第16話
男と女
2005 3/13 UP
「藤堂金属の社長令嬢という裕福極まりない生活環境の中で彼女の心を捻じ曲げた
原因とはいたい何なのか?
と言うのは、彼女は今非常に悩んでいた。それはある事件がきっかけとなった・・・
父親の経営する会社の元専務は麗子の心の師とも言うべき存在で、いつも親身になって
麗子に接してくれた。名前を 伊藤正文 (いとう まさふみ) と言う。
彼女はここへ来て結婚の話が持ち上がり、伊藤に悩みを相談していた。
「そうですか・・・意のそぐわない結婚は非常に辛いですね」
「わたし・・・別に好きな人がいるんです」
このセリフに伊藤はまさか自分ではと悟ったのだ。
この日彼女はその好きな人を明かすことはなかった。
伊藤は今まで高嶺の花と自分の気持ちをおさえてきた。もし、お嬢様と一緒になれるなら
こんな嬉しい事はない。身も心も捧げてきた会社の一員になれる絶好の機会でもあるからだ。
有頂天になっていた伊藤は麗子に確信を持ってプロポーズした・・・
ところがそれは大きな勘違いだったのだ。好きな人とは、まったく別な人物であった。
この時、伊藤の心は音を立てて崩れた・・・
そして、ここまで築き上げて来た社会地位も同時に崩れてしまった。
もう何もかもどうでも良かったのだ。
伊藤は麗子を誘拐し山の中で無理心中をするつもりだった。しかし考えると会社に対する
不満もこみ上げてきて、身代金要求の電話を入れてしまった。
男と言う物はいたって単純な生き物である。今の世で発作的に犯罪を犯すのも女性より男性の方が
圧倒的に多い。それは何故か?
それは人類の文明の生い立ちからうかがえる。
そもそも生命体が男女と言う二種類に分かれた理由は二つある。
一つは子孫繁栄のため。
もう一つは自己防衛本能だ。
子孫繁栄はオスメス交じり合って子孫を残すと言う方法を取る事でより強い子孫を残す事が出来る。
例えば、同じ地域のもの同士で交じり合って子孫を残しても生命体的に何の変化もない。
ところが、外部より違った環境で生き残ってきた者のと交じり合い子孫を残せば、その違った環境に
対する免疫が得られると言う事になる。身内同士で結婚し子供を産む事がタブーとされているのは
こう言った事が原因なのだろう。種族的にはメリットが無いのだ。
こうして部外者より免疫をつけた生命体は自分のテリトリーを外部へと広げる事が出来、
子孫繁栄につながる。
男女に分かれたもう一つの理由の自己防衛とは、役割である。
女には子供を育てる能力を、男には回りの敵から自分達を守る攻撃力を備えている。
完全たる役割分担である。
人間にしても女性は生命力を育む様になっている。生命力も強い(長生きする)。
男性はその寿命すら犠牲にして攻撃力を取った。
その結果、男性はいつの時代も戦うために借り出されている。」
「それで、今の世で発作的に犯罪を犯すのも女性より男性の方が圧倒的に多いのは何故なんですか?」
村上は吉野に聞いた。(今までの語りは吉野だったのか!)
「男はあきらめが肝心とDNAに打ち込まれてきている。
そうでなければ死ぬと解っている戦争に行ったりはしない。
そして、伊藤は今まで苦労して築き上げて来た物を投げてしまったのだよ。そして、あやまちを犯した・・・
生き残るようにとDNAに打ち込まれている女はこういった無駄な事は決してしないのだよ。
保守的なのさ。
だがその事件はそこで起こった・・・
車で山まで連れて行った伊藤は、本能のおもむくまま行動した。
麗子は伊藤に犯さた・・・彼女にとっては心の師だったはずの伊藤に・・・
これが引き金となって麗子は覚醒した。
伊藤は麗子の超能力で殺されたに違いない。
伊藤に外傷が無かったため、おそらくマインド系攻撃(精神的攻撃)で屠(ほふ)られている。
その後、警察では犯行当時、突然の心臓麻痺により伊藤は死亡したとされているが、
ブラインド(第二話参照)の反応より藤堂麗子がサイキッカーである事は特定されている。
後はどの様な力なのか確認せねば・・・」
「吉野様着きました」 田中が車を止めたそこは、マーピック教授の勤めている研究所だった。
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「しかしユリちゃんって韓国の料理が好きなんだね」 高志は満腹になり嬉しそうに言った。
「え、ええ・・・」 ユリはせっかくほめられたのに苦笑いをしている。
「照れてる?」 高志は可愛いと感じながら 「でもきつい性格(じゃじゃ馬)娘なんだよな・・・」 と思った。
実際の所、彼女は韓国で特殊訓練を受けていた時の記憶が頭をよぎっていたため
素直に嬉しさを表現できなかった・・・何かあったのだろう・・・
「なんか急に元気なくなったね?どうかしたのかい?」
「んんん・・・なんでもないの」
「俺さ、たいしたこと出来ないけどさ、力になるぜ」
ユリの目は潤んでいた。
「ありがとう・・・」 韓国で失った何かを今ここで高志に託すユリ。
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ちょうどその時、二人の少年が高志のエレベーター乗り場まで来ていた。
「ん?天白、乗らないのか?」 石黒晶は不思議そうに問いかけた。
「ああ・・・次にするわ」 天白エイジは苦笑いをした。
4人も乗っているエレベータに天白エイジは乗り込めない理由があった。(ブザーが鳴る)
二人は徳重高志に会いに来たのだ。
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「高志くん・・・あなたには特別な力があるの・・・」 「へ?なんだいそりゃ・・・」 「守って欲しいの・・・その力で」 潤んだ瞳でこのセリフ。 「これは・・・男女の関係のラブラブ急展開か?」 (ちがうって) まあ、しかし若い男女が二人きりでこういった シチュエーションなら行く所まで行くであろう。 (急展開あり!) 少しちがうのは、複雑な彼女の心情と 単純で楽観的な彼の思考とではそういった事には ちょっと成りそうに無い。 でもまんざら、この二人もいい感じになって来ては いる様だ・・・が |
「ピーーーーンポーーーーーン」
「あ・・・誰か来た・・・」
「ちぃー!もう少しの所を・・・」
「え?」
「いやなんでも無いっす・・・」
天白エイジはしっかり邪魔をする。
「もう・・・どなたですか?」 カメラが真っ暗で何も見えない。
「離れろって、天白エイジ!」
「高志。例の奴らのアジトを発見したぞ」
このセリフに高志は鈍器でぶたれてクリティカルヒットをくらった感覚だった。(どんな感覚や)
「詳しく聞こうじゃないか」 高志はアキラとエイジを部屋に入れた。
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両者逆光を浴びて止め絵になる。
つづく・・・