南風のたよりNo67


    ドゥマゲッティーのうわさ話


       
     No66にWHY NOT 閉店か?なんて事を書きましたが、どうも全くのガセだったようで申し訳有りません。しかし、ネタの主は元エルドラドの従業員で、その時は中のディスコで働いている人でした。まあ、フィリピン人の噂を鵜呑みにして書いてしまった私が浅はかでした。訂正してお詫び致します。
     この話ももう旧聞になり、最近では笑い話のネタにも登らなくなったのですが、ドゥマゲッティーの消防署が火事になりました。確か4月頃だったと思うのですが、隣の建物から火が出て消防署の一部が延焼しました。当時のニュースではマニラのテレビ局までもが消防署の火事として、笑い話のタネにと取材していました。ドゥマゲッティーで一旦火事が発生すると消防の力は、江戸時代の火消しと似たようなものです。消火する能力はほとんど無く、消火栓も無いので延焼を食い止めるのが精一杯のようです。

     スパーキャットが運休し、オーシャンジェットも右習えしてから数カ月、やっとオーシャンジェットが一日一往復セブとドゥマゲッティーに戻って来ました。セブ行きの便の出発はドゥマゲッティーから出て行く船が見えるので午後3時で間違い無いと思うのですが、セブの出発はまだ調べていません。料金は思いっきり値上がりして650ペソだそうです。
    MDSではここしばらく、セブからの交通手段は陸路に定着しています。道路事情が良くなった為に時間が読めるようになり、以前程難儀する事がなくなったので陸路を使う事にしました。自力でドゥマゲッティーに来られるお客様は欲しい情報であると思いますが、運休や時間変更が頻繁なので書くに書けないと言うのが正直な所です。

     お盆の繁忙期と思っていたのはMDSだけで、ドゥマゲッティー全体では日本人のダイバーは少なかったようです。やはり交通手段が安定しない為に、送り込み側の旅行会社も積極的では無かったのかと思います。お客様の送迎でセブ市内とマクタンのホテルを数軒回ったのですが、マクタンのリゾートホテルとその周りには日本人が沢山いましたが市内のホテルはどこもがら空きで日本人は見かけませんでした。
     普段は少人数のスタッフでちょうど良く廻っているMDSでも繁忙期になると流石に人手不足を感じます。特に送迎が重なったり、お客様のポイントのリクエストがバラバラだったりすると一層深刻な事態になります。2〜3週間お客さんゼロなんて言うのは普通に有るのに、重なる時にはどうして?と言う気がしてなりません。しかし、それが日本の長期休みのパターンですから仕方が有りません。私がまだセブにお客で潜りに来ていた頃、たぶんお盆の休みだったと思いますが、大型のバンカーボートに20人以上も乗せられてヒロトガンに連れて行かれた事が有りました。ガイドはバラバラに潜って来るダイバーに対処出来ずにとうとうボートの下から動く事無く浮上したのを覚えています。ガイドは4〜5人居たと思いますが、エントリー場所の少ないバンカーボートで最初のエントリーと最後の人では30分も違ってしまって、グループとして行動するのは最初から無理だったと思うのですが。

     忙しい日が続いていたある日、6時になってもジェフリーが起きて来なくて私とダダがてんてこ舞いした日が有りました。私はダダに飯炊きを指示し、ブチョックにタンクとダイビング器材の確認を指示して弁当のおかずを買いにチャンゲに走りました。私の家のすぐ隣がジェフリーの家なので大声で呼ぶのですが応答がありません。チャンゲから戻ってもまだジェフリーは現われず、お客を迎えに行く時間はとっくに過ぎていました。私は軽トラでお客を迎えに行ってそのままボートに行くからジェフリーが来たらボートで待てと言って飛んで行きました。予定より少し遅れましたがお客をピックアップしてシリマンビーチに行くとジェフリーがボートに乗っていました。訳を聞けば、今朝方腹と背中に激痛を感じ病院へ行っていたとの事。ジェフリーが「石持ち」だったとは知りませんでした。

     

    一人が好きなダダ

    遠くにアポ島が見える (写真提供 I 様)

     この日ダダはいつものようにポツンと一人で船の舳先に座っていた。彼はフィリピン人には珍しく無口で静かな男だたった。ドゥマゲッティーのお笑い芸人、吉本系と言われるジェフリーとは対照的で、どう言う訳でダダとジェフリーが20年来の仲間として繋がっているのかも不思議な事だった。ダダはいつもこんな風だから別段気にもとめなかったのだが、前夜、ダダのお母さんが亡くなっていたのだった。ダダがその事を私に告げたのはこのグループのダイビングの予定が全て終了してからだった。当然ジェフリーやブチョックも知っていたが口止めされていたようで私には知らせなかった。
     ダダの給料は潜ってナンボの出来高給で基本給は現物支給で三食と生活の必需品と少しの小使い銭程度だ。普段であればこれと、潜ってもらえる手当てで11人の家族を飢えさせない程度には食わせていけるのだったが、今回は母親の病院代やら葬式代やらを支払わなくてはならずどうしても金が欲しかったのだろう。もしも私が母親の事を知れば休めと言われるだろうと思って皆は黙っていたのだと思う。
     ダダはこの日、ガイドをしながらやってはならないと言ってあったルールを幾つか破っていた。一つはカメを捕まえて「カメスクーター」をお客に勧める事。もう一つはカクレクマノミを捕まえてマスクに入れてお客に見せる事。これらをお客にやって見せていた。
    幸いお客様には好評で自然保護を大声で訴えられる事も無かったので敢えてダダには注意もしなかったが、何で今日は、との思いがずっとしていた。

     

    カクレクマノミとダダ (写真提供 I 様)

    ダダの本名は「ロレンツォ」・・・カッコ良いのだ

     次のお客さんはもうドゥマゲッティーに来ていた。ダダを外すかどうか迷ったのだが、私は別のグループと同行になり自分がガイドする事は出来なかった。ジェフリーもいつまた七転八倒を始めるか分からない。ブチョック一人では無理だし、結局人手不足からダダにお願いせざるを得なかったのだ。流石タンク本数15000本オーバーのダダ。船の上では黄昏れていても水の中ではしっかりしている。御法度の芸を披露したのは、ママの事といっしょに、若い頃のガイドを思い出していたのかも知れない。

    ではまた。

    問い合わせ、質問のメールはこちらです ow807360@mars.dti.ne.jp


    さいしょに戻る 南風のたよりNo68へ