第14話
守護神


2005  2/27 UP

 
  

  朝倉朋子は恩師でもあるマーピック教授に全てを、うちあける事にした。

   

   ストーカーの事

   夫の事

   亡霊の事

「そうですか・・・あまりにも色々な事件が起きたのですね・・・」 

マーピックは朋子にいつも親身になってくれていた。

「あなたのお母さんも、そう言った不思議な力を持っていました」

教授は朋子の母の不思議な力が、きっかけで超常現象を研究するようになったのだ。

それまではただ単に心理学の研究しかしていなかった。朋子の母はマーピックの人生をも

大きく変えた人物だった。

「お母さんは、綺麗な人で、優しい人だった・・・」

「彼女はいつも私が遅くまで研究をしているとサンドイッチを差し入れてくれたものだよ」

マーピックの母に対する気持ちは一線こそ越えることは無かったが、かなり慕っていたようだ。

当時の母の話には朋子の知らない母の姿があった。母親としてではなく、一人の女性としての・・・。

似ていた・・・あまりにも自分に似ていたのだ。男運の無さ、貧しい生活、苦労の連続。

力尽きるようにしてこの世を去った母に朋子はどうしようもない悲しみが押し寄せてきた。

「でもね、朋子さん・・・お母さんも君も、まっすぐな性格なんですよ」

「誰にも負けないまっすぐな性格・・・」

朋子の目からは大粒の涙がこぼれていた。

「その亡霊はあなたの守護神です」

「生まれ持ったものでしょう・・・」

「守護神?・・・」 朋子はつぶやいた。

「お母さんの時と同じならば三人います」

「一人は強力な刃物のような武器を持って、あなたに迫る危機に攻撃します」

「残りの二人はあなたを守る事に専念するでしょう」

朋子は自分の人生がここへ来てまったく変わってしまったことを受け入れ始めていた。

それは、全てを失っても母の力を受け継いでいたと言う事が彼女の心のささえとなったからであろう。

「あ、朋子さん待って・・・」 マーピックは一枚のDVDの入ったケースを持ってきた。

「これを一読してください」

「これは?」

「あなたの力に関する研究データです」

「力は・・・使い方によっては凶器にもなります。よおく、考えてください・・・」

「解りました・・・教授・・・今日は本当にありがとうございました」

朋子は深くお辞儀をした。

マーピックは一つの事柄を決断していた。それは、センター長との約束事だった。

彼にマイグレーターに関する研究資料の提供を断る事に決めたのだ。


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 「ねえ、これなんかどう?」 中場ユリは笑顔で問いかける。

「あ、ああ・・・いいんじゃないかな・・・」 高志は真っ赤な顔で答えた。

「しかし何で俺がそんな女性の下着を・・・」 (だいたいそんな仲じゃないし・・・まったくよー)

高志はぶつぶつ言いながら、心でもぶつぶつ思っていた。

ユリは赤くなっている高志に気がついて

「これに決めちゃおうかな?」

ひろげる下着は、かなり破廉恥で絵露膣区だ。

「これは・・・」 (マジかよこれって OXO の時に OXOX じゃねーか?)

「いいんじゃないかなーーー」 (今夜はハードコアか?彼女我慢してたのかも・・・)

「バーカ。冗談に決まってるじゃない。」 横顔でこっちを見つめる彼女は笑っていた。

「男心をもてあそびやがって・・・」 

少しがっくりした高志だが、よく考えると”同じ屋根の下で男女二人”かと思い

また鼻の下が伸びていた。

 その日の買出しは多かった。ユリの下着から服まで買ったおかげで・・・

マンションに着くやいなや 「徳重高志!」 フルネームで呼ばれた。

「えっ!!??」

そこには担任の宇佐美先生が仁王立ちとなっていた。

「今日も学校をサボって何をしていたんですか!?」 (女性の下着を買ってました!)

やべえ、どうにかしなければ・・・とっさに回らない思考回路をフル回転。

「ひっ!人違いでしょ?私は徳重高志という者ではございません!」

「先生をバカにしているんですか?」

「いや、そんなこと・・・」 蛇に睨まれた蛙であった。

「先生許しませんよ!」 

逃げるタイミングの早いのが高志の得意技でもあった。

「まっ!待ちなさい!」 まさか逃げ出すとは先生も思っていなかった。追いかける宇佐美先生。

「徳重君・・・」 ユリは残された荷物を拾いながら、あきれた表情で言った。

すると、さっきまでゴミ袋か草陰かと思っていたオブジェクトが動き出した。

天白エイジであった。

「ははは。あいつらしいぜ」 (いたんかい!)

「あなたはこの前の・・・」

「そうでーす。お姉さん」

「いや、女刑事さん」 厳しい表情に一変しエイジは言った。

「ところで何が目的で高志をマークしてんだ?お姉さん」

「え?何のこと?」

「とぼけますねー」

「もう、かれこれ一週間。刑事さんが付きっ切りってのは、何の目的かって聞いてるんですよ」

おそらく普通の質問では答える訳はないと悟ったエイジは得意のトップ営業マンのような

ハッタリを効かせる事にした。

「あの後さ、倉庫を調べたんだけど、外国人の死体が四体、それはもう大騒ぎさ」

「あ・・・」 オレロフにやられた密売組織の連中だった。

「喧嘩していた俺たちの仲間が何人か連行されてね・・・」

「俺たちは人殺しまでは、しねえんだよなー」 横目でチラッと見ながらエイジは言う。

「みんな悪ガキだけどピュアな心の連中さ。人殺なんか出来ないんだよ」 強調するエイジ。

「そ・・・そんなこと・・・」 ユリの瞳は震え始めた。

エイジはぐっと睨みをきかせて

「一般の人を巻き込んだんだよ。お姉さんが・・・」

電撃が走るような感覚がユリを襲った。ユリはこのことに悩みながら、この一週間を過ごした。

眠っている時ですらそうだったのだ。

「まだ、足りないのか?高志を巻き込む気か!?」

「ちっ!違うの!」 ユリはアスファルトに崩れた。

「結果は高志に助けられた形だが、まだ決着は付いてねえ」 

客を落とした営業マンの目だ。(営業マンの目って・・・すごいのかよそれ・・・)

「そうよ、高志君が助けてくれた・・・」 ユリは今まで男性に助けられた事は過去に一度しか無かった。

絶体絶命のピンチを救った高志。彼女にとっては高志は特別な存在に成りつつあったのだ。

「だが高志は一般人だぜ・・・あっという間に殺されて・・・」

「やめて!!」

「高志くんは特別な力があるから・・・」

「やっぱりな・・・特別な力か・・・」 エイジはほくそえんだ。

「だから・・・高志君の力が必要なのよ・・・」

遠くの方から高志と先生がこっちに来た。(一周して来た 笑 )

「や、やべ」 エイジも走り始めた。

「ああ!!エイジてめーー!」 エイジにターゲットロックオンする高志。

「徳重高志!待ちなさい!いつまでも逃げれると思ってるの!」 先生はタフネスだった。

「チクッたのはテメーだな!エイジ!ぶっ殺す!」

「先生ね学生の頃レスリング部のキャプテンだったのよ!」 (だからって止まれねーだろ) 

夕日に消えていった三人はまるでタイムボカンシリーズのドロンボウ一味の様であった。


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 「ねえ、いつになったらエリちゃんに会わしてくれるの?」 熊のぬいぐるみを抱いた少女が問う。

「今、遠くにいるからね」 年を取った白衣のスコン博士が答える。

「きっと会えるよね?」 

「もう少しの辛抱だからね・・・」

スコン博士は少女をベッドに寝かせると事務所に向かった。

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 「なに!!マーピックが提供を断ってきただと!」 センター長は叫んでいた。

「おのれ・・・かくなる上は武力行使だ」 拳を震えさせ言う。かなり切れている様だ。(まさか・・・)

「吉野を呼べ!マーピックを捕獲しろと伝えろ!」 (このままでは・・・)

「くそ、私をコケにしよって・・・見ておれ・・・ぬふははははは」 (あ・・やっぱり)

センター長のバックに津波が押し寄せてきて止め絵になり   (・・・・・・・・・)

 

つづく・・・


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