◆やさしい和紙を着る◆


▲紙から糸をよるので強度も十分

 「祖父がキセルを掃除するため、和紙でこよりを作ってあげた経験が商品開発のヒントになった」と振り返るのは、編み物メーカー、ケイテー・二ット(福井県勝山市)の荒井孝社長。同社は和紙で糸をよって編み上げた繊維製品を商品化し、注目を集めている。
 福井県は「越前和紙」の産地。地元に根付いた技術を活用して、コウゾやミツマタ、ガンピなどを紙にすき、細くよって糸にする。製品の種類ごとに原料の配合比率を調整したり、平らな和紙から均一の太さの糸をつくる製法などに工夫を凝らしている。
 一度和紙にしてから糸をよることで、さらさらした肌触りや消臭効果が得られる。紙ということで耐久性を不安視する向きもあろうが、繰り返し洗濯しても綿製品とほとんど変わらないという。
 使えなくなったら、燃やせば有害物質を出さずに処分できるし、土に埋めても分解するので問題はない。原料は間伐材を利用しており、森林の乱伐をもたらさない。広大な綿花畑をつくったり、工場で化学繊維を生産したりすることに比べれば、環境への負荷は低いレベルに抑えられる。
 メリットはまだある。チクチクしない腹巻き(四千九百八十円)や足のにおいを吸着する靴下(千五百円)など、使う人自身にもやさしい。女性の生理用品(千三百円)も、肌の敏感な人を中心に人気上昇中だという。
 地域の伝統技術をベースに生み出された、素朴なエコロジー繊維製品の数々。身に着ける人の心まで包み込む思いやりに触れれば、寒さも和らぐような気がする。


(グローカルネイバーフッド代表 後藤浩成)
2003/1/4(土)日本経済新聞(夕刊)「グリーン通信」掲載
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