南風のたよりNo92


    ドゥマゲッティーから、の便り


     魚取りと大深度ダイビング

       12月某日 ?曜日 お客さんのKさんと魚とりに行きました。 

    仮にもダイビングのインストラクションをする立場であるからして、大きな声でスピアフィッシングをして来たぞと言うのは、ちょっとまずかろうと言う声もたまには聞くのでありますが、まあ、私が多方面に「不良おやじ」であることは、皆様既にご存知と言う事で、今日も魚とりの話であります。
    シキホールのポイント名は「ドン・ディスコー」であります。なにやら名前からしてとっても可能性を秘めた怪しい名前だと感じませんか?
    スポツトのロケーションは抜群であります。リーフエッジぎりぎりの砂地の浅場にアンカーを打って準備をして、エントリーです。正面にドゥマゲッティーを見るあたりで、そこから南の方へ流されながら魚を探して行きます。リーフエッジからどーんと下まで行くとちょうど50メートルのドロップオフであります。
    今回のダイビングは今日が一区切りであります。いわゆる最終日と言う事でありまして、自然に気合いが入ります。
    この日までに何度か水中銃を持って出かけているのですが、潮回りも良くなくて大した成果が得られていませんでした。なのでシキホールには余計に期待がかかる訳であります。
    一番初日に本命のアントゥーランに遠征しているのですが、これがMDSらしくなく段取りが悪く失敗に終わっていまして、お客さんのKさんには申し訳なくて是非今日は大物を一発・・・気持ちだけは常に大物狙いなのでありますよ。
    アントゥーランの失敗はボートの故障と言う不可抗力でもあったのですが、どうもKさんは今回つきが無いと言うか、何かが憑いていると言うか、不調であった様子であります。
    まず、初日、リニューアルしたMDS3が走り始めてすぐ、バーコンの前あたりで故障して二時間もロスした上に、この日が一番の高波でした。出遅れた上に強風と高波で船足が遅くなり、アントゥーランにボートが到着したのは既に昼飯時近くと言う有様でした。
    そして、その翌日、魚取りのKさんと普通のファンダイビングのお客さんは分けた方が良いだろうと言う事で、KさんはMDS1に乗ってシキホールへと段取りを組んだのでありました。が、しかし、Kさんはやっぱり憑かれていたのか、なんとMDS1が走り始めて10メートルで故障すると言うハプニングでシキホール行きは没でありました。
    MDS1の故障というのは、事故でありました。普通では考えられないバカバカしい事故でした。船の向きをちゃんと確認しないで走り出した為に、スタートしてすぐに浅瀬の岩にスクリューを当てて壊してしまったというお粗末劇でありました。ちなみにこの日の船頭は、臨時のキャプテンでありまして、もうすでに始めから雲行きは怪しかったのであります。
    Kさんが憑かれているのはたぶん「ダダ」であります。ダダがKさんと遊びたくて何やらかにやらチョッカイを出しているのだろうと私は思っていました。セブから到着したKさんは直ぐにダダの墓参りに行ったのですが、ダダはKさんが来てくれた事が嬉しくて、この後数日憑いて回ったのだろうと思っています。
    さて、ドンディスコーでは私もKさんも魚は捕れませんでした。一緒に行ったダニーさんがかろうじてフエダイを1匹仕留めて来たのみでした。BOBONさんは私を追って来たらしいのですが、気がつくと見当たらなかったので違う深度で行ったのだろうと思っていました。私の最大深度はアドバンスの教科書がここまでですよと言っている深度からもう一息深く行きました。長居の出来る深度ではないので早足で岩の回りを回って行きます。中型のラプラプを発見して撃とうとしたのですが引き金を引いた瞬間にロックが掛かっていたのに気がつきました。一瞬を逃せば勝負は終わりです。ラプラプはとっくに深みに逃げてしまっていました。
    後で聞いたらBOBONさんは窒素酔いで朦朧としてすぐにボートに上がったとか。詳しくは聞かなかったのですが、少し浮上しても覚めなかった所を見ると窒素ではなくて、逆に過呼吸か何かでは無かったかと思うのですが・・・。BOBONさんは最近ダイビングにはまった人で、経験は浅いようでした。
    私の銃の不調はこの後も時々現れて、終日、ここぞと言う時には撃てないという無様な一日でありました。私にもダダがチョッカイを出していたのでしょうか?
    一本終わって上がって、いつもならビーチにボートを着けてランチタイムなのですが、お客さんがKさんと言う事で、揺れるボートの上でお昼にしました。
    東からの風が強くて、ボートの日除けを掛けて日光を遮ると寒く感じるし、さりとて、直射日光を浴びるのもまた辛く、按配良く寝転がれる場所が有るMDS3なのですが中々上手く行かないものです。


      DANYさんの獲物

     いつもいつも書く事ですが、水中銃を持って潜ったら簡単に魚が捕れると思っている人がいますが、それはとっても大きく大きく大きく間違いであります。私がド下手くそと言う事を割り引いても、真っ昼間、そう簡単には魚も撃たせてくれません。もっと大変な事は、ちょっとくらいダイビングの経験が多くても、水中銃の扱いはとても難しいという事です。まず、シャフトに引っ掛けるゴムを水中で引けるかどうかの問題が有ります。銃にシャフトをセットする時に、水深が深かったり流れが有る所でシャフトをセットしてラインをきちんと巻くと結構な時間とエアーを食います。流れになびく細い紐を銃に巻いて引っかからないようにするのはなかなかコツが要ります。そんな訳で、水中銃を持って入って、タンク一本分の50分で実際に撃てる回数は、私は多くても10発はありません。ほとんど5回も発射すれば良い方です。場合に因ってはこんがらかったラインをほどいたり、なかなかセットできないシャフトをガチャガチャやっている内に試合終了なんて事も多いものです。なので自然保護を訴えるダイバーの顰蹙を買うスピアフィッシングですが、伊豆辺りのストーカー行為にも似た写真撮りの環境破壊と比べても、それほど大した影響は無いのであります・・・なんちゃって。
    オープンウォーターの講習の時に日本では全面的にスピアは禁止だと教えているし、世界中で自粛、止める方向に有るような事を教えているようでありますが、スポーツとして、水中での楽しみ、遊びとして、きちんとしたルールを儲けてやったら写真と同等以上に楽しいと思うのでありますが、如何なものでしょうか?・・・まあ、賛成派は少ないでしょうねぇ。



      MDS3のボートスタッフ

       ひょんな事から手に入れたバンカーボートはMDS3と名付けられ、マリーナオフィスへの届けも終わり、痛んでいた箇所は改装されて見違える姿でデビューしました。
    MDS3のホームポートはサンタモニカ前で、キャプテンもボートマンもサンタモニカビーチの住人で収まりました。
    写真の中で左前方で黄昏れているのがキャプテンのリチャードで、右側で空を見上げて風向きを気にしている様に見えるのがボートマンのトーティンです。ここはシキホールでは有りません。アポ島のココナッツポイントの内側のエキジットポイントです。リチャードは沖の白波の様子を見て帰り道の心配をしているようです。空を見上げているように見えるトーティンはアポ島の崖の上を見上げている所です。トーティンが見上げる崖の上からは姿の見え無い鳥の、面白い鳴き声が聞こえているのです。
    リチャードとトーティンのコンビは、二人とも若いけれどとても優秀です。どんなに条件が悪い海でも音を上げません。例えば、アントゥーランへ行ったときは朝からトラブル続きで、8時の出発から、サンタモニカに戻ったのが夜の8時になりました。しかし彼らは愚痴一つ言わないで仕事をこなしていました。帰り道は真っ暗で、波も風も強く、大変な航海でした。お客さんは陸路を車で戻ったので日没頃にはホテルに入っていましたが、ボートとは向かい風で四時間もかかって戻った為、遅くなってしまいました。特にリチャードは往復12時間ほとんど休み無しでした。
    MDS3は春までにもう一回大改造を施して、ディーゼルエンジンを積み替えて、この界隈で一番速い船になる予定です・・・たぶん。


     ではまた。


    問い合わせ、質問のメールはこちらです ow807360@mars.dti.ne.jp


    さいしょに戻る 南風のたよりNo93へ