南風のたよりNo56


    南の島の話し・・・小さな話題その6


       虫歯の話

     うちのスタッフの最若手はブチョックです。彼の得意技は椰子の木のぼり。登って椰子の実を落としてくるのが特技です。と、言ってもこの辺の若い男なら大抵はできるはずなのですが、しかし、それも大分様変わりして来て、お金持ちの家の子はそんな事はできませんから、日本といっしょで、誰もが柿の木に登れたのは昔しの話しだと言う時代がドゥマゲッティーにも来るのでしょうか。
     ブチョックの顔色がさえ無いので聞いてみると、虫歯が痛くて困っていると言いました。虫歯の穴につめる薬等を買って凌いでいたようでしたが、年末からのダイビングのお客様が一段落したら虫歯を抜いてしまうのだと言っていました。  1月19日の水曜日、お客様とマラタパイの水曜市を見に行きました。いつも通りの市場の様子に初めての日本人は驚くようです。日本ではあり得ない感覚の物がそこいら中に溢れる様は異様でもあります。これらの状況を写真やビデオに撮って日本に持ち帰って見せても絶対伝わらない部分が有ります。それはその場の温度と匂いです。これらが無いと本当の感覚はつかめないと思います。
     お客様と、ぶらぶらと店を見て歩いているうちにブチョックに出合いました。ブチョックが座っている椅子の前には小さなテーブルが有り、そこには歯がいくつか転がっていました。「なんだろう?入れ歯屋かな?」などと思って見ていると、椅子に座って大きく開くブチョックの口に注射器が入り込んでいるでは無いですか。どうも抜歯の為の麻酔の注射のようで、ここは歯医者?抜歯屋?だったのです。
     露天の椅子に座って麻酔を打ち、ペンチのようなものでぐりぐりと歯を抜いてしまうこの様子に私は仰天しましたが、この辺では当たり前の事だとジェフリーもダダも言います。しかもそれ程安くはないらしく、先日サラリーを貰ったばかりだからやれるのだと言っていました。
     脱脂綿を噛んでほっぺたがふくらんでいるブチョックに、「どんな感じか、痛くは無いのか」と聞くと麻酔が効いて全く痛く無いと言い、しかもその手には町の薬局で買って飲むべき薬の処方せんが握られていました。見せてもらうとそこには歯医者の名前とサインがしてあって正規の処方せんでした。と、言う事は、あの椅子一つの露天が正規の歯医者の出店と言う事のようです。嗚呼恐ろしや、でありました。

     トイレットペーパーの話

     ドゥマゲッティーのスーパーでトイレットペーパーを探すのは大変な事である。まあ、売っていな確率が高い。沢山売られているロールペーパーは水には溶けないロールティッシュがほとんどなのである。
       ドゥマゲッティーに限らずフィリピンではトイレに紙を流すのは御法度である。私は最初その理由を浄化槽の問題だと思っていた。こちらの浄化槽は地下浸透式で自然にしみ込んで無くなるのを期待する方式なので紙は残ってしまうから流してはいけないのだろうと考えていた。多分それも理由の一つでは有るけれど、もっと決定的な理由を発見した。紙が溶けないのですぐに詰まるのである。特にトイレが複数有る家では浄化槽までの距離が長くなり複雑にカーブした配管になる。こうなると溶けない紙は配管のカーブや継ぎ手のところで引っ掛かり詰まってしまうようだ。
     そもそも現地の人たちは本来、用足しに紙は用いない。紙で尻を拭く習慣は無いのである。であればトイレットペーパーが存在しないのは至極当たり前のことなのだ。  ではトイレットペーパー風の紙は何に使うのかと言えば、日本では箱に入った高級そうなティッシュが主流だがドゥマゲッティーではティッシュと言えばロールペーパーか、レストランなどで使われる折り紙状の物がティッシュなのだ。  フィリピン人の用足しの方法の主流は、シャワーを浴びる前に裸の状態で用を足し、後でシャワーを浴びるので紙は使わない。シャワー等浴びられる状況では無いレストラン等ではごく稀に紙が置いてあるが、その紙はボールには流さず別に置かれている紙入れの箱に入れる事になっている。紙の無いトイレがほとんどなのだがその場合は必ず手桶とバケツが置いてあるのでそれでお尻を流して処理することになる。
     日本人が多く泊まるホテルはペーパーをボールに流されるのを前提に溶ける紙を置いている所も増えているので気が着かない旅行者も多いかも知れない。  これは犯罪なのだろうか?ドロボーになってしまうのかも知れないが、私は成田空港のトイレから1ロール頂いて行く事にしている。これはちょっと濡れた手で触っても瞬時に溶ける程の物で私のドゥマゲッティーの家でも詰まる事無く使える優れものなのだ。ただし欠点も有って、シャワールームと共用のトイレのペーパーホルダーに入れておくと吸湿性が高くて大きく膨らんで使い難くなるのである。そして、湿気を吸って膨らんだペーパーは、引っぱり出そうとすると千切れて使いづらいのである。

     なんでも安いか?ドゥマゲッティー

     ドゥマゲッティーの物価は日本にくらべればとても安い。何故安いのか?いろいろ言えるが分かりやすい理由の一つとしては、所得が低いからである。しかしそれもじわじわと上がって来ている。所得を得られる階層に入る人は少ないので全体としては目立たないし現地の底辺の人たちは何の話だろうと言うかも知れないが、銀行や外資系の会社では確実に給料が上がっている。それは仕事の質の変化でも有り、その質の変化に対応できる人材を確保する為に給料を上げざるを得ないと言う事のようだ。
     そんな訳で・・・ちょっ強引?意味不明?かな?・・・ドゥマゲッティーでも資格を必要とする仕事の給料は上がって来ている。無理矢理自分の仕事にこじつけて言えばボートのキャプテンの賃金が上がっている。うちだけで言えばここ数カ月で1,4倍になった。ガソリンも上がった。メンテナンスのペンキ代、グリース、オイル、軽トラのタイヤと何でも上がっている。ドゥマゲッティーがと言うよりも、フィリピンがインフレなのである。貧乏人にはより辛い国になっているが、私のような外国人だってだんだん圧迫されている。
     以前500ペソ札一枚有れば満タンに出来た軽トラも今では約750ぺソ必要になっている。ほとんどただだとさえ思えたガソリン代が負担になって来ている。
     と、いう風にこんな事を書き連ねる意図は、早い話がダイビング料金の値上げの言い訳なのだが、これがなかなか理解して貰えない。こちらでは何でもかんでも安いと思ってインプットされると、なかなかそれを修正はしてもらえない。
     アポ島その他のエントリーフィーが軒並み上がった。アポ島は最低で1人700円掛かるのであるが、これは数年前々でタダ、無料だったのである。大手の旅行社の打ち出す格安パッケージの料金はこんな状況でも値下げの傾向に有る。からくりを暴露しても益は無いと思うので控えるが、正直に値段を出すと高いと言われるようになった。ある御同業のガイド氏がこの商売が嫌になって来たと最近言ったが、何となく分る気がする。

       トローリングパート2

     トローリングと言うよりも、日本式のトッパと言う方が正しいのですが、まあ、呼称はともかく和式の曳き釣りを楽しむのであります。ダイビングが終了してお客様の了解が得られた時だけ引くのでありますが、大抵は珍しがってOKと言ってくれるのであります。私は御好意に甘えてBALODOYの船尾に陣取ってビールを1本こっそり隠し持ってトッパ曳きに興じるのであります。最高の条件としては泊まり先がウェザリングで、その前まで曳いて帰り、釣れた魚で晩飯や晩酌の肴と言うのが一番なのであります。1月18日はピッタリその条件の日でありまして、海もそこそこに波気があり、陽も少し傾きつつ有る頃にホテルのビーチ目指して曳きはじめたのであります。
     トッパ曳きは退屈であります。乗っている全員が退屈で眠くなるのであります。船長は何もする事が無く、船は舵も切らず、速度も一定。私はただぼーっと遠くの水面に魚が釣れた徴候が表れるの待つばかりで、隠し持ったぬるいサンミゲールをちびちびと舐めて待つのであります。
     大抵アジの類いが釣れて刺身やスープにして食べるのでありますが、この日はカツオが1本掛かっただけでした。カツオと言うと、ほほぉー、カツオならと言われそうですが残念ながら可哀想なほど小さな魚体のカツオでした。スープのだしにもなるかどうかと言う代物でしたから晩飯のおかずにはなりませんでした。船長かボートマンが持ち帰って食べたのでしょう。
     曳き釣りの天才・・・と自称しておりますが、たまにはこんな日もあるのです・・・いつもでは有りませんぞ、念のために。

        ではまた。

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