第12話
休息


2005  2/13 UP

 
  

朝倉朋子の心は複雑に揺れ動いていた。

無事に今回のパーティーに出席し、レポートの発表こそ終わらせる事が出来たが・・・

 ストーカーに襲われた事。

 夫の英明に対する不信感。

 母親に取り付いていた亡霊の事。

通常の人間はストレスが1つでもあれば胃に穴が開く所だが

朋子は一気に3つも抱えてしまっている。

ただ、救いはストーカーの北村という男が死ななかったと言う事であった。

この上、北村が死んで殺人事件に発展していたら彼女はおそらく精神病院送りだったに違いない。

朋子は次の日から仕事を休む事にした。

まる1日を呆然と過ごした。心の傷と何をどうするのかを彼女なりに考えたのだろう。

2日目、彼女が優先に行動に移したのはやはり夫の事であった。

あのストーカーの言った事は本当なのか?英明を信じていないわけでは無いが、こうなると女というものは

居ても立ってもいられないのだ。片っ端から探りを入れる。

ジャケット、財布、机の引き出し、夫の部屋をくまなく探す。

「見つけた・・・見つけてしまった・・・」

朋子の夫への疑惑は確信に変わった。

夫が多額の負債を背負った時、朋子が何とかかなる、何とかして見せると血のにじむような努力をしてきた。

その努力は何だったのか?今まで尽くしてきたものは・・・怒りがこみ上げる・・・

だが、英明の優しく接してくれた日々も、ビジュアルとして流れてくる。

涙は止まらなかった・・・。

しかし、彼女の衝動はここで収まらない。 

「嘘だといって・・・」 ひょっとしたら何かの間違いかもしれない。限りなく少ないこの可能性にかける彼女は

やはり、見つけたライターに記されてる住所へと足を運ぶ。

だが、このドラマ小説も例外ではなかった・・・。彼女の期待どうりに行くはずは無かった。

理解できない・・・しかも外人(東南アジア系)の少女に・・・

もうこれ以上はどうでもよかった・・・肩を落とし、英明に背を向けることにした・・・

 

 夜遅く朋子は誰もいない自宅にたどり着いた。出来ればこの家には帰りたくない。

「朝倉さんですか?」 暗い玄関から声がした。 朋子は心臓が止まるかと思った。

チンピラ風の男が二人、こちらへ歩きながら 「旦那さんに用があるんですけど・・・」
 ←チャゲアスか?(どこがチンピラやねん。マフィアやんけ)

「奥さん結構いけそうじゃないですか?」 若い方の男が言う。(何がどういけるんや!?)

「立ち話もなんですから・・・」 これはまずい展開だ。人間というものは、おかしな物で

こういう時、訓練しているか、いつも逃げてるものだけは逃げる事が出来るのだが

朋子は固まってしまっている。足がすくんでしまうのだ。

朋子は叫ぶ事すら出来ず、強引に車に押し込まれていく。

「やめて・・・」 声にならない声が・・・。恐怖がそうさせるのだろう。

 ←サスペンス劇画調(笑)

彼女はその時、あの亡霊を思い出した。頭の中が一瞬真っ白になり、ありとあらゆる感情を送信した。

 やはり現れた!!

半透明の亡霊がハンドルから(ニュキっと)現れ、すぐさまハンドルを握った。

そして思い切りハンドルを左に切った。 「おいおいっ!!」

ガッシャーン!!

衝撃をもう一人の亡霊が朋子の体にバリアーを張って助けた。彼女だけ無事だったと言う事になる。

こうも簡単に亡霊たちは彼女を救う。いや、人間がはかな過ぎるのだろう・・・

「一体どうしたらいいの・・・頭が変になっちゃう・・・」

夫の事を整理する間もなく、彼女はマーピック教授に救いを求める事にした。


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 徳重高志はしばらく学校を休んでいた。

と言うのは、中場ユリが熱を出し寝込んだままになったのだ。

この看病はまる二日続いた。

学校ではどこからか噂が広がり高志は病院に行ってるとか、重体だとか・・・

石黒晶が 「何ゆうてんねん!誰が重体なんて言ったんや?縁起でもない!」 問い詰めた。

「いや、ちょっと太った生徒が言ってたんだよ。」 (ちょっとじゃないだろ?) 

「だれやそいつ?」 (天白エイジだ)

「いや、誰かと言われても・・・」 (そりゃ他校の生徒だからな解らんわな)

「そんなんすぐ解るやろ?」 おそらく、流言だろう。(三国志か!)

そこへ、山下もえが心配そうに言った。

「石黒君、今日の放課後、徳重君の所へ様子を見に行きましょうよ」

「何で俺が・・・」 とは言ったもの少し心配だった晶は、しかたなく行く事にした。

普段の学園ものにもどった・・・

 
 
 晶は、もえと一緒に高志のマンションへ行く途中、あの時の戦いを頭の中で再現していた。

格闘術では勝っていたはずなのに・・・強烈なカウンター(錯覚刃をカウンターとしか思えない)一発で

沈んだ・・・今までカウンターをもらうほどの相手と戦った事は無かった。高志の場合は相打ち覚悟で

打って来たから食らってしまっただけで・・・

            

「徳重君とか石黒君はどうしていつも喧嘩ばかりしているの?」 もえは聞いた。

「またその話しかいな?」 煙そうに晶は言った。

「相手を傷つければ自分も傷つかない?」 

「あんた、キリストか?」 少しテンポを置いて、晶は

「根本的にちゃうんやな、山下さんとは考えが・・・」

「俺は負けとう無いんや。見っとも無い恥はさらしたない。」

「勝負っちゅうもんはな、勝ち負けって書くんや。」

「やるからにはどんな手つこうてでも、勝なあかんのや!」 淡々と話す晶の目に稲妻が走る。

「だからと言って・・・」 もえはその勢いに押されていた。

「格闘家に試合が始まってすぐに、待ったかけて殴り合っては危ないから」

「オセロで勝負しなさいって言うのと同じやで」               

「ああ、ここや。このマンションや」 二人は高志のマンションに着いた。




 高志の部屋に二人はあがり、意識を取り戻さない中場ユリの話しを聞いた。

「そらあかんで。病院に・・・」 「いや、彼女が病院には連れて行かないでくれって言ったんだ。」

「でも・・・大丈夫なの?」

「峠は超えたみたいだから。」

晶は「ちょっと・・・ええからちょっと」 高志を隣の部屋に呼んだ。

「お姉ちゃんとあいつ等のつながり・・・どうなんや?」

「なんだよ?急に」

「俺は気が収まれへんのや。何としてもあいつ等にリベンジしたいんや」

「その事か・・・」

「俺も・・・もう一度戦いたい。」

二人の強い気持ちはこみ上げる。がしかし、それはあまりに安易な事柄であった。

こう言った人間は一度死ななければ解らない人種だ。(よく言われる奴ね”バカは死ななきゃ”・・・え?死語?)

「とにかく学校には俺が熱だしてるって言っといてくれ。」

「ああ、何か解ったら頼むで」 晶ともえはマンションを後にした。


 もえは晶に問いかけた。

「でもどうして、知らない人にそこまで出来るのかしら?」

晶はユリさえ確保しておけば、

あの連中と戦えると言う本音を抑えて

「徳重の奴、あのお姉ちゃんに惚れてるんや」 

と嘘を言ったのだが、これが良くなかったらしい。

「そんな、高校生が不謹慎すぎます。」

「二人きりで・・・良くないと思うわ!」(みくちゃんか?)
 なつかしい・・・

「うははははは!」 そんな細かい事は晶にはどうでも良かった。(笑うとこではない)

晶の笑い声は矢吹ジョーのように夕日に響き渡った。(何と言う表現だ!)


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 中場ユリはほぼ回復した。

「こ、ここは・・・」 一時的な記憶混乱か?

「李(リー)・・・?」

「気が付いたのかい?」 高志はホッとした表情で眺めた。

突然ユリは高志にいきなり抱きついた。

遠く離れ離れとなった恋人同士がやっとの思いで再開したがごとく。

「え?・・・・リー?」 高志は”違う”と伝えようとしたが、泣いている彼女にそれが出来なかった。

「どうして私を置いて・・・」 この時点で徐々に記憶が固まってきたのか・・・

「ご、ごめんなさい・・・」 ユリはさっと離れた。


 しかし男と言うものは何時までも

 かっこ良く決めてればいいものを理性はそれを許さない。

 ユリの胸の柔らかさが高志の胸に残っていた。

 高志の鼻の下が一瞬延びた。 「でへ・・・」

 赤くなったユリは、もう1つの事柄に気がついた。

 それは、はいている下着であった。

 「あははは・・・それさ、お、俺のなんだけどさ・・・」

 ユリは真っ赤になった。

 「いや、女もんなんてここには無いし・・・」

 「買うのも恥ずかしかったから・・・」

 マンションのベランダから高志の弁解がダラダラと

 聞こえてくる。

 「全然見てないよ・・・」

 徐々にフェードアウトしてマンションの向こうに月が見える・・・

 「いやー」 「暗かったし・・・」 「目をつぶってたしね・・・」 

 「いやー決行にあうよそれ・・・」 「だ・・・だめ?」 「ごめん・・・」

 そして断末魔の叫び声が響き渡った

サイコパンチ!! 「ああああぁぁぁぁぁ〜!!」


  つづく・・・            ←だれや?

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