第10話
超常現象
2005 1/23 UP
天白エイジはフルブレーキで配達用ミニバンを止めた。フロントガラスは何かの衝撃で白く曇ったのか?
いや、割れていたのだ。自動車のフロントガラスはガラスが飛び散らないように加工されている。
しかし細かいひびが無数に入るため前方の視界が失われるのだ。
前方に一人、両サイドに一人ずつ。三人組の男達。眼鏡をかけてスーツ姿なので見分けがつきにくい。
そして遠方ではあるが後方からオレロフがこっちに向かって来ている。
「しっ!四面楚歌じゃねーか!!」 エイジは言った。
(エイジのアップ)
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一方こちらはパーティー会場である(すごい豪華である)。
色々なジャンルの教授たちが親睦を深めるパーティーらしいがそこに心理学教授のマーピックがいた。
彼は国際的に有名な心理学研究者で日本に10年ほど前に渡ってきたのだ。
彼はいくつもの本を出版しているが「潜在能力と私」と言う本はその業界では特別な位置を確立した。
「これはマーピック教授。お久しぶりで。」 センター長は笑みを浮かべながらワインを片手に挨拶を交わした。
「これはセンター長殿。今日はこちらも研究レポートをまとめたのでお渡しできるかと思います。」
(貴様の娯楽のレポートはよい) センター長は心の中でつぶやいた。
「ところで、マイグレーターのレポートは進んでいますかな?」 センター長は本題に入ったのか・・・
(何故この男、まだ発表段階でもないマイグレーターの事ばかり知りたがるのか?) 教授は思った。
「仮説ですが・・・。最近それを裏付ける文面が書けないんです。お恥ずかしい。」
「ははは、ご謙遜を。」 (はぶらかすつもりだな) センター長は次なる手を打つ事にした。
「ところで教授、私たちの研究所では超常現象を引き起こせる者の確保に成功しましてね。」
「ま、まさか・・・・・・・」 教授は青ざめた。 (この男の研究所がそこまで・・・)
「教授が今までに見たような超常現象とはケタが違いますぞ。」 勝ち誇った笑みを浮かべるセンター長。
「ただし、条件がございます。教授のマイグレーターの研究内容を我が社に情報提供という形で・・・」
「そっ!それは・・・・」
「まあ、今すぐ回答を出さなくても。来週にでも一度、見学にお越しくださって、それからでもよろしいのでは?」
マーピック教授の心は大きく揺れ動いた。
そのマイグレーターの情報とは彼が極秘に研究してきたものだった。
マーピック教授は現段階でサイキックを使用する者を見た事は無かった。(当然だけど)
また、センター長は自分の組織にサイキックを使用できる者を必死で集める事に成功してきたが、
その根源(何故、このような力が身に付いた、いや、覚醒したと言うべきなのか?)は
未だに謎であるが故にそれについて追求していたのだ。
ここで、二人の交渉は成立しないわけは無かった。
ただ、お互い牽制し合い、相手にのまれる事を恐れていたのだ。
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シーン変わって徳重高志とその一行は・・・
「あいつら何者なんだ?!」 徳重高志は今一理解できなかった。
「お姉さんが警察だとすれば・・・やっぱり悪の組織か何かだろ?」 エイジは苦笑い。
「しかもなんや変な技つこうて来よるしな。」 石黒晶も納得がいかない状態だった。
「でももうやるしか無いようやな・・・」 晶の目が光った。一番に車からおりた。
我流だが空手の構えを見せた。
「ん?小僧が・・・いわしたろか!われ!」 野太い声で田中が言ったのを村上がわって入った。
「この小僧、格闘術をたしなむようだ。どれ私が相手をしよう。」 村上は久しく血が騒ぎ出した。
「最近はろくな奴がいなかったから錆付いてしまって・・・」 吉野の顔色を伺う村上。
「遊んでやれ。」 吉野はうなづきながら言った。
「おらーーーー!!!!」
ドカバキ!!
激しい戦いだった。晶の身のこなしは素晴らしかった。村上は徐々に押され苦しい展開になった。
「調子に乗りやがって小僧!」 村上はなにやら特殊な力を使った。一般の人にはまったく解らない。
目に見えないそれは晶を錯覚させるものだった。村上の動きが早く感じる。
「あかん、こいつ何や動きようなったぞ。」
「石黒!」 高志はつい声に出した。
「相手に翻ろうされちまってやがるぜ」 エイジたちも見守っている。
「サイキックを使ったわ・・・」 中場ユリは見破っていたが、一般の人にはまったく解らない。
(私以外にも超常現象を扱える人がこんなに複数いたなんて・・・この三人組にしろ、あの外人にしろ・・・いったい・・)
ユリの不安は渦巻いていた。何かが起きようとしているのか?いったいそれは何か?
「よし決まったぜ!!」 高志たちは歓呼の声を出していた。しかし次の瞬間・・・・
「何だってぇーーーーーーーーーーーー!!!」
地面に崩れたのは石黒晶だった。
「おにいちゃーーーん!!!」
「だって拳が決まったのは石黒じゃねえのか?」 エイジは信じられなかった。
「カウンターか何かが先に入ったんじゃねえのか?」 高志は仕方なくこじつけをいった。
後ろで吉野たちがにやけて 「錯覚刃(さっかくじん)か・・・久々に見たぞ村上。」
「力が回復するまで休憩して置け。」
「いったい何者なんだ?こいつら?」 高志は究極奥義と言うものを目の当たりにしたのだと思った。
「俺も・・・極めたい・・・」 高志の目に炎がもえていた。(あかんわこいつ・・・)
「だめだわ・・・このままではみんな殺される・・・」 ユリはこの窮地を脱出する事に全神経を集中させていた。
「どうもそこのお嬢さんには、だいたいの事が理解できているようだな。」 吉野はユリをにらんだ。
「捕獲しましょう。」 田中が野太い声で言う。システム手帳に「アンシーン確認」とペンで入力した。
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吉野はにらみ続けると徐々に彼の形相が変化していく。 髪は逆立ち、眼鏡は割れ、口は大きく裂けていく。 「中場ユリ・・・良い名だ。ほう・・・この女も格闘術を・・・。 ん?幼い頃より力を持っていたというのか?」 「だめ!あの男の力を防ぎきれない。」 ユリはまぶしそうに手で顔を覆っているが吉野の力は 簡単にユリの精神に入り込んでいる。 「ほう・・・PKバリアがはれるのか。 しかしそのPKバリアでは私の力は防ぐ事は出来ないのだよ。」 吉野は嬉しそうな顔なんだけど、形相は変化している。 |
「GO TO HEAVEN」 吉野はボソッと言った。
すると中場ユリは立ちほうけている。ユリの思考の中ではとてつもないことが起こっているのだ。
ユリはよだれを垂らし始めた。(画面の右上にタイトルロゴが入った) エロビデオか!!
体がガクガクと震え、立っているのが難しい状態になってきた。
「なにが・・・何が起こってるんだ?!」 高志はたじろくばかりであった。
「こうしてはどうかな?」 吉野の発するアルゴリズムが変わったのか?(こいつもエロじじいだったか?)
ユリの足元が濡れ始めた。失禁をしている。この光景にさすがに高志も我慢の限界を超えた。
「やめろぉーーーーーーこのやろぉーーー!!!」 (画面の右上にタイトルロゴが消えた) もうええって
1)高志が突撃を開始する。(スローモーションで街灯の光がちらチラッとまぶしい感じ)
2)休憩してしゃがんでいた村上があわてて立ち上がった。
3)高志を押さえようと田中が間に割ってはいる。
4)吉野はサイキックを中断しターゲットを突撃してくる高志に切り替える。
5)中場ユリは失神状態で倒れ込む。
6)天白エイジは石黒晶をかつぎ、弟達とかけ出す。
7)後方からオレロフの姿が確認できる。
1)から7)までのシーンが繰り返され、だんだんと早くスライドされていく。
最後に高志の止め絵で・・・
つづく・・・・・