◆自分のまちに水源を◆


▲お堂の上は太陽光パネル
 「路地尊(ろじそん)」「会古路地(えころじ)」「はとほっと」。
 東京都墨田区向島かいわいの路地には、へんてこな名前のついた水源が点在している。隣家の屋根から雨水を地下タンクに集め、手押しポンプで天然の雨水をくみ出す。普段は路地の草花への水やりに、いざというときは、消火用などに利用するまちの防災シンボルだ。
 都市部は三〜四年に一度、水不足に悩み、ダムの貯水量を心配する。一転して集中豪雨に見舞われ、下水道の排水能力を上回れば下水道が河川に流れ出すため、水質悪化を引き起こす。下水が逆流してまちにあふれ出すこともある。
 東京の一年間の水道水使用量は約二十億立方b。これに対して年間降水量は約二十五億立方bだという。水道として使う量以上の雨が降っている。都市化の進行とともに雨をそのまま流し、
水が足りないからと上流にダムを建設するという利水方程式が定着した。
 雨水利用を推進する墨田区役所では、一定条件のもとに区内に雨水タンクが三○%普及すれば、下水ポンプ所からの河川への年間流出量を半分にし、地震や大渇水で水道がストップしても一人一日十一gの水を定量供給できるミニダム効果が出てくると試算した。
  墨田区職員でドクトル雨水の異名をもつ村瀬誠さん(52)は、「環境問題は目先の対応だけに追われれば技術の悪循環に陥る。環境のシグナルから問題の本質を読み取り行動すれば、都市部でも自立・循環・共生はできる」と力説する。
 墨田区では雨はだれもが手軽に利用できる価値ある資源となっている。「ためれば資源、流せば洪水」。雨水の特性を生かしたくらしの工夫が広がることを願いたい。

(グローカルネイバーフッド代表 後藤浩成)
2001/11/13(火)日本経済新聞(夕刊)「グリーン通信」掲載
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