第28話
運命
2005 6/26 UP
その美形の男は警察だと主張するが高志にとってそんな事はどうでも良かった。
ここまで来て何が来ようとも戦う準備は出来ている。
「中場ユリさんが居ますね?」 警察官はたずねた。
「い、いますん・・・」 高志はあせった口調でかんでしまった。
「・・・・・・・」 警察官はドア越しに一瞬沈黙した。
「いますん?」
「います?」
「まあいい・・・彼女は実は思い病気なんですよ・・・」 警察官は語り始めた。
「病気?」 高志は驚いた。
「精神的なものです・・・そして、非常に危険な存在でもあるんです・・・」
「べつに・・・そうでもないと思うが・・・」 高志は信用していない。
「いるんですね!?」
「い、いますん!」
「ここを開けなさい!さもないと公務出向妨害で君も逮捕しますよ!」
「出たなその名台詞!俺はそう言った強硬な姿勢が嫌いなんだよ」
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そこへ、吉野たちが到着した。
今回の切り札、藤堂麗子を連れてきている。
藤堂麗子は記憶を改ざんされて吉野とは信用のある人間関係と思い込まされているのだ。
そして今回、高志たちを葬る事が世の中のためと思い込まされている。
藤堂麗子は異次元よりマンティスを召還する能力を持っている。
このマンティスは生身の人間では到底歯が立たない。
実際、吉野たちのようなサイキッカーですらまともにやりあっては身を滅ぼすと撤退を余儀なくされている。
「マンティスで全滅させてディスクとマハマンのお守りを手に入れると言う事ですね」
村上と田中もこのマンティスのおかげで士気が上がり、はりきっている。
「常人ではこのマンティスに対抗は出来ぬわ。カマの餌食と言うわけだ」 ほくそ笑む吉野。
そこへリリスが瞬間移動してきた。
「準備はいちお万端よ」
「どうしたリリス顔色が良くないが・・・?」 吉野はリリスに訊ねた。
「ちょっと急いでたから・・・」 作り笑いっぽいリリス。
「まあ良い。ではリリス、合図があるまではスラード族を待機させてくれ」 吉野の眼鏡が光る。
「解ったわ・・・まかせて」
いざ!強襲!
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吉野たちがこっちに向かってきているとも知らずに高志と警察官のリーはまだドア越しの攻防であった。
「わかった・・・もっと詳しく話そう」 美形の警察官”リー”は仕方なく経緯を話すことにした。
「彼女は幼い頃から超能力を秘めた存在だった。それは体の一部、拳や足にオーラをまとい・・・」
「触れるものに物理的に衝撃を与えると言ったもので・・・」
高志は思い出した。幼い頃、初めて砂場でユリと会った時、ユリは壊れたスコップを持っていた。
さらに、そういえば彼女におもちゃを色々壊されたことも思い出した。
「彼女は12歳の時、母親の知り合いの関係上、韓国へ行く事になり」
「韓国?そうだったのか・・・」 高志はユリが韓国料理が上手な事を思い出した。
「そこで偉才を発揮し韓国の特殊教育を受けることになった」
「だが、同時に彼女の心は病んで行き・・・妄想を描く事になる」
高志の目が細くなる・・・
「特殊訓練中に教官を殺害して以来、彼女の病は重くなり・・・彼女は脱走を図った」
「そ、そんな・・・途中まで良かったのに・・・脱走って・・・」 高志は思わず口走った。
「彼女は自分が特殊警察と勘違いしているのです」
「警察官じゃなかったのか?」 次々と明らかにされる事柄に高志は驚きを隠せなかった。
「訓練校の中でも特別な力を持っているが故に上位に位置づけられていた彼女は・・・」
「同時に脱走を図った事で極めて危険人物と言うレッテルも貼られてしまっている」
「他の特殊警察も彼女を血眼になって捜している・・・場合によっては射殺してもかまわない」
「そんなばかな!」 高志はその組織の恐ろしさを知り愕然とした。
「今回の事が明るみになっては組織としても困るからね」
「さあもういいだろう」 リーはこれ以上は話すわけにはいかなかった。
「おまわりさん。そんな事信じると思ってるのか?」 高志は開き直って言った。
該当する点からしてこの警察官の言ってる事は正しいかもしれない。しかし
ここ最近の出来事からするとこれも何かの罠かも知れない。
「・・・・・・」 リーはこの少年を始末するか否かで迷っていた。
さわりでは有るが事情を知ってしまった以上、秘密が漏れるかもしれない。
韓国の組織はこういった秘密保持のためには手段を選ばない。
リーの所属している特殊部隊はそう言った事にはとても厳しかった。
その時!
奥の部屋から女性の悲鳴が!
高志はドア越しの攻防をやめダッシュで戻った。
ベランダから吉野達は侵入してきていた。
ユリは村上と田中を威嚇している。
「戦いの場所としては、いささか狭いが我慢してくれたまえ」 吉野が合図するとマンティスが現れた。
高志は床から湧き出るように現れた3mの大カマキリに腰をぬかしそうになった。
「な!なんじゃこりゃーー!」 思わず口にした。
マンティスは問答無用で襲い掛かってくる。
高志は転げながらよける。そして部屋の中はだんだんカマでズタズタにされていく。
「高志君!」 ユリは心配そうに声をかけるが、高志は逃げ回るので精一杯である。
「懐にもぐりこめるような隙が無い」
マンティスの懐にもぐるのは扇風機の中に手を突っ込むようなものである。
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警官のリーは 「何が起こっているんだ?」
「開けたまえ!」
「仕方ない」 リーは隣の住民のドアホーンを鳴らし
「警察だ協力してくれたまえ!」 隣からベランダをつたわる事にした。
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カマキリ特有のファイティングポーズから繰り出される攻撃は常人ではかわす事も出来ないであろう。
高志にもとうとう限界が来た。
「ダメだ・・・よけきれなくなってきた」 このままでは危ない・・・
一瞬の隙が命取りであった。
その鋭いカマが高志の太ももを切り裂いた!
「いやーーー!」 それを見たユリが悲鳴をあげた。
そして高志を助けようと動こうとした時・・・
「ユリちゃん!こっちに来るな!」 高志は血をダラダラと垂らしながら叫んだ。
「君ではかわせない・・・」
しとめた・・・勝負あった・・・無表情なマンティスの目はそう語っているかのように見えた・・・
そしてとどめの一撃を・・・
つづく・・・
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