南風の温泉便り

 

〜正真正銘の天然露天風呂なのだ〜


  温泉への入り口・・・パーキング

 11月の有る日、温泉に行くベし、と誘われた。
その温泉に以前行った時には水が少なくて露天風呂には入れなかった。
パンプローナと同じように、水蒸気や熱湯が沸き出すのが見られただけで、湯に浸かる事は出来なかった。
しかし、先日の大雨で今は川の水量も多い。
今回は露天風呂を堪能する事ができるかも知れないと思い話に乗った。
しばらく潜り続けと飲み続けで疲れていた私に、温泉は魅力的だった。
しかし、疲れを癒しに行く予定の温泉は、実は体力が無いと行く事自体が難しいのだが・・・。





  山道・・・? ここはまだ山道じゃ有りませんよ

パッツを誘って電話をしたら都合が悪いと言う。ラムズの電話も繋がらなかつた。
それじゃマッツとジェフリ−と3人で行こうと言う事になって、ダーウィンのマッツの家に行った。
ドゥマゲッティー温泉はダーウィンに有るのだ。
マングナオを出て国道に出る前に私のバイクがくすぶりだした。 ガス欠だった。
近くのシェルまで持ってくれればと思ったが程なく止まってしまった。
リザーブに切り替えてからそんなに走っていないと思っていたのに・・・。
エンジンの動かないバイクはとても重い。
こんな重い車体の上に人間を乗っけて山道を掛け登るバイクのエンジンって、凄いもんだと感心した。




この温泉はドゥマゲッティー界隈でも有名なのだ。
しかし、四輪駆動車や山バイクが無いと来られないので実際の来訪者は少ない。
普通の町乗りバイクでも来られなくは無いが、相当に厳しく、バイクのダメージも覚悟が必要だ。
この日ダーウィンのマッツの家に遊びに来たディディックがいっしょに行くと言い出した。
ディディックは自分のバイクで行って大丈夫かとマッツに聞いていた。
マッツは無責任にも「プエデェー・・・ワラ プロブレマァー」と言い切った。
しかしディディックのバイクが温泉入り口にたどり着く頃には振動でフェンダーが外れていた。
それでも陽気に走り続けるディディックは、純粋・天然のフィリピン人なのだ。
今を楽しむ為には少々の犠牲は・・・後から考えて、頭を抱え込めば良いのだ。
ディディックはシーエクスプローラー(プロビダ)のダイビングがイドだ。



  緑色の川です・・・流れているのはお湯です。

先月行ったカサロロの滝への355段程では無いが下りの階段は歩幅が不規則で歩き難い。
谷側に竹で作った手摺が付けられている。
竹の手摺の足は、これまた竹製で、しっかりコンクリートの土台に埋まっている。
確かにフィリピンの竹は丈夫だし、ここの竹は平地の竹と違って特に丈夫だ。
バンカーボートのアウトリガーにも使われる、真直ぐで節と節の間が長い丈夫な竹だ。
しかし、それでもやっぱり竹は竹だから、やがて朽ちる。
どの位の期間朽ちずに使えると思って竹製にしたのだろうか?その事をマッツに問いかけてみた。
マッツは「アンボット」と言った後で、先の事より今できる事をやるのがフィリピン流なんだと言った。
そのフィリピン流で始めた工事も途中で頓挫しているのだから、この国は奥が深い?



 下り切って、今度は上流へ向う

竹製手摺のお陰で山道を下るのはあまり苦労では無い。
それでもスリッパやサンダルの類いでは難儀するだろう。
皮膚の弱い人や雑草でかぶれる人なら長ズボンと、序でに軍手も必要かも知れない。
ジェフリー曰く、365ステップと言うのだが、そんなものでは無いと私は思う。
バイクを停めた所から一番下迄およそ20分。私は約1.5キロと読んだのだが・・・。
川沿いまで降り切ると、今度は川沿いに登って行く。
日本ならイワナでも釣れそうな雰囲気の良い渓相だが、流れているのはお湯だ。
そして、川の色が緑色と言うのは、何か変な成分のお湯が流れているのだろう。



  地獄谷?・・・硫黄の臭いがプンプン。

 ここが日本だったら一大観光地だったろうな、と思う。
川1本が温泉で、噴気口や蒸気が立ち込める渓谷のすばらしい景観。
ここの土地は国有地だから、日本なら国定とか国立の公園になるのだろうか?
ここが日本だったら・・・あっという間に開発されてこの静けさは終わっているだろう。
川沿いにはトンボやチョウチヨウが飛んでいる。
湯気の出ている流れが湧き出している熱湯で、緑色の川とは別の流れだ。
このお湯が流入して真水の川が程よい温泉の温度になっている。
黒く見えるパイプはドゥマゲッティーやダーウィンの水道への送水管だ。




 ほとんど熱湯で手も入れられない。

丁度良い露天風呂に見えたのだが、手を入れてみるとほとんど熱湯だった。
黄色い色が示す通りに硫黄の臭いが鼻を突く。
誰が何の目的でこんなお風呂のようなプールを作ったのか?
お湯が沸き出す口はわざわざ掘ったもののようだった。
ここに水を引いて程よい湯加減にする事はそれ程難しくは無さそうだ。
誰かが岩風呂にするつもりで作ったのかも知れない。





  温泉入浴中。

滝つぼが丁度良い湯舟になっていたので入ってみた。
滝から流れて来る水は冷たい真水だった。
滝つぼの底は砂で、所々から熱湯が沸き出していて、湯舟は常に程よい温度になっている。
この上に人は住んでいないし、町の水源として保存されているので素晴らしくきれいな水だ。
滝から上の川水は飲んでも大丈夫な天然ミルラルウォーターである。
ディディックやマッツはお湯の風呂に入る習慣が無いので熱いと言っていた。
私には適温快適だったのでいつまでも浸かっていた。
時折砂の中から熱いお湯が吹き出して来てびっくりさせられる。
ここは国有地だそうだから、小屋を建てても文句は言われまいと思う。
湯治場を作ってみたくなった。





 アポ島が眼下に見える。

下りがしんどい道の登りが楽だと言う事は絶対にあり得ない。
下った道は登らなければならない。
竹の手摺に掴まりながら一歩一歩登って行く。
温泉でさっぱりした身体はたちまち汗だくになった。
若いディディックは息も切らさず登って行くが、残りのおっさんにはきつい登りだ。
下の川でミネラルウオーターの空ボトルに詰めて来た水が美味かった。
バイクを走らせて下る途中、椰子の木の間からアポ島が見えた。

次は、バーベキューとビールを持って、違うメンバーで行こう?


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