南風のたよりNo3


    南の島の話し、あれこれ、その3-マンゴーとドリアンの話 


    フィリピンマンゴーのうまさは誰もが認めると思う。本当に安くてうまい。今の時期は節はずれであると言う人もいるが、マニラあたりよりも随分南のドゥマゲッティーでは、一年中あるし、そして、一年中うまい。
    安い店だと1kg35ぺソ(88円)で中くらいの大きさが4個くる。一人では中くらいのものを1個食べるくらいがちょうど良い。マンゴーはけっこうカロリーが高く、またウルシ科の植物で刺激が強いらしく、食べ過ぎは良く無いと地元の人も言う。
    いくら熱帯でも、マンゴーを美味しく実らせるには手間がかかっているらしく、青い実に袋を掛けたりして大変そうだった。庭先で成りっぱなしのマンゴーは黒ずんでいたり、鳥に突かれていたりで、売っているものと比較すると見るからにまずそうである。
    ドリアンは今が節である(10月半ば頃)。そろそろ終わりかと言う時期かも知れない。ドリアンこそは一年中あるものでは無く、売られている期間は短いようだ。市場でもそう度々は見かけない。
    ドリアンの悪名高い臭いは、食べた事のない人でも知っている話だ。しかし、この臭いがたまらないと言う人も中には居る。言葉で著わすのは難しい臭いだが、それが味のみなもとと言う人もいる。私に言わせればとにかくクサイだけだ。そして、その臭いは、食べてはいけないものである事を主張する臭いだと私は思っている。
    皮を剥くと大きめの種を取り巻くように果肉が包んでいるが、その姿がまたグロテスクであって、臭いの相乗効果と相まって、まったく食べ物とは思えない雰囲気を醸し出している。その姿は大型犬のフンのような形である。
    上品な人はスプーンでこそげ落として食べるようだが、私は手掴かみでかじる。最初のひとくちを口に入れれば臭いとの勝負はお終いである。後は臭いは気にならない。そして、次に待ち構えているのは、果物とは思えない食感であり、のど越しである。この状況も私ごときでは文字にはできない。
    そして、一口目、二口目と好奇心だけを頼りに飲み込んでいくと、徐々に不快感が無くなり、これを旨いと思ってしまう瞬間が訪れるのである。ただし、誰もがそうなるとは限らないし、ドリアンの旨い不味いは固体差が激しく、本当に不味いと思うものも中にはあるので、食べる時にはやはり覚悟が必要ではないかと思う。
    ドリアンと言うフルーツの最大の価値は挑戦する瞬間のドラマにあるのかも知れない。好んで食べ続けたいと、私は思わない食べ物である。と書いてみて、市場でつい探してしまう自分の姿を思い出した。


    10月になるとドゥマゲッティーはそろそろ風向きが変わる。西風が吹き始めて、季節の変わり目を感じる。雨がふる事も多く、そのふり方は凄まじい場合がある。仙台でも夏場にワイパーの効かない雷雨を経験する事があるが、それは可愛らしいと思えるふりかただ。そんな日はきまってトラックやジプニーの横転事故がある。滑りやすい路面に擦り切れそうなタイヤ、川のように流れる雨の道をろくにワイパーも効かない車で飛ばすのだ。人も容赦なく叩き付ける雨に気を取られて車の接近に気付かない。車が人に気付いて急ブレーキをかけてスリップして横転・・・こんなような事故が必ず起きる。しかし、不思議と死人や瀕死の重傷者は出にくい。


    私も街の役場に免許の申請に行った。LTOという、日本の免許センターと陸運事務所をいっしよにしたようなところに行って申請した。1インチ×1インチの写真を持っていけば、英語の国の人は自国の免許証から書き換える形で簡単に取得できる。英語の免許はでない場合、英語表記の国際免許証か、領事館や大使館で証明書をもらってこなければならない。
    それも面倒で、なおかつ、毎日たいしてすることもないと言う人は、LTOで行っている講習を受ければ免許はもらえる・・・らしい。ちなみに日本で言うところの実地試験などは無い・・・らしい。
    なぜ・・・らしい、ばかりが多用されるのかは、私の語学力の無さによるもので、相手の説明をちゃんと理解できないからなのである。
    私は普段の足として、また、少人数のダイビングの移動に元は日本から来たフィリピン製の「マルチキャブ」という車に乗っている。街の人たちは「イージーライド」と呼ぶ。実体は、日本の軽トラックである。しかし、完成車で輸入すると関税が高いらしく、輸入される時にはパーツとして入ってくるらしい。
    私の軽トラは左ハンドルである。もとは日本車なので右ハンドルだったが、こちらに来て左ハンドルにする手術を受けている。右の床には溶接で穴埋めがされ、左側には不思議な付き方のハンドルまわり一式がついている。左ハンドルの日本車、聞こえはちょっとカッコよい・・・ダメ?、所詮は軽トラか。排ガス規制など無いのでエンジンの吹けはすこぶる良い。なんならマフラー無しで直管でも良いのだ?・・・だめかな?
    買って初日に早々とオーバーホールに出した。タイミングベルトとファンベルトの交換、ラジエターの洗浄(はずして洗浄)。燃料フィルターの交換とEGIのセッティング。結構な仕事であるが、これを3時間で仕上げた。パーツ代1000ぺソ、工賃350ぺソ。総額3400円だった。驚異的に早くて安いことに驚いた。


    ドゥマゲッティーは南の島だ。私が永年憧れた、南の島なのだが、私の想像や予定と違って、なんだかとてもエネルギッシュで、疲れる場所でもある。
    私が想像模索していたのは、「南海の孤島」の生活だったのかも知れない。ドゥマゲッティーでは日本で暮らす時とは違った角度にエネルギーを向けなければならない。そのエネルギーの量は、日本での生活と良い勝負かもしれないな、などと思う事も多くなった。
    南国暮しは奥が深そうだぞ、そしてこの街はけっこう疲れるな、などと思う次第であります。
    今回もまたまた南の島は楽園ですのパターンではなく終わってしまいました。


    では、また。

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