第 1 章

テルミットってなーに?


1−2  調べた結果は?



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 はじめに森北出版の
『化学大辞典』で引いてみると、次のような項目が見つかった。

テルミット法 [thermite process]
酸化しやすい金属粉末と還元しやすい金属酸化物粉末を混合し着火すると,金属粉末は酸化物の酸素を奪って燃焼し,酸化物は還元されて熔融金属になる.この金属と酸化物の混合剤をテルミットといい,反応をテルミット反応という.金属粉末としてアルミニウムを使用することが多いが,シリコンまたはフェロシリコンを使用することもある.テルミット反応を利用した精練法をテルミット法といい,クロム,コバルト,マンガン,バナジウムの酸化物から金属を得るときの一精練方法として使用されるが,得られる金属の純度があまり良くないので,これらの金属の精練方法の主流とはなっていない.また,アルミニウム粉末と酸化鉄粉末のテルミット反応を利用して鉄を溶接する.これをテルミット溶接といい,鉄道のロングレール敷設のさいなどに使用している.



 次に、岩波書店の
『理化学辞典 第4版』の「テルミット法」の項を見ると、こんなことが書いてあった。

テルミット法 [thermite process]
アルミニウムの酸化のとき発生する多量の熱を利用した金属酸化物の還元法.アルミノテルミ法,ゴルトシュミット法ともいう.金属酸化物にアルミニウムの粉末を混ぜて点火すると,アルミニウムは酸化物を還元して自身はアルミナとなる.このとき発生する高熱により,遊離された金属はただちに融塊となる.炭素を含まない粗金属を作る目的に利用され,クロム,コバルト,マンガン,バナジウムなどの冶金に応用される.



 ゴルトシュミットっていう人がテルミット法を開発したのか?などと思いつつさらに
『理化学辞典』で調べてみた。「アルミノテルミ法」は載っていなかったものの「ゴルトシュミット」は見つかった。

ゴルトシュミット [Goldschmidt, Victor Moritz] 1888.1.27-1947.3.20
スイス生まれの岩石学者,鉱物学者,結晶学者,地球化学者.1914 年クリスティアニア(現オスロー)大学教授,1929 年ゲッティンゲン大学教授.1935 年ナチスに追われオスローに帰る.1942 年ドイツ軍に捕えられたが,収容所を脱出,スゥエーデン,イギリスに逃避.1946 年オスローに帰る.初期は変成岩の研究に相律を適用し変性作用や交代作用を解釈した.その後は結晶化学や地球化学の分野の開拓に新風を吹き込んだ.主著に"元素の地球化学的分配"(Geochemische Verteilungsgesetze der Elemente,8巻,1923-37)がある.



 
ナチに捕まったってことは、この人ユダヤ人なのか?それにテルミットのことは一言も書いてない。本当にこの人がテルミット法を開発したという確証が得られなかったので、共立出版株式会社の『化学大辞典』に当たってみた。フタを開けたら,「ゴルトシュミット」の項が二つもありやがんの。

ゴルトシュミット GOLDSCHMIDT,Hans 1861.1/18〜1923.5/21
ドイツの化学者.Essenの生れ.父は同地で化学工場を経営していた.ベルリンおよびHeidelberg大学で化学を学び,R.W.E.Bunsenの感化を受けた.のち父の工場に参加した.アルミニウムの酸化反応を利用したテルミット法を発明したが,これはマンガンやクロムなどのヤ金技術として,あるいは鉄道レールの溶接などにきわめて重要な技術となった.1917年以来工場をやめ,ベルリンに実験室を設けて,もっぱら有機化学方面の研究を行っていた.彼の兄 Karl Goldschmidt (1857〜1926年)は,ブリキから脱シャク(錫)する方法の発明者として知られている.主著 Aluminothermie,1925.

ゴルトシュミット GOLDSCHMIDT, Victor Moritz 1888.1/27〜1947.3/20
ノルウェーの鉱物学者,地質学者.スイスのZürichの生れ.ノルウェーに国籍をもっていたが,1914年オスロ大学,1929年Göttingen大学教授となり,地球化学および結晶化学に大きな貢献をなした.1935年のナチス治政下のユダヤ人排斥に会してノルウェー,イギリスに流浪の生活を送ったが,1946年ようやくオスロにのがれ帰り,翌年病を得て生がいを終わった.初め変成岩に関する研究を行ない,しだいに地球上の元素分布などについて研究を進め,これによって地球化学の基礎を築いた.岩石圏やイン石中の元素分布の研究は,X線分析,陰極層弧光分光分析などの方法によるもので,この分野において,多大な寄与をなした.



 こーゆーオチがついたか。しっかりしろよ理化学辞典。


 んで、東京化学同人の
『化学大辞典』には、こう書いてあった。

テルミット法 [thermit process]
アルミノテルミット法あるいはゴルドシュミット法ともいう.アルミニウム粉末を還元剤として金属酸化物と混合し,アルミニウムが酸化物を還元して自身が酸化するときの大きな発熱を利用して,短時間に溶融還元する方法.通常,開放式のるつぼ型炉で行われ,塩素酸カリウムのような過酸化物とアルミニウムを混合した着火剤にマグネシウムリボンなどで点火することにより反応が開始される.フラックスは通常用いられないが,高アルミナスラグの流動性を増すために,石灰,ホタル石などが使用される.フェロバナジウム,フェロニオブ,金属クロムなどの製造に用いられる.テルミット(thermit)とは酸化鉄とアルミニウム粉の等量混合物で,鋼などの溶接に使用される.



 また、朝倉書店の
『実用化学辞典』には、こう書いてあった。

テルミット thermit
酸化鉄(V)とアルミニウム粉末の混合物.通常,金属筒中に封入し,焼夷弾として用いられる.1900年ごろにドイツ人の化学者 Goldschmidt が発明した.マグネシウムリボンによる点火で,鋼を軟化させるのに十分な約2200℃の温度を発生する.これは,典型的な酸化物/金属反応の一つであり,自身が酸素を供給するため,反応の停止は非常に困難である.〔危険性〕火災危険性.



 さらに、日刊工業新聞社の
『理工学辞典』には、こう書いてあった。

テルミット thermite 〔化学〕
金属アルミニウム粉末と酸化鉄(V)粉末を緻密に混合したもの.点火,燃焼すると,発熱して高温となるため,酸化物が還元されて融解鉄が生じ,遊離する.用途は,鉄鋼の溶接や,軍事用として焼夷(しょうい)弾に用いられたこともある.

テルミット法 thermite process 〔材料〕
酸素との結合力がAl(アルミニウム)より弱い金属の酸化物粉末を,Alの粉末と混ぜて点火すると,Alが酸化物を還元してそれ自体は酸化アルミニウムになるが,そのときに多量の熱が発生するので,還元されて出てきた金属が直ちに溶融して塊になることを利用する精練法.酸化鉄の場合には鉄材の溶接にも利用される.

テルミット溶接 thermite welding 〔機械〕
テルミット反応の熱とそれによってつくられる溶融金属を溶加剤として使用する溶接の方法.レール用テルミット剤は粒状酸化鉄74と粒状アルミニウム18.5,軟鋼切材7,フェロマンガン2,フェロシリコン0.3,フェロクローム0.35より成り立っている.点火剤は過酸化バリウム(BaO2)とAl(アルミニウム)の混合微粉末が使われる.テルミット反応とは酸素と親和力の強いAlを還元剤とする金属酸化物の冶金反応のことであり,大量の反応熱(3000度)を利用する.溶解,加圧,組み合わせテルミット法の3種類がある.溶解テルミット法は鉄道レールの溶接法として使用される.その他舶用部品,肉盛り用,鋳鉄の溶接などに使用される例がある.電気設備の整わない環境下での溶接作業に威力を発揮するものである.



☆ お ま け ☆

 丸善株式会社の
『化学便覧 第5版 応用化学編 T』には、こんなことが書いてあった。

6.2.5 金 属 還 元 法

 酸化物を還元して金属を得る場合に,還元剤として古くから水素および炭素が用いられてきた.水素あるいは炭素を用いた場合には,水蒸気あるいはCO,CO2のような気体が生成するので,反応生成物を金属から分離するのに特別な操作を必要としないなどの操作上の利点をもっている.ところが,酸素に対して特に大きな親和力をもつ金属の酸化物の水素による還元では水素の精製に限度があり,実際には還元が不可能である.また,炭素による還元は,理論的には還元温度を高温にすると可能であるが,得られた金属が蒸発したり,金属によっては炭化物を生成するものがあり,還元剤としては適さないことになる.このような場合には,還元剤としてより酸素との親和力の強い他の金属を用いることになる.
 図6.13に酸化物の標準生成自由エネルギーと温度の関係を示す.この図よりある酸化物を金属で還元しようとする場合,還元の可能性についてその反応のΔG゚を求めて大体の見当をつけることができる.つまり一般には,ΔG゚の値が上にある酸化物(不安定)が下にある金属(酸化物が安定)により還元される.
 金属によって化合物を還元する方法の代表的なものは,Goldschmidtアルミニウムテルミット還元法(ゴールドシュミット法)である.これは,たとえば酸化鉄を粉末状金属アルミニウムと混合して点火することによって,次式に示す反応,

   Fe2O3+2Al→→→2Fe+Al2O3

を行わせるもので,難還元性高融点金属化合物の還元に有用な手段である.この反応の進行は,鉄およびアルミニウムの酸素に対する親和力の大小によって決定される.
 金属による還元は表6.3に示すように,酸化物を直接還元する場合のほかに,いったんハロゲン化物にして,これを還元する例が多い.これは,その酸化物が非常に安定な化合物であっても,ハロゲン化物にすれば比較的還元されやすいという性質を利用していること,ハロゲンガスの金属への溶解度は一般的に小さいこと,またハロゲン化物は一般に低融点,低沸点であり蒸留精製などによりあらかじめ純度を上げておくことができるからである.
 還元剤として用いる金属としてはできるだけ安価で,しかも還元力の強いこと,精製金属への溶解度が低いこと,還元で生成する化合物と生成金属との分離が簡単であること,取り扱いができるだけ容易であること,純度が高いことなどの条件が要求される.ふつうに用いられる金属としてはNa,Ca,Mg,Alなどがあげられる.
 以下,例としてチタン,希土類金属,ニオブの金属還元精練,最後におもに希土類合金の還元拡散法について述べる.


  ( 中 略 )


 c. Nb2O5のアルミニウムテルミット還元
 Nb2O5とAl粉を混合し,次式の還元反応を利用し,金属ニオブを製造する方法である.

3Nb2O5(s)+10Al(l)→→→6Nb(l)+5Al2O3(l)

Alと酸素の強い親和力によりきわめて短時間に上記反応を起こさせる.上記反応は発熱反応であるので,点火により反応の口火をきるだけでよい.常温で点火を行う場合には,導火線としてたとえばマグネシウムリボンやニクロム線通電を用いる.着火しにくい場合には,発火剤として過酸化バリウムなどを少量加えておくと燃焼は順調に進む.反応が活発に起こらず未反応物が多量に残るような場合は,反応の熱量不足であるから予熱するか,塩素酸カリウムのような助燃剤を加える.予熱法とは容器全体を適当な温度に予熱しておき,これに点火するか,あるいは反応が自然に始まるまで温度を上昇させることである.
 Alの配合量は,理論配合量の5〜20%過剰を用いる.
 反応が進行すると,系の温度はNbの融点(2740K)以上に達し,Al2O3(l)とNb(l)は二層に分かれる.これにより通常97%程度の粗金属Nbを得る.
 表6.5に200gの小規模実験結果の一例を示す.Nb中の残留Alの増加に伴い酸素濃度は減少している.3s規模ではNbの収率は98%程度にまで上昇する.
 このようにして得られた粗金属Nbは,電子ビーム(EB)溶解により純度99.9%以上のNbとなる.




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