第 4 章

 

どーやって火をつけるの?

 


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『理化学辞典 第四版』アルミニウムの項を見ると、「家庭用ホイルは99.0%以上の純度を持つ.銀白色の軽い金属で立方最密構造.金属結合半径1.43Å.融点660.4℃,沸点2470℃.密度2.70g/cm3(20℃).」とか、「空気中では酸化被膜を生じる.融点近くまで熱すると強い光を放って燃え,酸化アルミニウムとなる.」という記述があった。

 すなわち、
テルミットの一部を660℃近くまで加熱してやれば、反応の口火が切られるわけだ。


 そういったわけで、点火のやり方はいくつか考えられるから好きなのを選んでね。


▼ そ の 1 ▼

 
過マンガン酸カリウム塩素酸カリウムなどの強酸化剤(助燃剤として砂糖を混ぜても可)に濃硫酸を滴下する(酸化剤と強酸性物質を濃厚な状態で混合する)。


▼ そ の 2 ▼

 
過マンガン酸カリウム(他の強酸化剤でもできると思うけど)にグリセリンを滴下する(★筆者注3★)。


▼ そ の 3 ▼

 
塩素酸カリウムなどの強酸化剤を点火剤として、姫ちゃんのマグネシウムリボンを導火線にする(マグネシウムはリボンでなくてもいいけど、リボンを使う場合は2本をよじって使うのがポイント)。


▼ そ の 4 ▼

 
マグネシウムを点火剤にする(燃えているマグネシウムの温度は、1650℃くらいになるらしい→▽参考3▽)。


▼ そ の 5 ▼

 
ニクロム線に電流を流し、赤熱させる(理化学辞典第4版によると、「最高使用温度900〜1200℃のものが市販されている」とのこと)。


▼ そ の 6 ▼

 
白熱電球のフィラメントを利用する手も考えられるが、ニクロム線に比べて細いから扱いにくいかも。


▼ そ の 7 ▼

 ひょっとしたら、マッチやライターの炎だけでも点火できるかもしれんなぁ。


▼ 番 外 編 ▼

 「二クロム酸アンモニウム(NH4)2Cr2O7+マグネシウムリボン」「過酸化ナトリウムNa2O2に水を滴下する」などの方法もあるにはあるが、あまり現実的ではないので今回は没とする。


 これらの点火剤の働きによって高温状態がつくり出されると、まず点火剤の近くの
アルミニウム粉末が燃えて、そのまわりのテルミットを強く加熱する。その時の熱エネルギーがアルミニウム酸化鉄の反応の活性化エネルギーとして使われて、テルミット反応が開始される。そして、このはじめのテルミット反応にともなって放出されるエネルギーが火種となってまわりの未反応テルミットの反応を促し、連鎖的に反応が進んでいくのである。


★ 筆 者 注 3 ★

 過マンガン酸カリウムグリセリンを滴下した場合、「グリセリンを滴下してから10〜15秒たつと煙を生じ始める.20〜30秒たつと,激しく発火する.反応後,塊となった鉄が植木鉢の底に見られる.」と、高校の化学の教科書には書いてあった。

 過マンガン酸カリウムに限った話じゃ無いけど、この遅延時間は粒子径や温度、その他の条件によって変わるからね。



▽ 参 考 2 ▽

 並木書房から出ている
『SASサバイバルハンドブック』の217ページに、興味深い記述があったので、以下に引用させていただきました。



 化学薬品を用いて火を起こす

 身近に化学薬品が一式あることはまずないが、ごく一般的な化学薬品で火を起こすことができる。以下の混合物を石の間でひいたり、ユミギリ、キリモミなどのまさつ部分におけば、簡単に火がつく。薬品混合時は金属に触れないようにする。また湿気に弱いので注意する。


 (筆者注:ここに危険を示す髑髏マーク)以下の化学薬品、特に塩素酸ナトリウムは取り扱いに注意する。衝撃や振動で発火するので撹拌したり、こぼさないこと。固い地面にまいた除草剤を踏んだり、その上に金属性のじょうろなどをおくと発火する。


 塩素酸カリウムと砂糖を3対1の割合で混ぜると高温で燃える。硫酸を数滴垂らして点火する。

 過マンガン酸カリウムと砂糖を9対1で混ぜる。塩素酸カリウムと砂糖の混合物より安定するが、着火にかかる時間は気温による。グリセリンを加えても発火。

 塩素酸ナトリウムと砂糖を3対1で混ぜる。




★ 筆 者 注 4 ★

 『SASサバイバルハンドブック』の原書はイギリスで出版されたものなので、おそらくイギリスでは塩素酸カリウムは医薬品として使われているのだろう。筆者は日本のノド用錠剤に塩素酸カリウムが使われているという話は聞いたことがない。塩素酸カリウムはかつて日本薬局方に、第七改正までは収載されており、
[適用] 局所洗浄剤として、口内炎、咽頭炎、膣炎、痔疾、潰瘍などに2〜5%液を用いる。本品をのみ下すと中毒のおそれがあるので小児に用いるのは危険である。工業上マッチ、花火、爆薬、アニリン黒の製造原料として用いる。
との記述があったが、第八改正から削除された。


★ 筆 者 注 5 ★

 SAS戦闘用サバイバルキット(原書房の『新版サバイバル・バイブル』337ページ参照)と、並木書房が限定輸入して売っている「ジョン・ワイズマンのSASサバイバル民間用キット」には、ちゃんと入っているぞ。


★ 追 記 ★

 並木書房は1995年11月までに「ジョン・ワイズマンのSASサバイバル民間用キット」の取り扱いをやめたらしい。それと入れ替わるように有限会社ベンチプレスの「SAS民間用サバイバル・キット」の広告が 柘植 久慶 氏の著書に挟まれるようになった。ただし、この「SAS民間用サバイバル・キット」には、過マンガン酸カリウムは入っていない。


★ 筆 者 注 6 ★

 その昔日本では、98%塩素酸ナトリウムが、「クサトール」という商品名で薬局などにおいて売られていたそうだ。まだ売ってるのかなぁ?もう売ってないだろうなぁ。




▽ 参 考 3 ▽

 原書房から出ている
『新版 サバイバル・バイブル』の271ページにマグネシウム発火工具に関する記述があったので、以下に引用させていただきました。



マグネシウム発火工具(4・1・3) 

 ナイフ一本あればどんな悪条件でも火がつけられるという宣伝文句どおり、イギリス軍が強風のフォークランド島で大いに活用、実戦で実証したのが<マグネシウム発火工具>である。
 これは全体がマグネシウム主体の金属製で、それをナイフで削り落とす。その削りかすがたまったところへ、発火装置を埋め込んだ面をナイフで擦ると火花が散り、削りかすが華氏三〇〇〇度(摂氏一六五〇度)という高温を発して火がつくしくみだ。
 木や葉などが少し湿気を帯びていても、この高温だと燃え上がってしまう。また強風下の点火もまったく問題ない。
 アメリカ空軍の搭乗員が着るサバイバル・ヴェスト(10・1・1)にも、これをかならず納めることになっている。
 サイズは、二七ミリ×七五ミリ×一〇ミリで、重量は四一グラムである。

 価格は二二〇〇円程度。monoショップや東急ハンズをはじめ、サバイバル・ショップにはたいてい揃っている。


★ 筆 者 注 7 ★

 (4・1・3)と(10・1・1)は、『新版 サバイバル・バイブル』における項目番号である。






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