第25話
先回りした奴
2005 6/05 UP
次の日、吉野はブランカー(高志)の対策を考慮して実行に移っていた。
場所はレフィカル心理学研究所・・・
「センター長の容態は?」 吉野は一時帰還し報告をしていた。
「マイグレーターが立ち去る時に何か磁力みたいな物を発生させたおかげで・・・」
白衣のスコン博士は答える。
「意識は?」
「今は睡眠薬で眠っておられます」
「博士・・・藤堂麗子の件ですが・・・」 吉野はスコン博士に頼み事をした。
「今現在、彼女は洗脳状態で面会謝絶です」 スコン博士は率直に答える。
「実は私は彼女と知り合いなんですよ」
「・・・」 スコン博士は口を真一文字に閉じたままであった。
吉野はスコン博士の心を読みながら(ESP)会話をしていた。
(スコンめ・・・組織に対する忠誠心はかなり高いな・・・せっかく手に入れた藤堂麗子を失いたくないか・・・)
「・・・」 スコン博士は吉野が何を言い出すのか?じっと待っている。
下手な発言を控えるためである。
(そうか・・・知り合いと言ったから、警察にでも連絡されると思っているな・・・)
「知り合いと言っても、私も彼女に我が組織に協力してもらう意見には賛成です」
この一言でスコン博士は敵対する壁を一つ崩した。
「私からも彼女を説得してみましょうか?」
吉野の次なる一言にスコン博士は賛成だった。
と言うのは、藤堂麗子の心の傷は深くて、なかなかこちらの要望を聞き入てれてくれない状態が続いていたのだ。
吉野に任せて要望を聞き入れるように(コントロール出来る状態に)なれば一歩前進する。藤堂麗子を利用できる。
今の段階ではバイブレイターの起動で狂乱させて、マンティスを実体化させることしか出来ない。
マンティスの攻撃目標を定められなければ見方をも攻撃するだろう。
とてもコントロールしているとは言えない状態で、センター長からもリテイクをくらっていた。
「説得できますかな?」 スコン博士は口を開いた。
「任せてください」 吉野の眼鏡が光る。
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一方、高志たちは集合して出撃に備えていた。
「でもさ、朋子さんの話じゃ、そのコマンドワードが解らなければ封印を解けないんでしょ?」
高志は新しい情報に理解を示すやいなや発言した。
「なら、まだ勝負はついてへんわ」 石黒アキラは元気を取り戻す。
「あのさー、ジュエリーボックスに入れてあったって言ったよねー」 エイジがなんか言い出した。
「なんでエイジ、子供口調なんだよ?声も裏返ってるし・・・」 高志が突っ込む。
「いいがや、もう!」 話の腰を折られエイジはムッと来て低い声で言う。
「ジュエリーボックスに入れてあったはずなのよ」 朋子はしっかり答える。
「あいつらもその事は知ってたと考えた方が良いと思うよ」 エイジは言う。
「なんでや?」
「だって、僕達の会話を聞きだして、先回りしたとしか思えないしね」
「確かあの時、朋子姉さんはジュエリーボックスにって言ってたもんね」 エイジの記憶力は正しかった。
「・・・そうかもしれないわ・・・」 朋子の目がキョトンとした表情になる。
「ジュエリーボックスと知ってたとしたら、そこに直行してお守りをゲットできる」
「そうやな」
「でも何故か家捜して散らかっていた」
「何が言いたいんだエイジ!」
「そのジュエリーボックスには入ってなかったんだよきっと」
「という事は?」
「あのおじさん達もお守りをゲットできなかったんじゃないかなー?」
「だからなんで声が裏返って子供口調なんだよ!」 高志はいいかげんムカついて来た。
「いいがや!もう!うるさいなー」 エイジ不機嫌。
「気持ち悪いんだよ」 高志も不機嫌。
「うるせーな、じゃあ眠りの・・・」 「もういいって!!似てないし!」
「そう言えば・・・最近ジュエリーボックスをよく確かめてなかったけど・・・」 朋子は記憶を探る。
「お守りは入ってなかったような気がする・・・」
「先回りした奴がいると言う事か?」
ここまで推理してきてその”先回りした奴”と言う壁にぶつかり、全員愕然とした。
「だれなんや?・・・振り出しに戻ってしもうたわ・・・」
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その頃、吉野は・・・
「ではお任せします」 スコン博士は部屋の鍵を開けた。
薄暗く冷たい部屋の中には体育すわりをした藤堂麗子がいた。
「藤堂麗子さん・・・」 吉野は声をかけた。
この時、吉野はヒプノシズム(幻覚)を使い、藤堂麗子に幻を見せることにした。
まず、堅く閉ざしている扉を開く・・・
「マインドフォースか?・・・」 吉野は一発目で効かない事に驚いた。
麗子は無意識のうちにサイキックバリアを張っている。
「しかし、マインドブランクでなかった事が幸いだったな」
バリアをはがした吉野は麗子の心に忍び込んだ。
そして幻覚を映し出す。
それは幼い頃、彼女が子犬を飼っていた時の記憶にアクセスした。
「これがいいな・・・」 吉野はこの記憶に決定した。
交通事故で誕生日に買ってもらったシェパード犬を失った記憶であった。
それはかなり強烈な記憶で、麗子の性格を構築している柱の一部でもある。
それにメスを入れて記憶を改ざんする吉野。
「麗子さん・・・私です。吉野ですよ・・・」 吉野は優しく声をかける。 「あなたは・・・」 麗子が口を開いた。 「パルちゃんを助けようとして・・・」 「思い出してくれましたか?」 同時進行でどんどん記憶を上書きしていく吉野。 「吉野さん!」 麗子はたまらなくなり抱きついた。 「悩み事なら全て私にお話ください」 「一人で背負ってはダメですよ」 大粒の涙を流す麗子・・・ |
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「こ、これは?!」 スコン博士はこの光景に驚いた。
自分が誇る洗脳でも無理であった麗子を・・・
サイキックの力は偉大であった。
ひと一人、コントロールする事など造作も無いことなのだ。
「洗脳完了しましたよ」 吉野はスコン博士に、颯爽とした顔つきで言った。
「さあ麗子君、行きましょう・・・私と一緒に」
何をどうしたのか?
まったく解らないが、麗子がマンティスを自分の意思でコントロールし
なおかつ吉野に協力的になったことは間違いないようだ。
これで高志たちを葬る準備は出来た。
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高志たちは”先回りした奴”の壁にぶつかり
「しかしここまで来てこれではなー」
「だれやねん、まったく・・・」
「俺たちも超能力かなんかで探せるといいんだがな・・・」
だんだん現実逃避し始めた・・・
「今晩何食う?」
その時!
「あああ!もしかすると・・・」 朋子が何かひらめいた。
そのもしかとは??
つづく・・・
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