◆粗大ごみ処理の奇策◆


▲出かけるついでに持ち込む人も多い

 粗大ごみを出すのにお金がかかるというのは、今や常識。多くの自治体が処理費用に住民負担制を導入しているからだ。お金を払っているとなると、無駄なごみを出す罪悪感は何となく薄らぐが、それは間違い。実は住民が負担する費用は、全体の処理コストの一部でしかなく、残りを税金で埋め合わせておるからだ。
 一方で。この程度の負担さえ嫌がり、あちこちに不法投棄する不届き者も少なくない。コストを抑え、しかも多くの住民の協力を公平に得られるごみ処理のあり方とは――。この難問に一つの答えを出したのが、東京都足立区だ。五月から、粗大ごみを持ち込んだ住民の処理費用を無料にする奇策に打って出た。

 あらかじめ電話で予約した日に、区内に設けた粗大ごみ中継所に持ち込むだけ。収集車が自宅まで引き取りに来てくれる有料収集では、テーブルや自転車で一件五百円、布団で二百円の手数料がかかるが、自分で中継所に運べば費用はゼロ。河川敷などに不法投棄しようとしたごみを、ちょっと足を伸ばして、中継所まで運ばせようという狙いだ。
 ただし、まだ利用できる家財道具を気軽に捨ててしまう人が出ると困るので、中継所を利用できる回数を年二回までに制限。持ち込まれた粗大ごみの一部も、修理して再利用してもらう。
 回収コスト削減と不法投棄防止の一石二鳥を狙ったユニークな作戦。軌道に乗るかどうかは、ごみ処理の大変さを自ら体験した住民のその後の行動に負うところも大きいような気がする。


(グローカルネイバーフッド代表 後藤浩成)
2003/6/21(土)日本経済新聞(夕刊)「グリーン通信」掲載
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