南風のたよりNo83


    ドゥマゲッティー便り


       小さな、話題


     夏だ

     ドゥマゲッティーは夏真っ盛りです。
    おおっ・・・何を根拠に、とおっしゃいますか?根拠は・・・学校が夏休みなのだから夏なのであります。そして、先日真上を通過して北回帰線へと向った太陽を拝んだドゥマゲッティーは、真夏なのであります。
    ドゥマゲッティーでは1年に2度、太陽が真上を通過しますが、夏至に向う時の方が冬至に向って戻って来る時よりも暑いような気がします。この解釈、何処か間違っていますでしょうか?
    スイカも出回ったし、カツオもやって来たし、ブルーマーリンも釣れたし、水温は29度まで上がったしで、どうしたって夏真っ盛りであります。これで盆踊りでも見られれば決定的なのでありますが、残念ながらそれは見られません。
    真夏になると我が家の温水器から給湯されるお湯も一段と熱くなるようで、シャワーで火傷するくらいに熱いお湯が出て来ます。このお湯も冬には水を混ぜて出さなくても適温になるのですから、やっぱり真夏であります。
    それじゃぁエアコンも無い貧乏人のお前ん家は暑くて堪らないだろう、なんて言うのは、チッチキチーであります。流石に午後2時頃は風の無い日だと日陰に居ても暑いと感じますが、大体は海からの風が有りますから結構涼しいものです。
    NO NO NO夜は寝苦しいだろうって?それもやっぱりチッチキチーであります。網戸の窓から入って来る夜の風は時に冷たくさえ感じて、深夜には足先でタオルケットを探っています。
    そうだ、窓の外で夏の虫が鳴くのですよ、今頃は。その虫の音はけっこう「ミーガオ」なものであります。ミーガオとは淋しいとも訳せます。

     生き物が自然だ

     ドゥマゲッティーの生き物は自然に生きている。もっとも自然に生きていない生き物なんて地球上には人間くらいしか居ないのだから人間以外の生き物は自然に、と言うべきかも知れないが、とにかく、何であれドゥマゲッティーでは生き物が人間の近くで自然に生きている。生き物同士の距離がとても近い。
    我が家の庭には今日現在30羽以上の鶏が生存している。そして犬も4〜5匹は絶えずうろうろしている。鶏に餌を撒いた時なんかはスズメが数十羽飛んで来る。これらの鶏や鳥が犬に襲われるような事は絶対に無い。見事に立場をわきまえているようで、鳥など襲おうものなら自らの命が危うくなる事をちゃんと承知して生きている。
    ブタだって鶏やスズメと餌を分け合っていて、脇からつまみ食いされていても別段騒いで追い払ったりはしない。
    生き物どうしがとても近い距離の中で生きているドゥマゲッティーで、もっとも距離が近いのはオトコとオンナかも知れない。これも本当に仲良く自然に生きている。隣の家の15才の娘も自然に育って、男の子との距離が近付き過ぎて、この夏、見事に腹が膨らんだ。

     夏になったらナトリウム・・・?

     最近我が家で出される果物には尽く塩が降られている。これはナトリウムの補給の為なのでは無いか、と思っている。
    夏になってから私は良く水を飲むようになった。普段はドゥマゲッティーにいてもそれ程多くの水は飲まない私だが、この時期には本当に沢山の水を飲む。ダイビングに出ている時には水中に2〜3時間いて冷やされるので意外に水を欲しいとは思わないが、バイクで一寸遠出などと言ったら、1時間おきに500ミリのミネラルウォーターを一本飲むほどだ。
    こんなに水を欲すると言う事は発汗しているからなのだろう。それで失われるナトリウムを計算してこの時期に食べる果物には塩を降るのでは無いだろうか、と思うのだが、どうなんだろう。そして、この時期MDSのスタッフはバナナを良く食う。と言うよりも、果物全般を良く食べる。美味い時期だからと言う事かも知れないが、先のナトリウムとバナナのカリウムと来れば、見事に発汗に対処していると言える。生活の智恵で自然にとっていると思うのだが、考え過ぎだろうか?

     雨季と乾期・・・どっもどっちだ

     先日、雨季に走って見事な泥濘地に悩まされたラフロードを再度走って来た。雨の多い時季にぬるぬるの泥道を走りながら、乾いていたら思いきり飛ばせる気持ちの良いラフロードだろうなと思って走っていた。しかし、現実は雨季にも増してとんでも無く始末に追えない道だった。乾期には土埃が物凄くて、数台のバイクを列ねての走行では、運悪く最後尾などとなったら最悪の煙幕地獄となる。呼吸困難はバンダナのマスクでなんとかなるが、目が堪らない。息は時に数十秒止めている事が可能だが、目は一瞬たりともつむる事は出来ない。飛ばしていれば尚の事見開いた目に、細かな土埃は容赦なく入り込む。
    休憩の度に目尻をバンダナで拭うのだが、その時には信じられない程大量の泥が目ヤ二となって出て来る。目から泥が出て来るの見るのは結構な驚きだった
    乾期に乾き切ったラフロードを走る時には先頭に限るのだが、如何せん私は地理に疎いので知らない道では先頭を行く事が出来ない。そんな時は2番手を、先行者の風上側に列をずらして走るのだが、細かい土埃は風に舞っていつまでも漂って、そんな工夫も大した役には立たない。しかし、最後尾を必死で追い掛けているダダなどはいったいどん空気を吸いながら走っているのだろうと思ってしまう。
    こんな時は長袖シャツが必需品だ。そして、小学校の時に校章の入った学帽を冠って以来帽子と言う物が嫌いだった私が、50ペソのナイキのマークの入った帽子を買った。首と口を覆うバンダナに帽子、サングラスにグローブ、ジーンズにブーツ。背中のバックパックには常に2本以上の水のボトルと言う完全武装で行かないと命が危ないかも知れない、乾季のラフロードツーリングだった。

     きれいな満月

     お客さんがチェックアウトして、今日はダイビングが無かった。明日やって来るお客さんの到着は夕方の飛行機で、ちょっとした谷間の息抜きの日が出来た時だった。夕暮れ時に白いほぼ満月になった月が高く上がっていた。それを見つけた私が「魚捕りに行くベ」とスタッフに言った。ダダはここいらじゃ大した物は捕れないからとぬかして嫌がった。ジェフリーは最近は魚捕りにはほとんど参加していない。ノノイは、客が居ない時くらい潜りたく無いと言う事で、結局誰も行かないと言い出した。私はタンク屋のヤヨイと、ボートのキャプテンのコロに電話をして、いい月が出ているから行かないかと誘った。ヤヨイはタンクを用意してシリマンビーチに7時に来ると言った。コロも二つ返事でOKだった。私はボートを出す係りになったのでガソリンを少し持って行った。シリマンビーチの角のサリサリストアーの息子のマヨンも一緒に行く事になった。これで上がって来てからのビールの心配も無くなった。
    このメンバーで私が銃を持って入ってもどうせろくな獲物は望めないので魚捕りは諦めた。何だか本末転倒と言う気もしないでも無いが、まあ、ナイトの写真もしばらく御無沙汰だしと言う事で、私はカメラを持って潜る事にした。
    私は一番漁師のコロを追って潜った。コロが潜行する明かりが物凄い早さで底に消えて行く。追っても追っても近付かない。コロが底に着いたらしく横に移動し出した様子が明かりの移動から分かった。私が着底して水深を見ると40メートルを超えていた。無いとダイビングで一気にこの深度に来るコロの神経が分らないが、これがこの辺の漁師の普通のダイビングなのだ。
    コロはまるで水中を走るように移動しながら魚を仕留めて行く。獲物は、アカヒメジ・アイゴ・エイ・コロダイ・カサゴなどであった。ハコフグも1尾突いていた。
    私は買ったばかりのパワーショット70の役立たずを呪ながらもコロを追って写真を撮った。液晶には何も見えないので当てずっぽうでレンズを向けシャッターを切る。ピントも構図も関係ない。たぶんこんなもんだろうと言う方向へ向ってバチバチとシャッターを切る。その後、写りを液晶で確認すると言う、克って経験の無い撮影方法で写真を撮って回った。なんとも釈然としない撮影だった。
    コロは見事なダイブプロフィールを描いて魚捕りをして行った。40メートル以深から始まったダイビングは40分後には5メートルに来ていた。この水深で10分は周辺を回ってガス抜きをした。後でダイコンを確認してみると理想的な時間配分のダイビングだった。ちなみにコロはダイコンはおろか水深計も持っていなかった。それでも残圧と時計だけで理想的なダイビングをやってしまうのだ。恐るべしコロである。だからなのか、時々ヘボガイドの私を鼻でせせら笑うのは?
    ボートの真下に着けたのはコロだけだった。他の皆はてんでに浅場で浮いて回収を待っていた。マヨンは自力で泳いで浜に戻って行った。500メートル以上は有るだろうと思うのだが。
    全員の獲物をバケツに入れて料理に取りかかった。魚は瞬く間に炭焼きとスープに料理されて、それを肴にビールとタンドゥアイが空けられて行った。私は「カバン・カバン」と呼ばれるハコフグを薦められて喰った。テレビの番組で素潜りで魚を突き「捕ったどぉー・・・」と叫ぶ浜口君と言う芸人が、ハコフグが一番美味いと言うのを見て、私はいい加減にしろよと思っていた。しかし、ハコフグは浜口君の言う通り、絶品だった。とくに肝はカワハギよりも美味いかも知れないと思う程だった。
    8時頃にシリマンビーチで始まった宴会は9時半にはお開きになっていた。流石に浜の人達だ。明日の朝も早いのでいつまでもだらだらはやらないのだろう。


    漁師コロの後ろ姿


    漁師コロの獲物


    水中から見る月


    ハコフグの姿焼き





    ではまた。


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