◆天敵生かし健康な野菜◆


▲キャベツを食いあらす青虫を撃退

 農家の野菜作りで悩ましいのが、作物を食い荒らしたり枯らしたりする害虫対策。即効性を考えれば頼りになるのは農薬だが、敵もさるもの、抵抗力を強めて対抗一する。農薬は害虫の天敵を減らしてしまうので、かえって害虫が増えることもある。次々と新しい農薬を捜入するいたちごっこに陥るケースも珍しくなかった。
 「次にどんな農薬を使えば害虫が退治できるのか」という農家の悩みに対し、天敵の力を借りる″天敵農法″の効用を説いて回っているのが、埼玉県農林総合研究センターの生物機能担当部長、根本久さん(52)だ。すでに県内の百以上の農家に、このユニークな農法をきめ細かく伝授してきた。

 例えばキャベツの葉を食い散らかすコナガや青虫などの害虫は、クモやハチの仲間の大好物だ。クモの住みかになるクローバーやハチが寄ってくるトウモロコシを、キャベツ畑のまわりに植えれば、害虫は天敵に食べられてしまう。これでキャベツは大穴を開けられることなく、すくすく育つというシンプルな理屈だ。
 この農法で栽培したキャベツは好評で、「ブロッコリーやホウレン草も天敵農法で作ってほしい」とリクエストするスーパーもあるほど。害虫駆除を自然の力に任せて省力化できるので、労働力を増やさず作付面積を拡大できるのもメリットだ。
 手っ取り早く見かけのよい野菜を求めるなら、農薬は心強い味方だ。しかし、自然界の巧妙なバランスを生かして育てた野菜は、大地の力をため込んだ強さを感じさせてくれそうだ。


(グローカルネイバーフッド代表 後藤浩成)
2003/7/5(土)日本経済新聞(夕刊)「グリーン通信」掲載
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