◆折れたバット有効利用 ◆


▲丈夫で長持ちするはしに変身

 野球のだいご味としてまず思い浮かぶのは、ピッチャーとバッターの真剣勝負だが、この舞台に欠かせない小道具の一つにバットがある。いくら丈夫とはいえ、木製バットならポキリと折れてしまうことも珍しくない。折れたバットのほとんどは、そのまま焼却処分されているという。
 貴重な天然資源である木製バットをリサイクルできないか――。こんな思いの野球関連団体が立ち上がり、植樹活動などを展開する特定非営利活動法人(NPO法人)「アオダモ資源育成の会」を結成。全国規模で折れたバットを回収してリサイクルする仕組みを立ち上げた。
 この団体が特に力を入れているのが、打球を遠くへ飛ばすのに必要な軽さと弾力性を併せ持ち、プ口選手らが好んで使う「アオダモ」製バットの再生。アオダモは国内では北海道の日高山系でしかとれない希少種で、しかも丈夫という。そこで折れたバットをはしメーカーの兵左衛門(福井県小浜市)に送り、板状にスライスしてはしに加工することにした。 一本のアオダモ製バットから五―六ぜんのはしができる。
 さらにはしにはならないグリップ部分や、アオダモ製以外のパットの再利用にも抜かりはなく、靴べらやペーパーナイフに加工する。今後は切り出すときに出る木片から筆記用具やキーホルダーなどをつくる予定もあるという。
 これまでに集まったバットは約一万五千本に上る。折れたバットを無駄にしない取り組みが広がれば、真剣勝負にももっと熱がこもるに違いない。


(グローカルネイバーフッド代表 後藤浩成)
2003/8/23(土)日本経済新聞(夕刊)「グリーン通信」掲載
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