◆進む「環境危機時計」の針◆


▲旭硝子財団に掲げられた
「環境危機時計」のパエネル

 環境破壊が危機的な状況に陥っていると叫ばれて久しいが、どの程度深刻なのかを具体的に示す尺度があれば、地球を守る取り組みにも力が入ろうというもの。旭硝子財団(東京・千代田)が発表した「環境危機時計」によると、今年の時刻は「極めて不安」レベルの九時五分だった。
 この時計は、世界各国の行政担当者や非政府組織(NGO)メンバーら専門家を対象に、環境に対する危機意識を時刻で表現してもらうもの。不安がなければ零時一分、最も強い危機感を抱いていれば十二時という具合に十二時間制で表す。それによると回答者の平均時刻は九時五分だった。調査を開始した一九九二年時点は七時四十九分だったが、その後様々な対策が打ち出されているにもかかわらず、時計の針は進んでいる。
 日本だけを取り上げれば、九時十八分、昨年より十四分も進んだ。同財団の国井宣明事務局長は「専門家に限らず平均的な日本人を対象に調査すれば、おそらく中間的な六時ごろになるのでは」と推測。時計がどんどん進むのもいやなものだが、危機感が足りずに地球環境の実態より遅れてしまっては、取り返しがつかないことになってしまう。
 アフリカ、オセアニア、中南米地域なども九時三十分前後で、総じて不安感は強い。地球レベルでの解決を急がなくてはならない問題の深刻さを浮き彫りにした。
 この時計の怖いところは、十二時を過ぎてしまえばあしたは来ない点だ。針を大きく戻そうという人類が共有すべき危機意識に、時差はあってはならない。


(グローカルネイバーフッド代表 後藤浩成)
2002/10/12(土)日本経済新聞(夕刊)「グリーン通信」掲載
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