◆麻でできた蚊帳で安眠◆


▲昼間の蚊よけとしても重宝する

 夏の夜の寝苦しさにさらに追い打ちをかけるのが、羽音も耳障りな蚊。自らの手で撃退するだけでなく、蚊取り線香や電気式の蚊取機などを繰り出して安眠を確保するための努力を強いられるが、敵もさるもの、好き勝手に飛び回って枕元にまで侵入してくる。殺虫剤のたぐいも強い味方ではあるものの、一晩中化学薬品混じりの空気を吸うとなれば、体への影響も不安だ。
 そこで見直してみたいのが、昔ながらの生活の知恵、蚊帳(かや)。布団回りから蚊を追い出してつり下げると安眠スペースをつくることができる優れモノだ。しっかりした網戸がないころには、夏の間の必需品だった 。



 昔の蚊帳は麻でできていた。通気性があり、繊維が強く丈夫な素材の特徴を生かした。それが次第にナイロンなど合成繊維にとって代わられるようになった。価格が安く軽量な半面、編み目が広がったり形が崩れたりして使えなくなるなど耐久性が低い面も。そしてアルミサッシやエアコンの普及などで、蚊帳を使う家庭は少なくなったが、蚊を防ぐ手段として今もしっかり息づいている。
 最近では、ふたたび麻の蚊帳を見直そうという機運も広がっている。洗いにくく汚れやほこりがとれないという欠点もあったが、織り方を工夫して水洗いできるようにした商品も登場。ある寝具店では、ナイロン製より高価格にもかかわらず、麻の方を選ぶ人が多いという。
 発想もつくりもシンプルな麻の蚊帳は、暑苦しい夜を涼しくしてくれるに違いない。


(グローカルネイバーフッド代表 後藤浩成)
2003/7/26(土)日本経済新聞(夕刊)「グリーン通信」掲載
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