「真結びとひとつ結び。この結び方を覚えれば何でもできます」。京都で活躍するコピーライターの森田知都子さんが用意した風呂敷で帽子を作りかぶって見せた。東京・赤坂で京都市の観光や産業の情報を提供する「京都館」が開催した風呂敷講習会での一こまだ。会場は受講生でいっぱいだった。
十年前、京都のまちで外国人が風呂敷をもっている姿にみとれてしまった森田さん。すぐにふろしき研究会を発足し、暮らしに生かす包み方や使い方を模索してきた。現在会員は全国に400人いる。
日本で風呂敷文化が開花したのは庶民が使い始めた江戸時代。銭湯に行く際、衣服を包むのに使った。昭和40年代はじめまではいろいろな場面で用いられてきたが、昭和40年代半ばを境に結婚式場で引出物を入れるのに紙袋が使われたり、量販店がレジ袋を導入したりしたことで、急速に風呂敷は使われなくなった。
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風呂敷は何回も使え、包みたいものにあわせて持ちやすくもできるし、小さく畳むこともできる。合理的でかつ環境にやさしい包装手段だ。しかし森田さんは環境配慮や機能面だけで風呂敷を使っているわけではないという。実際、風呂敷を結ぶたびにイライラしたこともあった。そんな時「そんなあわてんでもいいやないの」と風呂敷から語りかけられ「間」の大切さを知ったという。
風呂敷は知恵を働かせる楽しさや創意工夫する喜びを教えてくれる。ちょっとした不便を受け入れて、スローを楽しむ。こんなライフスタイルがこれからの環境づくりには実は必要なのだ。 |