-March 10, 2011 by Ted Inoue-

  1. 情報タイトル：「2TBの壁」
  2. 目的：

    ・ＨＤＤ（ハードディスクドライブ）もいよいよ３ＴＢのものが視野に入ってきた。現在価格.comの先頭を走るのは２ＴＢハードディスクです。７～８千円で買える２ＴＢを選ぶか、将来を見据えて1.5万円で買える３ＴＢを選ぶか思案するところです。しかしここに大きな問題があります。それは「２ＴＢの壁」です。不用意に２ＴＢ以上の容量を有するＨＤＤを購入するとえらい目に会います。ではその「２ＴＢの壁」とは何か？についてすこし詳しく述べます。

  3. ＨＤＤ（ハードディスク）の構造ならびにセクターの概念：
    ・４枚のプラッターは８面の磁気記録面を持つ。記録面は同心円に区切られ、トラックと呼ばれている。また同心円に対して垂直方向、幾何学的セクタに分割されている。この幾何学セクタとトラックの交わった所が、記録最小単位セクターである。１セクター＝512バイト。 HDD-11
    hdd-9

  4. 「２ＴＢの壁」に関係する２つの仕様書：パーティション・テーブルとアクセスコマンド・ブロックです。
    ４－１．MBR（Master Boot Record）方式のパーティション・テーブル
    ４－１－１．構造：下図の①と②が関係します。

    ４－１－２．①と②の働き：2TBのハードディスクを４パーティションで使う例を考えます。
    パーティションＮＯ．（使用者が決める） 1st 2nd 3rd 4th
    パーティション容量（使用者が決める） 200GB 500GB 600GB 700GB
    ・①LBA先頭セクターが指示するバイト数 ０バイト 200GB 700GB 1.3TB
    ・②LBAセクター数が指示するバイト数 200GB 500GB 600GB 700GB
    ＊表中の数字は分かりやすくするために、きっちりの数にしました。厳密ではありません。

    ４－２．10バイトCDB(Command Descriptor Block)スカジー・アクセスコマンド・ブロック
    ４－２－１．構造：下図の③が関係します。
    hdd-4

    ４－２－２．③の働き：LBA(Logical Block Addressing)方式で番号付けられた、500GB目に記録されているデーターを読んで来る例を考えます。
    コマンド識別 ・③LBA指定セレクターが指示するバイト数
    read（読め） 500GB

  5. ①、②、③が取り扱える最大セクター数とバイト数の計算：以下の最大数値より「２ＴＢの壁」が想定できます。
    計算式 補足
    ・最大セクター数＝2^32=4294967296=約4Gセクター ①②③は４バイト構造、１バイトは８ビット。４バイト=32bit
    ・最大バイト数＝最大セクター数ｘ512バイト＝2199023255552バイト＝約2TB １セクターは512バイト

  6. [想定]４ＴＢハードディスクを用いて「２ＴＢの壁」を超える試み：
    ６－１．パーティションを２つ切った時の①②：パーティションは「2TBの壁」より少ない1.9TBに設定。
    パーティションＮＯ．（使用者が決める） 1st 2nd 合計容量
    パーティション容量（使用者が決める） 1.9TB 2.0TB 3.9TB
    ・①LBA先頭セクターが指示するバイト数 ０バイト 1.9TB  
    ・②LBAセクター数が指示するバイト数 1.9TB 2.0TB  
    ＊表中の数字は分かりやすくするために、きっちりの数にしました。厳密ではありません。

    ６－２．③を考慮：3.0TB番地にあるデータを読み込む事を想定。
    コマンド識別 ・③LBA指定セレクターが指示するバイト数
    read（読め） 3.0TB・・・これは×です。③は2TBまでしか指示できません。

    ６－３．結果：
    ・パーティションで3.9TBまでいけると考えたが10バイトCDBの制約で2TB止まりとなった。これで「２ＴＢの壁」と呼ばれているＭＢＲ方式によるシリアルＡＴＡハードディクスの容量制限が確定したわけです。

  7. [実証]新品の2TBハードディスクは何処まで使えるのか？：
    　雪の降る寒い３月１日、２ＴＢのハードディスクを買いに立川ビッグカメラへ行った。信頼性のある日立製を求めたが売り切れだ。ウェスタンデジタル、シーゲートも入荷待ち。在庫があるのは韓国製サムスンしかない。品質に問題があると聞いていたがエイヤで買ってしまった。ModelはHD204UIという製品で7,580円だった。

    ７－１．Windows7上での新しいＨＤＤのフォーマット：

    ７－１－１．ディスクの初期化：デスクトップー＞コントロールパネルー＞システムとセキュリティーー＞ハードディスクパーティションの作成とフォーマットで以下のポップアップが現れる。

    ・パーティションスタイルとして「ＭＢＲ.....」を選ばなくてはならない。「ＧＰＴ....」は選ばないこと。ＯＫをクリック。GPTに関しては後で説明します。

    ７－１－２．ディスク管理：
    2TBinst-19

    ・1863.02GB未割り当てをクリックし選択する（斜線がはいる）。
    ・操作ー＞すべてのタスクー＞新しいシンプルボリュームと進む。

    ７－１－３．新しいシンプルボリュームウィザード：
    2tbinst-14
    ・次へをクリック。

    ７－１－４．パーティションのフォーマット：途中のこの工程では注意が必要。
    2tbinst-16

    ・ボリュームラベルに管理しやすい名前を入れる。例：samsung2TB。
    ・「クイックフォーマットをする」のデフォルトのチェックを外さない事。これを外すと正規のフォーマットの実行になり、１０時間以上かかる。
    ・次へをクリックし、最後は完了をクリックしてウィザードを終了する。

    ７－２．コンピュータでの２ＴＢハードディスクの確認：
    ・samsung2TBがＩドライブとして登録されています。

    ７－３．市販２ＴＢハードディスクの実態： （７－２．の空き領域を参照）
    hdd-5 ・左図のように2TBのＨＤＤは実質容量を1.8TBに抑えた（2TBの壁を避けるため？）製品だ。

  8. 2TBの壁を超える容量を持つＧＰＴ方式のＨＤＤ：（７－１－１のＧＰＴを参照）

    ８－１．ＧＰＴ方式とは：ヒューレットパッカードとインテルが採用したサーバー用の「ガイド・パーティション・テーブル」です。これをＭＢＲ方式の代わってパーソナルコンピュータにも採用することになっています。

    ８－２．ＧＰＴ方式のハードディスクが使えるＯＳ（オペレーティングシステム）：
    ＯＳ ビット版 Boot Drive(Cドライブとして使用） Data Drive（A,B,Ｃ以外のドライブとして使用）
    Xp 32 × ×
    64 × ×
    Vista 32(SP1) × ○
    64(SP1) ○：＊新しいマザーボードが必要。 ○
    7 32 × ○
    64 ○：＊新しいマザーボードが必要。 ○
    ＊新しいマザーボード：UEFIバイオスを有する新しいEFIベースのマザーボードです。既存のMBRベースのマザーボードにはData Driveとして使えます。
  9. 結論：
    ９－１．Ｘｐの使用者：
    　ＲＡＩＤなどで２ＴＢの壁を越えようと試みてもトラブルになるだけです。２ＴＢのハードディスクを購入し、電源やSATAソケットの許す限り増設し延命を図るのが得策です。間違っても３ＴＢには手を出してはいけません。
    ９－２．Vista、７の使用者：
    　32bit版でData Diskとして使うよりも、64bit版に切り替え新しいEFIマザーボードを導入し、すっきりした環境で使用します。２ＴＢの壁は、８ＺＢといった無限とも思える値に追いやられます。

    以上。