シンプルな卵焼きから腕によりをかけたケーキまで、様々な料理に使われる卵。中身を食べれば残りの殻は捨てるものだと思い込みがちだが、グリーンテクノ21(佐賀市)の下幸志社長は、山積みの卵の殻を″宝の山″に変身させるユニークな発想の持ち主だ。
もとは建具職人だった下さん、壊れたドアを修理するために訪れた食品メーカーで、大量に捨てられていた卵の殻を発見した。何とか再利用する方法はないものか――。知人らの協力も得て、苦心の末に編み出したのが、殻を粉末化して様々な用途に役立てる技術だ。この粉末を販売するため、四月には同社を設立、経営者に転身したほどの入れ込みようだ。
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食品メーカーから引き取った大量の殻を水洗いして九百度の高温で乾燥。粉砕機で細かい粒子に加工するだけの一見単純な工程だが、殻の様々な特性を最大限に引き出している。
殻の主成分は炭酸カルシウムやリンで、酸によって溶け出す性質があるという。この粉末を酸性の農地に混ぜると、酸を中和する土壌改良剤になる。殻の白さを生かせば、運動場に白線を引く消石灰の代用品だ。さらに、ほどよい硬さは食器の磨き粉にぴったり。細かい傷をつけることなく、茶渋などのしつこい汚れを効果的に落とすことができるという。
おいしく食べる卵の中身だけでなく、これまで見向きもされなかった殻まで使い切ろうというアイデア。無駄なごみを出さずに資源として徹底活用する――。これこそ現代版の「コロンブスの卵」といえそうだ。
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