第19話
洗脳


2005  4/10 UP

  昔の人は日が昇る直前の朝焼けの光を浴びると30分寿命が延びると信じていた。

また、夕焼けの光もそれと同じだと言う。

徳重高志は日が昇る時、深い深呼吸をし、拳に全神経を集中させ乱舞する。

拳が宙を切り、汗がはじけ飛ぶ。

しなやかな身のこなしは我流とは思えない。いや、我流でこの身のこなしは正に天性の才能を

秘めていると言う他ならない。

そして腹筋と腕立て伏せにスクワットを100回行う。

今度はサンドバッグをひたすら殴る。

力尽きた所でコンビネーションを打つ。

タフな男だ。これを3セット繰り返す。

レベルアップ!(ドラクエのレベルアップのBGM入る)

腕力+1

耐久力+2

敏捷性+1

活力+2

寿命+30分

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 ふと振り返るとそこに中場ユリがいた。

「ああ・・・いたのか?」

高志はまだメニューをこなしていなかったから腹筋の途中だ。

会話をしながら腹筋を続けても息を上げない。

高志はタフネスだった。(田原俊彦も歌って踊るけど息上がらない?)(上がってるよ!)

 隣の部屋では天白エイジが目を覚ましたらしい。(泊まったのか!?)

「よくねた・・・ん?」 部屋の向こうから高志たちの話し声に気づいた。

「おい、アキラ起きろ!」

「高志君って結構すごいのね」 ユリはしなやかな高志の筋肉に少し驚いた。

「何がすごいんだ?・・・すごいのか?高志の奴・・・」 アキラをつかむエイジ。

「最近・・・やってなかったからな・・・」

「や・・やってない?」 エイジは目をまん丸にした。

「ぐっしょりね」 はじけ飛ぶ汗にユリは笑顔で言う。

「えええ!??そんなにぐっしょりとな・・・」 エイジはアキラをつかみながら向こうのドアまで忍び足で・・・

 ユリは思った。いくら鍛えた肉体があってもサイキックの前では意味はない・・・

時間をかけて苦しみに耐えて努力しても、その力の前ではまったく意味はない・・・

サイキッカーは、ほんのちょっと念じるだけで、その努力を台無しにする事が出来る・・・

あまりにも理不尽である。ユリは辛くなった。そして高志に悲しく愛しく思ったのだ。

突然、高志に抱きついた。

「やっぱりやめて!行かないで!」 高志を後ろから抱きしめ、顔を背中にうずめて言った。

高志は驚いた。

本当ならここから良いムードになる所だったのだが・・・

突然(こっちも)、部屋の扉が開き太った男が転げ込んできた。←エイジ(コイツ居ると良いムードにはならねー)

そして、間が悪い事に気づきながら・・・

「・・・まだ始まってねーの・・・か!?」 と言ってはみたが、やばい雰囲気だったのでとっさに部屋を出て逃げた。

「やべー、やべー。今大丈夫だったかな?」 アキラに問いかけるエイジ。

「そらあかんやろ」


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 センター長は朝倉朋子を研究所まで来るように携帯で話をつけた。はずだったがその日、朋子は

姿を現さなかった。

吉野は藤堂麗子を捕獲しセンターへ戻ってきていた。

「スコン博士。藤堂麗子もあの少女に任せてはどうかね?」 センター長は藤堂麗子の洗脳を考えていた。

「彼女は精神的に弱っているかと・・・」 スコン博士は言った。

「そこが狙いではないのかね?あの少女に藤堂麗子を洗脳させて我々の道具とするのだよ」

「しかし、下手をすれば俳人になる恐れがあります」

「かまわん。サイキッカーの一人や二人。また他を探せばよいのだよ」

「うぐ・・かしこまりました」 博士は仕方なく引き受けた。

「吉野!」 センター長は次に打つ手は吉野に任せる気である。

「はい」 吉野はセンター長の部屋に入ってきた。

「朝倉朋子を捕獲せよ!」 

「了解しました」 吉野は迅速に次の作戦に移る。

「あの女狐め・・・臆したのか?まあよい。こちらから出迎えようではないか・・・ぬははははは」

センター長は快進撃の笑いをこらえる事は出来ない。(いま一番 調子こいてるのは この人ね・・・)


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 朝倉朋子は昨晩、夫の英明とひどく喧嘩をした・・・それはこの世の終わりを見るようだった。

少なくとも、朋子にはこの世の終わりが見えたであろう・・・

英明のセリフをひとつも許す事が出来なかった。どんな優しい言葉も・・・

もう信用できなかった・・・嘘に聞こえてしまうのだ。

英明は捨て台詞を吐き、そして去っていった。

朋子は一晩中眠る事すら出来ず・・・涙も止まることも無かった。

過去の幸せだった思い出を思い出して現実逃避をする・・・ふと我に返りまた涙する・・・

走馬灯の様に流れては消えていく思い出たち・・・

だが・・・現実逃避も何時までもしては居られなかった。

吉野たち三人組がお迎えに上がった。

「朝倉朋子さんですか?」 吉野は渋い声で問いかける。

「は・・・はい・・・」 か細い声で朋子はやっと答えた。

「マーピック教授の件でお話がございます」

「承知しております・・・」

動き始めた第二の人生はどんどん朋子を暗黒な世界に引きずり込んで行く・・・

英明との関係(生活)も・・・朋子自身の人生も、もう元どうりには成らないのだ・・・

朋子は吉野たちに連行された・・・


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 研究所では白衣のスコン博士が少女”ゆい”を使って、藤堂麗子の洗脳に取り掛かっていた。

麗子はアイマスクを着けられた状態で

椅子に座らされている。

今まさに、ゆいが麗子の記憶に侵入しようとしている。

悲しみ・・・苦しみ・・・二つの感情を押し殺すには

限界があった。

がしかし、この感情たちを他にぶつける事で

自我を守る事は出来る。

簡単に言うと、うさをはらすと言う事である。

人間は悲しみと苦しみを自分感情から排除するには、

この二つを怒りに換える必要があるのだ。
 
ゆいは麗子の溢れんばかりの悲しみと苦しみを

怒りに変換し、そしてその怒りをいつでもぶつける事が

出来るように準備させた。

麗子の感情も、それをする事によってこの苦痛から抜け出せると知っていた。

麗子が守衛を(マンティスを持って)殺したのは理性がとうとう崩壊し感情が抑えられなくなったと言う事なのだ。

その時得た快感はおそらく女性が衝天する時に匹敵する・・・いや、それ以上かもしれない。

これを病みつきにする事で徐々に理性を麻痺させる。

そして、理性が勝っているならば、その理性を崩壊させればよい事で、その手段はいたって簡単である。

バイブレーターを仕込み、それを起動する。

麗子は理性を失い感情をコントロールできなくなり、そして怒りも抑えられずに攻撃的になる。

麗子のマンティスは誰かに襲い掛かり殺戮を繰り返すであろう。

これで戦闘態勢が完了したというわけだ。

洗脳は24時間で完了すると言う・・・


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高志たちは天白エイジの調査でアジトの位置をつかんだ。

そして・・・

「あそこだ・・・」 見ると古いビルの一画である。

「何の研究をしてるんだ?」 

「そりゃお前・・・邪悪な研究だろ?」 エイジは答える。

「何でそんな抽象的なんだよ・・・」 高志は聞いたことに後悔を覚えた。

「そんなんええやん。はよ行こ」 アキラにとっては村上のリベンジ以外に興味は無いようだ。

「慎重にね・・・」 ユリだけまじめ・・・

「待てよ・・・奴らの車がない・・・と言う事は出かけてやがるな」 エイジはニコッと笑みを浮かべる。

「悪事の数々を調査する絶好のチャンスだぜ!」 瞳に”$”マークが・・・・

4人はビルに忍び込んでいった。


つづく・・・





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