アンチパラディンとバンパイア貴族
2004 10/10 UP
オルカス教団の黒騎士ロベルトは大切な巻物を下等種族のバーバリアン族に奪われた事でプライドはズタズタにされていた。
いち早くそれを取り戻さねばならなかった。そこでテッシンの力を借りに来たのだ。以前の借りを利用して・・・
「わかりました。では今晩にも探りを入れるとしましょう。」
「そうか?!やってくださるか!かたじけないのテッシン殿。」
オルカスの集団はそうと決まれば足早にビテアンの街に戻る事にした。
「ロベルト様よろしいのですか?あんな死にぞこないと取引など・・・」
「あまいな・・・奴等はバンパイア貴族だ。プライドが高いのだよ。」
「し、しかし・・・」
「そのプライドを利用するのだ。大義名分にはやつらは逆らえんのだよ。」
「なるほど。」
「貸しを作れば作るほど私のしもべとなるのだ。」
「はーはははははは」 フェードアウト
召使の方が画像がでかいのは・・
テッシン バンパイア貴族 バンパイア召使 ルーツオー
「よろしいのですか?テッシン様。」
「仕方なかろう。」
「しかし奴等・・・我々を見下す所が気に入りませんな。」
「ルーツォー。奴はアンチパラディンだ。敵対すれば分が悪い。」
アンチパラディンとは聖戦士の逆の立場で、邪悪な神に使えし者。ロベルトの場合はアンデッドをつかさどる
神に仕える聖戦士である。それゆえに、アンデッドを力ずくで支配する事も可能なのだ。
そこへテッシンの部下があわてた表情でかけ上がってきた。
立派な屋敷のバルコニーでテッシンは激怒した。
「組織は全滅したと言うのか!?」
普段、感情がない彼がここまで激怒した姿をこの部下も見た事がなかった。(バンパイアは感情がない)
「はい。生き残ったものはございませんとの報告であります。」
頬骨の出たやせこけたルーツォーが苦い顔をして弁解するように
「テッシン様。あのアジトはそう簡単には発見できないように、わたくしめが細工をいたしておりました。」
「ではルーツォー・・・まさか・・・」
テッシンとルーツォーは悪夢がよみがえったかのごとく顔が青ざめた。(いや、もともと青いけど)
「マキシマスか!?」
テッシンは銀髪をかき乱しながら言った。
「あそこにはティナが居たはずだ!無事なのか?」
月のほうを眺め祈るようにティナの名前を連呼している。
その姿を見てルーツォーは小声で
「あんな拾った小娘一人に・・・なげかわしい・・・」
ここまで力を得たバンパイアにしては精神面で弱いと言うべきか?バンパイア族にとってはより高貴な者ほど感情がない
という事になっているらしく、感情がまだ残っていたテッシンにルーツォーは怒りさえ覚えていた。
先代の主人から仕えてきたルーツォーはこの若旦那の面倒を見る約束をしていた。
しかし、この若旦那、今でさえ力があるのに精神面がしっかりした時はもっと強くなったら、
亡くなった先代からきっとおほめの言葉があるだろうと(死人にくちなしだが)信じて仕えていたのだ。
「そうだ、ティナの行方を探知せねば・・・」
テッシンは溢れそうな液体の入った銀のかめに何やら魔法をとなえた。
そして部下に説明をし始めた。
どうやらその娘を探しに行くみたいだ。
早馬が5騎、駆け出したのはすでに丑三つ時(AM2:00)をまわっていた。
そしてテッシンも武装し始めた。黒いブレストプレイトと所々に当てた鎧は魔法の詠唱が可能なものに留めてあった。
剣は細長いバスタードソード。シールドは装備していない。
魔法を使う戦士とその武装から推測できよう。しかしそれを隠すようにサーコート(マント類)を羽織った。
「無事でいてくれ・・・ティナ・・・」