南風のたよりNo77


    ドゥマゲッティー便り


       小さな、話題


     ある 本

     成田空港で暇つぶしに本屋をうろうろしていて アジア「裏」旅行 なる本を見つけた。
    私は中身は見ずに値段だけを見て買った。552円+税だった。
     ちょっと脱線・・・世の中税込み価格、総額表示が標準になったはずなのに本だけは例外で、本体価格+税なる表示が許されている。税込み表示になる時に「消費者に分かりやすく」と言う触れ込みだったのに、この本の価格表示は誠に持って分かりにくい。552円の105パーセント=いくらか、私は暗算出来なかった。
     本題にもどります・・・。アジア「裏」旅行のタイトルを見て喰い付いた私は見事に消化不良を起こした。まあね、552円+税だから。安いんだから、こんなもんでしょう。と、納得させつつも、あまりの作り過ぎにちょっとゲップが出た本だった。読み始めてすぐがマニラでの出来事だったのも良く無かった。エルミタで明るい内に拾ったタクシーで林の中に連れ込まれ暴行される行がある。あの辺りからだと相当走らないと林は無いし、文面からタクシーがメータータクシーである事が伺える。メータータクシーは運転手がすぐに割れるから、暴力沙汰は起こさない。万が一やるなら殺すまでやる。そして、作者が車を拾ったホテルは高級ホテルで、ここの車溜まりで怪しい車は客待ちはできない。
    などなど・・・色々と私としては釈然としない怪しい部分が多すぎて、書き込み過ぎですなぁ、と思った次第でありましたが、離陸して4時間の暇つぶしの相手には丁度良かったかも知れません。

     レイテの土砂崩れ

     レイテでの土砂崩れはドゥマゲッティーのテレビでも連日放送されていた。ズブズブのぬかるんだ土砂で重機が入れずに救出活動が全く進まない事に皆が苛立っていた。見ていたテレビの画面はツルハシとスコップで土砂を掘り進み、生き物の死体を見つけた場面だった。しかし、出て来たのはブタの死骸だった。被災地のフィリピン人がインタビューに答える時に、泣き崩れたり、大騒ぎする人が見られなかった。
    年明けからずっと、ドゥマゲッティーも雨の日が多かった。ただドゥマゲッティーはレイテやサマールほどには降らないので災害には至っていないが。
    救出活動は、えっ、と思ったくらいに早々と終了した。土砂に埋まって10日も経ってしまえば生存の可能性が無い事は誰の目にも明らかだったからだろう。海外からも復旧活動に支援が集まると思うが、私の周りのフィリピン人の話しでは、村のあった場所は捨てられて、新しい村は違う場所になるという。
    そして、もっと小規模な地滑りの被害は今年に入ってから何件も起きていると言う事だった。小規模と言っても、ミンダナオでは200人が土砂に呑まれて亡くなって いるそうだ。
    ミンダナオから遊びに来ていたマークが言ったのだが、ミンダナオの土砂くずれは違法伐採が原因で、昔はこの程度の雨でも何も起きなかったと言う。

     ダーウィンの地熱発電(跡地?)

     バーコンの辺りから山に入ってしばらく行くとまさかと思う程の整地された広場に出る。国道からバイクで40〜50分も登った辺りで、キャンプ場にしたらとても良さそうな、真ッ平らで石も取り除いてある、不思議な場所だ。どの辺の場所かと言うと、アポ島にダイビングに行って山を見た時に、炭焼きか焼き畑のような煙りが上がっている辺りだ。アポ島からネグロス・オリエンタル山を見て(正式名ではありませんよ)、山が急峻に立ち上がる少し麓にいつも煙りが上がっている辺りなのだが、分りませんか?
    山に暮らす人が牛を曳いていたので話をしてみた。ここいらは温泉が出て、その地熱で発電をするはずだったと言う事のようだが、ビサヤ語だけなので間違っているかもしれない。私としては「温泉」に興味があったので、お湯の沸きで出ている所は無いかと聞いてみた。広場の奥へ続く山道を徒歩で1時間程行くと沢筋に降りる。そこの沢の側に熱いお湯が沸き出しているとの事だった。そのお湯はとても熱くて手は入れられない、らしい。しかし、この広場から先はバイクも入れず、行くには徒歩しかないと言う事で確認は断念した。いつか、ドゥマゲッティー温泉の看板が掛ったら、やったな、と思って下さい。

       3才のボーズ

     家の近所に3才になる生意気な、赤ん坊とも言えず、子供とも言えないボーズがいる。
    名前も知らない近所のガキなのだが、これが妙になついてしまった。男の子の3才と言うと言葉もまだはっきりしないと思っていたが、それは私の認識が間違いで、十分に生意気を言えるのだった。
    このボーズが3才で自転車に乗れる。フィリピンでは大人も普通に乗る小型のBMXタイプの自転車を、立ち乗りで自由に乗りこなす。時々調子に乗り過ぎてすっ転ぶが、絶対に弱音は吐かない。根性の座ったボーズである。とんでもなく痛いのだろうと思える時には、笑い顔を作ろうとして涙を流す、不思議な顔になる。この顔が面白く、そして、本泣きに転じやしないかと期待して囃し立てる。そうするとボーズは怒りだして拳を握りしめて向って来る。
    私がダイビングで居なかったり、バイクで遊びに行ってしまった時には一人で家の庭で遊んでいるようだ。日中お相手を出来なかった時には夕方、バイクに乗せてビールを買いに行き、2コで1ペソのキャンディーを買ってやる。このボーズが私の一番年下の友人になってしまったようだ。

       セブの空港が全面禁煙?

     お客さんを見送りにマクタン空港に行って、出発までの時間に朝飯をと言う事で、ホテル・ベラビスタやセサリオと同系列のレストランへ行きました。そこで灰皿をくれと言うと、壁を指差されました。見ると「禁煙」のカードが貼ってあるでは有りませんか。
    私はタバコは吸わないので気にも留めなかったのですが、お客さん曰く、前回11月の時にはタバコは吸えた、とのこと。禁煙開始が何時なのかは分りませんがこ最近の事なのは間違い無いようです。
    へぇー・・・フィリピンもいよいよかぁ、なんて思っても、多分それは間違いでしょう。
    フィリピンでは、禁煙は二つの意味で全面的に取りあげるわけには行かないはずです。
    一つは、安酒とタバコくらいしか日々の楽しみが無い人が多い事。
    タバコからの税収に大きく頼っている国だそうですから、本気で禁煙に取り組むとは思えません。

     タクシーの無線

     セブで乗ったタクシーに無線が付いていました。ハンディーの無線でやり取りしている車は以前も有りましたが、車栽の無線を見たのは私は初めてでした。ただそれだけの事なのですが、その無線から流れる会話があまりにも個人的なものばかりなので笑ってしまいました。
    主に一人が喋り続けているようで、その内容は、さっき食べて来た晩飯の事やら、娘の遊び癖の事、アロヨ大統領の悪口まで様々でした。
    その他愛無いお喋りにいちいち返事をするのが居て、無線は車上井戸端会議の様相でした。
    運転手に無線の使い道を訪ねた所、目的は日本と一緒で、電話で呼ばれた時の配車だとのこと。
    こんな事で無線を使っていたら仕事に支障を来たすだろうと言うと、運転手は、「タクシー会社に電話して配車を頼むんなら、自分の友だちの運転手に直接電話するよ」と言う事でした。
    それもそうだな、と納得。私の推測では、このタクシーの経営者は日本人かも知れないなぁ、なんてね。

     フジ・アップル

     セブで久しぶりに会う友人に、日本からもドゥマゲッティーからも、土産は何も無いからこれから買うんだけれど、何が良いかと聞いた。
    友人曰く、フジ・アップルが喰いたいので買って来てくれと言うので、露店の果物屋でリンゴとオレンジを買って友人宅に行った。
    話し込んでいたら家人がリンゴを剥いて出してくれたので一切れかじってみた。が、あまりの不味さに驚いた。
    ドゥマゲッティーでも中国産のフジ・アップルは安く売っているが食べた事は無かった。
    リンゴの本場、青森、山形、岩手とリンゴ産地に囲まれた地方で育った私としては、南国で輸入ものの安リンゴを喰う気にはなれずに食べた事が無かった。
    それにしても恐ろしく不味い、ここまで不味いリンゴを、はたしてリンゴと呼んで良いものか・・・ちょっと大袈裟かも、と思う貴方は東北地方の本当に美味いリンゴを喰った後なら理解出来るでしょう。
    と、言う事で私は一切れを飲み込むのに苦労する程のリンゴなのだが、友人はこれが美味いと言う。
    フィリピン人と付き合って来て、味覚に決定的な差を感じた事は今まで無かったが、ことリンゴだけはダメなようだ。
    今度本物のリンゴを喰わせてやろうかと思ったが、それこそ余計なお世話で、あれを美味いと思って喰っているならそれで良いのかと言う事で、やめた。

     セブの下町・裏通り

     セブで定宿にしているメルセデスのあるペライズストリートが少し様変わりして来た。
    ペライズと交わる表通りが悪名高いコロンストリートで、つまらない事件が多発する場所だ。
    どの辺りが特に危ないかと言うと、チョウキンの辺り一帯の午後10時過ぎからが危ない。
    ここは地元の人でもひったくりなどに注意する場所で、この辺の住人以外は夜遅くには歩かない。
    セブではバイクに乗って出没する強盗が流行っていて、警察が追うと銃撃戦になる事が多く、少人数では手が出せないのだと言う。
    それが昨年から、セブ市内のあちこちで起きていて、バイクを追うとコロン近辺に逃げて来ると言う。この辺の路地ではバイクは簡単に逃げられるだろう。
    コロンに近いペライズストリートもパトロールが増えた為か、少し様変わりした。
    ポン引きが姿を消した。私の知り合いのリチャードやチャーリーやディンディンは少し離れた、別のホテルの前に場所替えした。
    そして、メルセデスの隣の空き地とその歩道を利用していた屋台が消えた。
    屋台に関しては雨続きで暫時休業とも言うので天気が良くなる頃には戻って来るのかも知れないが、そこで小銭で飯を喰っていた底辺の人の姿も今は無い。
    この辺にはセブ市民の、庶民の為のバーやカラオケが集まっているが、そのへんの客も少なくなった、とバーの経営者はこぼしていた。
    こんな風に書くとメルセデス近辺がとんでもない場所のように見えるかも知れないが、そうでもない。
    メルセデスからソゴウのコンビニまでを往復して来ても、午後10時までならまず大丈夫だろう。しかし、やっぱり11時過ぎは出歩かない方が良い。
    ここで凄いと思う事がある。コロン近辺にはコーリアンが多い。コーリアンの、留学で来ている大学生が結構目立つ。
    彼ら、彼女等は平気で夜中のコロンストリートを歩いている。しかも、あの特有の語気の強い大きな声の会話をしながらだ。
    彼らが集まるのは先に危ない場所No1と書いたチョーキンと言うファーストフード店だ。チョーキンの看板はたしか漢字で「超群」と書いたと思う。
    いつも書いていて思うのですが、私が見て聞いた事を、私なりに咀嚼して書いているので、事実とは掛け離れている場合も有るかも知れません。
    しかし、情報誌でも、観光案内でも有りませんから、あまり当てにしないで下さい。
    こう考えると、冒頭の アジア「裏」旅行 の作者も、本人は真面目に真実を書いたのかも知れませんね・・・なんちゃって。


    ではまた。


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