苦もなく駆け抜け、さわやかな風を残して走り去る――。国内有数の観光地、京都市で人々の目をくぎ付けにしている新しい乗り物が、自転車式の「タクシー」だ。中心部の烏丸・寺町などを含む一`四方のエリアで今月から運行を開始、注目を集めている。
運営するのは特定非営利活動法人(NPO法人)、環境共生都市推進協会。地球温暖化防止京都議定書の採択をきっかけにスタートさせた、人と自然が共生できる街づくり活動の一環だ。ドイツのメ―カーから一台八十万円の専用車両を十台購入した。
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再生可能なポリエチレン製の車体は全長約二b、運転席の後ろに乗客が二人座れるスペースがある。二十一段の変速ギアでちょっとした上り坂もすいすい進む。運転手の脚力だけで最高時速は二十五`に達するという。それでいて地球温暖化の原因でもある排ガスはまったく出さない。料金はエリア内なら距離にかかわらず一人一回三百円。
細尾友子事務局長は「自動車は確かに便利だが、依存しすぎるのも問題。大切なことは状況に応じて交通手段を使い分けること。観光や買い物、高齢者の足代わりに気軽に使ってもらいたい」と強調する。このタクシー、ドイツなど欧州を中心に十一カ国の二十都市で、庶民の足として定着しつつあるという。
自転車タクシーが普及すれば、中心部への自動車の乗り入れを抑え、交通渋滞の軽減にもつながる。人にも環境にもやさしいこの乗り物が、古都の新しいシンボルになるに違いない。 |