◆自然の力で蚊を退治◆


▲無風状態で3・9時間使える

 うすぐ夏本番。寝苦しさに追い打ちをかける蚊が来襲したとき、頼りになるのは今も苦も蚊取り線香だ。かつての主成分は天然の除虫菊だったが、 一九六〇年ごろにピレスロイド系殺虫剤が実用化されたことから、化学的に合成した蚊取り線香が、主流となっている。
 この状況に異を唱えたのが、有機農産物や無添加食品を販売する「りんねしゃ」(愛知県津島市)。除虫菊を主成分にした「菊花せんこう」を四年前に復活させた。定石通りの渦巻き状だが、濃緑色に仕上げる着色料を使わないので、薄茶色をしているのが特徴的。飯尾純市社長は「効果は安眠するのに必要十分にという。価格は六百九十―九百八十円。
 同社ではさらに、これまで中国が中心だった除虫菊栽培を日本国内でもスタートさせた。白羽の矢が立ったのは、気候がマッチする北海道。農地を所有する知人に頼み、約二千三百坪(約七千三百平方b)の畑で菊花せんこう用の除虫菊を育てている。
 大手メーカーでも昨年ごろから、除虫菊を使った線香が登場。化学製品一辺倒だった蚊取り線香市場に変化の兆しが表れている。飯尾社長は「昔の知恵を生かせば脱化学物質は難しいことではない」と断言する。
 自らも化学物質過敏症に悩んできた飯尾さんは、クスノキから抽出した成分だけでつくった衣類の防虫剤も開発、こちらの売り上げも順調だという。消費者の視点を大事にし、化学製品をできるだけ使わない商品開発にかける熱意が生んだ復活劇。この線香で眠りにつけば、心地よい末来社会の夢を見ることができるかもしれない。

(グローカルネイバーフッド代表 後藤浩成)
2002/7/6(土)日本経済新聞(夕刊)「グリーン通信」掲載
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