第30話
マハマン降臨


2005  7/18 UP

 テニスコート2個分位の屋上からは、美しい街の夜景が一望できる。

高志とユリ、そして朋子の三人は屋上に上がり、前方からは

美男子のリー警部が現れて、はちあわせとなった。

「き、君たち・・・」 リー警部はスラード共に戸惑いながらもユリを見つけて

「ユリ!」 後ろからはスラードが攻撃してくる中、名前を叫ぶ。

「り・・リー・・・」 ユリもリー警部に気が付いた。

「何をしに来たのよ!」 ユリは叫んだ。

「君を迎えに来たんだよ・・・さあ一緒に帰ろう!」 リー警部は手を差し伸べる。

このような美少年に手を差し伸べられれば普通の少女なら誰でも・・・

「私は新しい生き方を選んだのよ・・・」 ユリは、うつむき加減で言った。

「君は戻ってくるべきだ!」 リーも涙目になり叫ぶ。

この二人の過去には何があったのか・・・?

すると、二人の間にリリスが割って入った。

「はいはい・・・悲しい再開はその辺でよろしくてよ・・・」 かるく拍手をして・・・

「マインドフレイヤーとギスヤンキーの戦いでもあるまいに・・・」 リリスはあきれ顔で言う。

「何だそれは?」 高志が突っ込む。

「本人同士しか解らないような展開は、およしと言う事よ!!」 リリスは掃き捨てるように言った。

「あああ・・・そう言う事ね・・・」 高志はうなづいて見せた。

「それで解るんですか?」 今度は朋子が突っ込む・・・

「え?・・・まあ・・・」 (高志、よく解って無いやん)

赤いレッドスラードが4匹。その後方からリリスが宙に舞っている。

「まあいいわ。それより待ってたわよ高志君!」 嬉しそうにリリスは言った。

「むっ!!!・・・」

高志は状況を把握している・・・。

「か!かえるが4匹も居るじゃねーか!これじゃあ挟み撃ちだぜ!」

「こうなったらもう・・・」

生唾を飲み込み何が起こるか解らないマハマンのお守りを見つめた。

高志はマハマンのお守りを地面においてコマンドワードをとなえた!

「何とかしてくれー!」

「ネコカ!」

一瞬時間が止まった・・・

そして光に包まれ、そのお守りは中に浮かび上がる。

リー警部がスラードに囲まれた。

「リー!危ない!」 ユリがリーの居る方向へ飛び出した。

特殊な訓練をつんで来た、リー警部もこの化け物たちには

傷ひとつ負わせることは出来ない。

「私の蹴りが・・・きかない・・・」 リー警部は腰から拳銃を出した。

「この化け物め!」 拳銃を連射する。

しかしスラードの肉に食い込みはするがその皮膚を貫く事は出来ない。

弾丸は地面にぱらぱらと落ちる。リー警部は打つ手を失った。

スラードの手に持っている大きなハンマーがうなった。

「うっ!」 リーはその両手持ちのハンマーにたたきのめされて行く。

ユリがチャージ(突進)してスラードに拳をねじ込んだ!

「おまえらゆるさない!」 激怒するユリ。

ユリの攻撃はエンチャントされているおかげでスラードにもダメージは伝わる。

けろっとした表情でスラードはこっちを見ている。正直言って驚いているのだ。こちらの世界に

スラードにダメージを入れてくる存在が無いはずだったが、ここに居る少女がその例外だった。

スラードの一匹がユリ連打を浴び、叩きのめされて行く。

「その少女にはメンタル攻撃よ!」 リリスはスラードに指令を出した。

スラードはすぐ状況をのみ込み精神サイキック攻撃に切り替える。

こうなるとユリは何も出来なくなる。

スラードは大きく裂けた口でニッと笑みを浮かべるが目が笑っていない爬虫類の目だ。(きしょい)

「きゃあああぁぁ・・・」 ユリはぐったりとして地面に両膝をついた。

動けなくなり、くもの網にかかった蝶のようである。

「力が・・・体に力が入らなく・・・」 しゃべる事も間々なら無い状態である。

リー警部は即頭部にハンマーがヒットし、出血が激しく目が虚ろになっている。

「おまもりよ!!早く!!!何か起こるんじゃねーのかよ!!!」 

高志はあせらずには居られない。

マハマンのお守りから二つの光の球が現れた。

「何だこれは?!!」 高志は少し驚いている。

そして、ひとつはユリのペンダントに吸い込まれた。

もうひとつは高志のペンダントに吸い込まれた。

ペンダント・・・二つの頭を持つ鷲の奇妙なペンダントの事である。

「お母さんからもらったペンダント・・・」 もうろうとした意識の中でユリは思い出していた。

「幼い頃、砂場でなくして・・・あの時、高志君に探してもらった・・・」

「高志君とおそろいだね・・・・」 ユリは少し口元がゆるむ。

「あの時・・・引越しなんかなければ・・・ずっと平凡に・・・高志君と楽しく過ごせたのに・・・』

韓国に渡ってからの彼女の人生は相当悲惨なものだったのか?

ユリは徐々に意識を失っていった。

「なっ!何もおきねえじゃねえか!」 

高志は震える拳をそら高く突き上げた。

「きゃああ!高志君!」 朋子が叫んだ方角を高志は見た。

階段からゆっくりとマンティスが現れた。

朋子の前に並んだ守護神はそれぞれ顔を見合わせながら頷(うなづいた)いた。

死守する覚悟であった。

「何とかならねえのかよ!」 高志はペンダントをゆさぶる。

リー警部は地面に倒れこんだ。

スラード達はゆっくりとユリにハンマーを向けた。

よく切れる刃物による動脈切断で死に至るのもいやだが、鈍器による撲殺もいやである・・・

「その小生意気なサイキッカー・・・ユリちゃん?の最後ね・・・」 リリスは満足げな顔で見ている。

マンティスの後ろに吉野たちが控えていた。

「小僧!・・・幼いゲームは終わりにしようでは無いか・・・」 吉野の口元がニヤリとしている。

「ここが君たちの墓場だ・・・そして、マハマンの御守り等、全てのアイテムも回収できるという・・・」

「全てが私によって描かれた、そういうシナリオなのだよ」 吉野の眼鏡が光った。

これまでジワリ・ジワリと距離を詰めていたマンティスが高志に飛び掛って来た!!

スラードがハンマーをユリめがけて振り下ろした!!

が、しかし! 次ぎの瞬間!!

マンティスは見えないオーラに弾き飛ばされた!! いや・・・見える・・・!!

それは半透明な姿で現れた。

マハマンが・・・・・・

降臨した・・・・。

つづく・・・

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