南風のたよりNo86


    ドゥマゲッティーから、の便り


       小さな、話題


     ガソリンとビール

       ガソリンが少し下がった。一瞬45pまでいったガソリンの価格が43〜44Pに少し下がった。もっとも45pは数日間の瞬間だったので、今の価格でしばらく落ち着いていると言う事なのだが・・・。
    今年の年明けまで、1万円が5O00〜5300Pで推移していた両替えのレートだが、このところ、4200〜4300の間で定着してしまっている。10万円両替えすると10000P目減りした事になる。10000Pと言えば、パッケージツアーのダイバーには使い切れない金額だ。私の場合は黙って2割〜2割5分、収入が目減りした事になる。これは痛い。
    そして、最大のピンチはガソリンの値上げだ。両替えで2割5分、値上がりで5割。昨年の年明けには既に値上がりし始めたが、それでも、23〜24Pを基準にしていた。今はこれのほぼ倍になっている。感覚的に、視覚的に捉えると・・・一昨年は500ペソで満タンになった軽トラが、昨年になってメーターが半分より少し上で止まるようになった。そして、今年は、三分の一程しか入らなくなった。以前は500ペソ入れると、毎日ダイビングの送り迎えに使って、晩飯を食いに行って散歩して、1週間近くもったものだが、今では3日は絶対にもたなくなってしまった。
    総ての輸送は油に頼っている訳だから、これが上がれば皆上がる。
    そして、ビールも値上がりした。これは中身は水みたいなものだから、配送料の負担分の最たるものだろう。13Pが18Pになった。値上げ分は日本円で12〜13円だから、財布の中身にはほとんど影響が無いと思うかも知れないが、一月に10ケース、240本以上を消費するMDSでは、結構な痛手になる。
    まあ、それでも値上げ分はよしとしよう。飲みたいのだから仕方が無い。この値上げで困った事に、近所のサリサリストアーから小瓶のサンミゲ−ルが消えてしまったのだ。もともと小瓶は飲食店では普通だが、一般の家庭ではほとんど買わない物だったのだ。通常家で飲む時には「グランディー」と言う一リットル瓶を買って飲むのがほとんどなのだ。小瓶3本分入って49Pだから、5ペソ分位徳するからだろう。冷えていないビールでも平気なフィリピン人はこれでも良いとして、私はビールは常に冷えていて欲しいから小瓶で無ければならないのだ。が、今ドゥマゲッティーでは小瓶を売っている店は限られていて、残念ながらマングナオの近所には無い。
    そこで、プライベート用にはカンビールを買いだめしておく事にしたのだが、これがひと缶26ぺソとまた一段と高級品になってしまう。ダイビングのお客さんには、シャワーの後に1本提供するのだが、これも中々に度胸のいるサービスになってしまった。いやいや、26ぺソだけを考えれば私とても日本人の端くれ、何とも無い金額では有ります。しかし、目減りの続く経済状態では、26ぺソのジャブが後々効いて来る訳です。  

     デジカメの接続用の線が見当たらない。あんな物、誰も持ち出すはずは無いのだが、見当たらない。従って写真は使えない。まあ、下手な写真は無くても良いでしょう。

     昨晩、ほとんど滅多に行かない日本食レストラン「WAKAGI」に行った。お客さんがどうしても行くべし、と言うので一緒に行った。どうしてほとんど無視していたのかと言うと、以前の認識では、高くて不味い店だったからだ。しかし、昨晩はちょっと感動した。
    まず、安かった。目減り攻撃に曝され続ける私としては、安いと言うのは何物にも替え難い。そして、そこそこ美味かった。これなら文句が無いどころか、ちょくちょく行ってみたくなる。
    では、どんな塩梅の物を食ったのかを・・・。
     注文したのは「弁当」と言う品書きの物だった。なぜこれに決まったのかと言うと、食いたい物を一通りウエイターに伝えてみると、「弁当」に全部入っているからそれを喰えと言う事だった。そして、バラートだと胸を張って言ったのでそれに決めた。240ぺソだ。
    キンキンに冷えたビールが嬉しかった。そして、その後に出された物は、パイナップルの切り身で、これは何かと聞けば、デザートだと言う。おお、最初にデザートが来たか。うんうん、由緒正しいフィリピンスタイルだな、食う順番よりも早く出せる物から行くと・・・。
    ああ、外人相手やハイソなフィリピン人相手のレストランは出来た順番にもって来るが、庶民派のレストランは一つのテーブルのオーダーを全部まとめて一斉に出すのが正統派で、フィリピン流はふた通り有る。どちらにしても間ガ悪いのは違いが無い。
    次は、小皿が2つ来た。一つはきゅうりの塩揉みとタクアンの盛り合わせだった。盛り合わせと言うには余りにも少量だが、二品盛ってあるので盛り合わせだろう。それは、しょうゆ皿のような小さな皿に、大豆の粒程度に細かく切って盛られていた。盛り付けのヒントは、色合いを混ぜてきれいに見せる事で、ミックスベジタブルなのだと思う。
    もう一品の小皿は、ゴマメのつもりかどうか。網走のワカサギのつくだ煮にも似ている。しかし、正体は和食では無い。ドゥマゲッティーのオリジナルで、キビナゴのような干した小魚を醤油と砂糖とうがらしで煮込んだ物だ。これがまた美味い。ビール1本はこれで飲める。
    次に運ばれた物は味噌汁だった。久しぶりに飲む味噌汁は、できばえが云々と言う以前に味噌汁であると言う事だけでもう十分だった。味は、ちゃんと普通に味噌汁の味だった。具には乾燥豆腐が入っていて、鰹のだしの雰囲気を味わう事が出来た。
    さて、いよいよメインディッシュの「弁当」が運ばれて来た。見た瞬間に感動して思わず歓声を上げそうになったが、周りに気を使って止めた。昨晩の他のテーブルの客は、日本人の4〜5人の年寄りと、若い、と言っても30位の日本人男性とフィリピーナのカップル。そして、物凄く金持ちそうなフィリピン人一家と、そこに招待された風な立派な身なりの白人が座っていた。ここで、オカイオカイ(古着屋)で買ったノースリーブのシャツに短パン、スリッパのヒゲ面おやじが奇声を発すれば顰蹙をかう事間違い無しと思い止めた。まだ日本人として身に着いた常識的判断は健在であったようで、嬉しい。
    服装に着いて言えば、私はどちらかと言えばみすぼらしい。何処へ行くにも気にしないので、一年中みすぼらしい。だから何処へ行っても嘗められる。昨晩のWAKAGIでも会計の時に私には伝票を持って来なかった。こんな格好をしていても滲み出る気品は隠せないはずだと思っていたが、それは単なる錯覚で、見事に十分、ただみすぼらしいだけの冴えないおやじに見えるようだ。
    一言言わせてもらえば、フィリピン人の金持ちは、何処から見てもそれと分る服装と振る舞いでいるが、こんな糞暑い国で長袖を着て、何処もかしこもエアコンで冷え冷えにして置く馬鹿さ加減からは、知性とか教養は全く感じられないのだが。
    ああ、弁当の中身を書くのだった。
    今時ベークライトは無いだろうからプラスティックか何かでできた幕の内弁当のポプュラーな四角い器が運ばれて来た。中に入っていたのは、キハダマグロとモンゴウイカの刺身格三切れ。ワサビは気が抜けていて、大盛りに付いて来た物を全部溶いても何も感じなかった。醤油は、スワンなどの安物では無く、最低でもシンガポールのキッコウマン程度の物だった。刺身は新鮮で問題なかった。鶏の照焼きが数切れ、胡麻をかけて付いていた。これが弁当の品の中で、一番存在感が薄いと思った。有っても無くても良い味で、減点対称にはならないが、加点も無い代物だった。その脇に煮物のつもりの野菜炒め風が付いていた。シイタケとモヤシでまずまずなのだが、煮物ではなく炒めものになっているのが惜しかった。それでもこれも減点対称では無かった。
    いよいよメイン料理のテンプラだが、これはきっちり日本風の姿形と、味も、下手な日本のかあちゃんが揚げた物よりは上出来だった。
    まず目に入るのはお決まりのエビ天だが、ちゃんと日本風に2本付いている・・・御意見無用、エビ天は2本と決まっているのだ。
    野菜がまた嬉しい。ほとんど香りはしなかったが大葉があり、オクラ、茄子、カボチャが付いて来た。これに先のエビ天である。十分に本格的な「弁当」だ。もう何も言う事は無い。
    ああ、天つゆは、ちょっと生姜が利いてこれも上等だ。この汁に素麺なんか入れて食えるようにしてくれたら、あと30ぺソか40ぺソ出しても良いがなぁ、と思う味だった。
    さて、散々褒めちぎった「弁当」だが、これを本格的な和食屋の料理と比べて点数を着けては居ないので注意して頂きたい。たまに居るのだ。テンプラの衣がフリッターになっているだとか、モンゴウイカもキハダも冷凍だとか言う奴が。日本円で600円の「弁当」を私は、セブンイレブンの幕の内と、高速道路のパーキングのレストラン辺りと比較して書いたつもりだ。何処にも出られない高速道路と、あそこしかない「WAKAGI」似ているでは有りませんか。




    ではまた。


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