◆照明を消して考えること◆


▲電気のありがたみを実感できる

 環境破壊の深刻さに気付いている人は多いはずなのに、一向に改善の兆しさえみえないのはなぜだろう。相変わらず電灯をつけっぱなしにしたり、新しい電化製品が登場するたびに飛びついたりして、まだ使える道具を捨てて平気な人も、相当数いるからに違いない。目先の損得勘定や利便性にばかり気をとられることなく、次の世代に恥ずかしくない行動をとりたいものだ。
 日常生活を見直すきっかけになりそうなのが、有機野菜の普及などに取り組む市民団体「大地を守る会」などが呼びかけて来月実施するイベント「百万人のキャンドルナイト」だ。二十二日の夏至、午後八時から十時まで、各家庭の電灯を消し、ろうそくの明かりで過ごしてみようという趣向だ。
 あえて快適さに目をつぶり、不自由な生活を体験することで、日ごろ浪費しているエネルギーのありがたさなどを実感してもらう。以前開いた同様のイベントでは、参加者から「利便性を追い求めすぎていると反省した」などの声が寄せられたという。今回はどのような発見があるだろうか。
 しかし、こうした敗り組みが一晩限りの「打ち上げ花火」になってはならない。小さな配慮を積み重ねない限り、複雑に絡み合った問題が解決するわけはないからだ。状況がより悪化して、環境を守るための強制的な停電など、不便さを義務付けられるような事態を招けば、不愉快な思いをするのは私たちだ。
 一過性のイベントに終わらせることなく、心の中に灯火(ともしび)を絶やさずいたい。


(グローカルネイバーフッド代表 後藤浩成)
2003/5/31(土)日本経済新聞(夕刊)「グリーン通信」掲載
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