◆夢が広がるおがくず粘土◆


▲鉛筆の製造工程で出るおがくずを利用

 「我が身を削って人の役にたつものは」――。その答えは鉛筆だ。完成品となってからはもちろんだが、製造工程でも削られてばかり。板状で輸入された木材は芯(しん)が入る部分の溝を彫ったりして、実に約四割がおがくずになってしまう。
 焼却処分することが多かったおがくずを有効活用しているのが、東京都葛飾区の鉛筆メーカー、北星鉛筆。おがくずを原料にした″木製粘土″を開発、再利用に取り組む。鉛筆の生産工程で出たおがくずを、細かい粉状になるまですりつぶし、のりと水を混ぜる。いたってシンプルな製法だが、ちぎったりのばしたり粘土のように自由に形をつくることができる。二―三日乾燥させれば紙粘土のように固まる。
 同社は、この粘土と鉛筆の芯をセットにし、鉛筆自作キット「もくねんさん」として販売している。鉛筆にこだわらず芯を入れずに粘土として使ったり、好みの色をつけたりもできるので、人気を集めている。ホームページではユーザーが作ったかわいらしい動物の置物や小物入れなどの写真も公開している。キットの価格は三百―五百円。
捨てる際は上に埋めれば自然に分解するうえ、燃やしても有害物質が出ないという。杉谷和俊社長は「天然素材で軽くて丈夫。しかも造形が楽だ。自動車のバンパーなどプラスチックの代替製品への応用も模索している」と、アイデアを広げている。おがくず粘土を利用した携帯電話やテレビ、パソコンが登場する日も遠くないかもしれない。

(グローカルネイバーフッド代表 後藤浩成)
2002/5/11(土)日本経済新聞(夕刊)「グリーン通信」掲載
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