◆カラス問題を考える◆


▲カラスとの共存の道を探りたい

 童謡や神話にも登場し、人間とのなじみが深い鳥であるカラスの身辺が騒々しい。えさの豊富さにひかれたのか、もともと山林暮らしだったカラスたちが都会でも異常に増えているのだ。東京都内で生活するカラスは、今や約三万七千羽に達したともいわれる。
 住民から「子どもがケガを負わされた」「たくさんいるので怖い」などの苦情が殺到。都は増えすぎたカラスを減らす対策に取り組まざるを得なくなった。わなを仕掛けて捕獲し、炭酸ガスを吸わせて安楽死させる。昨年度には九千羽を超えるカラスが殺された。この手法には異論もあり、各地の自治体が頭を痛める対策の決定打にはなりえていないようだ。

 一方で、殺さずにカラスを退治しようというアイデア商品も登場している。ミツギロン(大阪府堺市)が販売するごみ袋「破れんゾウ」は、人間が出したごみをえさにされないよう、カラスの学習能力を利用。トウガラシの成分を練り込み、くちばしで袋を破って中身をついばもうとすると、辛さにびっくりする仕組みだ。実際かじってみると、すごい刺激で口中が痛くなるほどだ。
 カラスへの思いはどうあれ、忘れてならないのは、我々にはカラスを招き寄せた責任があるという点。生ごみを大量に放置してあれば、絶好のえさ場になるのは分かりきっているはずだ。それを一方的に悪者に仕立て上げるのは、どうにも後ろめたい。
 人間とカラスの衝突を解決する処方せんは、カラスの増加が発する警告をきちんと受け止められるかどうかにかかっている。


(グローカルネイバーフッド代表 後藤浩成)
2003/4/26(土)日本経済新聞(夕刊)「グリーン通信」掲載
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