◆ごみ清掃車の走らない町◆


▲びんや缶、古紙だけでも12種類に分類する(徳島県上勝町)

 徳島県の山あいに位置する上勝町には、行政のごみ清掃車が走っていない。緑豊かで静かなこの町で、ごみ処理の主役を担うのは約二千三百人の町民たちだ。
 大半の自治体では、近所の集積所にごみをまとめて出しておけば、清掃車が処理施設まで運んでくれる仕組みを採用している。しかし上勝町では、清掃車に代わって、住民自らが町の中心部にある「日比ケ谷ごみステーション」に持ち込む。午前七時半から午後一時まで、日曜や祝日もごみを受け入れ、ほかの用事のついでに立ち寄ることができる。
 このごみステーション、徹底した分別処理の拠点にもなっている。まず各家庭で生ごみをたい肥化する。さらに持ち込んだごみは、びんや缶から、割りばしや廃食油、紙おしめまで、全部で二十五種類に区分けし、収集容器に入れる。ごみに責任を持つ意識を高める効果もあるという。
 上勝町では最近まで、積み上げたごみに灯油をかけて野焼き処分するなど、ごみ処理対策が遅れていたが、一九九八年から細分化した分別を実施するようになった。そのかいあってごみの焼却処分量は半減し、住民一人当たりの処理費用も全国平均の六割程度に抑えている。
 まちづくり推進課の東ひとみ課長補佐は「高齢者世帯のごみをステーションに持ち込むボランティア活動が盛ん。地域コミュニティーがシステムを支えている」と話す。住民の力を集めて小さな町を一気に「エコタウン」に変身させた取り組みは、行政サービスのあり方を見つめ直す示唆に富んでいる。


(グローカルネイバーフッド代表 後藤浩成)
2002/6/22(土)日本経済新聞(夕刊)「グリーン通信」掲載
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