第13話
潜在能力
2005 2/19 UP
人間は生まれながらにして平等である。
あまりにも不平等だった、この世の中に生まれた名言・・・
当時フランスの思想家達は、不平等さについて様々な事柄を語っている。
世の中の先進国と位置づけられた国々の人民は昔の苦労も忘れてしまい
平凡な人生を送っている。
そして生まれながらに平等なんて有り得ないと言い出した。
女子高生に聞くと 「生まれながらにして平等?そんなの有り得なーーい」
主婦Aさんは 「夫は次男でね、長男だったら親の財産がねー・・・でも姑さんは遠慮したいわねー」
OLの彼女は 「職場が男女平等じゃないのよ、あったま来ちゃう」
遊び人のけんさん 「あの広い土地が何故、俺のものじゃないんだ!地主に生まれてりゃ・・・」
当時の彼らに比べれば、圧倒的に平等・・・そして平和・・・
平和で平等、この二文字をどれだけ欲しがったか?今の飽食の時代に生きる者には
理解できていない。人権すら無視された時代の名言だと言う事を・・・
人間と言う生命体は一つ満たされると次を欲する・・・
きりが無い欲望の塊・・・
この物語にあげられる不平等とは「特定の人間には何がしらの潜在能力がある」と言う事。
それはやはり特定された(選ばれた?)人間が対象である事から平等ではないと言う事になる。
この世は決して平等ではない・・・
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「勘違いしてもらっては困るな・・・」 吉野は低い声で少し怒り口調で言った。
「どいつもこいつも、まるで自分が映画の中の主人公気取りだ。」
吉野は不機嫌そうにTVのニュースを見ていた。
「選ばれし者のつもりなのか!?」 ウイスキーグラスを高々と突き上げる。
「人間なんてのは素材に過ぎんのだよ。素材に・・・」
「大切なのはDNAと称される遺伝子だと言う事が解らんのか!?」
「その遺伝子をこの世に残し、後継者につなげる」
「いわば、時代から時代に遺伝子を運ぶ運び屋なのだよ」
「決してお前らが主人公ではないぞ!お前らは皆、その他大勢なのだよ!」
「勘違いしてもらっては困る・・・勘違いを・・・」 ソファーに崩れる吉野。
「お前らなんかよ、選ばれるわけにゃあわ・・・とろくせー・・・」
眼鏡が外れかかりながらも睡魔と一緒に沈んでいく吉野・・・
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村上と田中はそのころ一人の女性を追いかけていた。
「間違いないのか?」 村上は聞く。
「ああ、俺のノート・パソコンは最新の情報が詰まってる」 田中は野太い声で言う。
「情報はともかくだ、あの女がどれほどに覚醒しているかが問題だ」
田中の情報によると・・・
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名前は 藤堂 麗子(とうどう れいこ) 21歳 藤堂金属という大きな会社の令嬢である。 彼女は来年結婚する予定になっているが 相手は不動産屋の一人息子でいわば 政略結婚であった。 そして麗子はこれに猛反対したが 事は着実に進んでいる。 麗子には好きな男性がいたのだ 引き裂かれた麗子の心はすさんで しまう一方だった。 |
「ラチったほうが良いのでは?」
「いや、まだ手を出すなと言う事だから」
「いったいどんな覚醒をするんだ?」
村上はじれったかった。
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「徳重君!あとで職員室に来なさい」
担任の宇佐美先生は最近の高志の生活態度に危機を感じたらしく話し合いをする事にした。
他の先生にはまったく手に負えない高志であるが、宇佐美先生の言う事だけは比較的きく。
今回もこっぴどく説教をされた。
「何故か、宇佐美先生には歯向かえないんだな・・・可愛いしな・・・」 よこしまな・・・
どんな落ちこぼれで乱暴な生徒にも必ず一人は馬が合う先生がいる。高志にとってはそれが
宇佐美先生だったのだ。そのたった一人の先生の存在が生徒を学校に繋ぎ止める絆であろう。
それにめぐり合えなかった不良少年達はやはり学校を去っていってしまうのだ。
解り合えない大人との争いの中で仕方なく背を向けて・・・
← 宇佐美先生(外人ですか?)
後に高志はこの宇佐美先生に感謝をする事になるであろう・・・
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学校から帰ると部屋に一人残された中場ユリがテレビを見ていた。
「ああ・・・おかえり」 ユリはニコッと笑った。
「もう大丈夫なのか?」 高志は心配そうに聞いた。
高志の帰りをユリは一人でじっと待っていたに違いない。
「なんか、起きてると一日が長いんだなーって・・・」
少しだぶついた高志のシャツとジーンズをはいているユリが可愛かった。
「なに?」
「いやああ、何でもないよ」 また殴られると思った高志は、はぐらかす。
するとチャイムが鳴った。誰かが来たようだ。
「はい、どなたですか?」 カメラは暗くなって見えない。
「ちょっとカメラから離れてもらえますか?」 高志の呼びかけに
「やっと帰ってきたのか?遅かったな。どうせ担任に絞られとったんだろ?」
「その声は!え、エイジ!」 天白エイジ・・・どうやらじっと待っていたのはユリだけでは無かった様だ。
カメラから離れられないほどでかいのだ・・・(うそこけ!どんなでかさや)
「なんのようだ?」 ムカついた表情で高志はチェーンをかけたまま、少しドアを開けた。
「あのお姉さんまだ居る様だな?」 ニマッと笑うエイジ。
「だったら何だ?」
「警察だと言ってたな?彼女・・・」
「ああそうらしいけど」
「今日でもう一週間くらいになるだろ?どこかに連絡取ってるのか?」
「いや、彼女ずっと寝てたし・・・」
「普通、組織の一員って奴は一週間も顔出さずにはいられない」
「何が言いたいんだ?」
「ニセ警察の疑いがある」 エイジは真剣なまなざしになって言った。
「別にどうでも良いじゃないか。ニセだろうが、そのほうが・・・」
高志のセリフにエイジは割って入った。
「ニセなら良いんだけど、ホンマモンだったら?」
「はあ?」 訳解らんと言う表情の高志。
「ホンマモンだったら、ここにいる必要があるからここにいるんだよ」
「なんだって?」
「お前が彼女にマークされてるって事だ」 エイジの白い歯がちらつく。
一瞬固まった。
「まあ、そう言う事だ。また来るわ」 大きい背中が去っていく・・・
角を曲がってエレベーター乗り場で姿は見えなくなったが、高志はまだ呆然としている。
「俺が・・・マークされている?容疑者かよ?犯罪者?」
ブーー(ブザーの音が鳴った) 「定員オーバーです」
フェードアウト・・・。
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「入れ」 センター長は社長の座るような豪華ないすに腰掛け、でかい机ごしにクルリとこちらを向いた。
「センター長。この子が例の子です」 年を取った白衣の男が幼い少女を連れてきた。
「スコン博士。冗談はよしてもらえるかな?」 センター長はあざ笑った。
「センター長は体験しておられないので理解できないのも当然ですが、間違いございません」
「しかも、かなり強烈な幻覚を複数の者に同時に与えられるとデータに出ております」
「なに!?」 センター長は冷や汗をかきながらニヤける。
「やはりマイグレーターの影響かと思われます」
「そうだな、マイグレーターが潜在能力のあるものに影響を与えたのだ!!」
「しかし、マイグレーターの確認は一週間前の事件を境に消息を閉ざしております」
「まあよい。別の角度から調べは進んでいる。ぬははははは」
また今回もセンター長のアップかよ
つづく・・・
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