所なのですが・・・。
でも、どうせ暇なMDSですから、日がな一日、スタッフ全員で、心地よい海風に吹かれて居眠り、なんて事になるのでは?・・・。



 ペインティングも自力で・・・!

 MDSは金は無いけれどスタッフは業師揃いだ。
バンカーボートのペンキ塗も船名のレタリングも全部スタッフがやっている。
なので壁のペンキ塗やレタリングも当然のようにスタッフがこなす。
まずは、顔に似合わない器用さのジェフリーがフリーハンドでさらさらと下書きをして行く。
それを緻密で繊細なリチャードが仕上げて行く。
出来上がりは写真よりも現物の方が数段良く、サンタモニカビーチにすっかり溶け込んでいる。
思いの他高かった家賃はまあ仕方が無いとして、この大工仕事の総予算は安く上がった。
本職のエリックの他は、ビールとラム酒が日当代わりだ。
近所の皆も夕方一杯奢っただけで、無料奉仕で手伝ったくれた。
と、言う事で、MDS・サンタモニカビーチ支店は、総工費50000円で収まった・・・勿論、ビール代も込での話ですよ。

          海風の心地よいサンタモニカビーチで、一杯やりませんか?
          ビーチで待ってますから・・・。





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