第一章
ワインシルバーの指輪
その二
2005 08/06 UP
豪華な馬車より召使に手を差し伸べられて現れたその男は小柄で色白で・・・
金髪の長髪を綺麗に小網にして束ねている。
そして、高貴で触れがたい・・・一瞬見入ってしまい、体が硬直してしまうような
そんな美しさを持っている。
「メルクさん・・・お一人でお出かけになっては困りますよ・・・」 綺麗な金髪が風になびく。
「キング・ヘルメウス様がお怒りですよ」
この言葉にまったく無視をしながらメルクは立ち上がるとスカートのほこりを掃った。
そして、顔をあげて言った。
「嘘よ!ヘルメウス様は、私を村へ帰してくれるって約束してくださったもの!」
このやり取りの声に酒場の二人、ジミーとマスターは聞き耳を立てていた。
「こりゃ何かあるぜ」 マスターは外へ出ようとした。
「待ちなよ、おっちゃん・・・」 ジミーはマスターを引き止めた。
「何か様子が妙だとは思わねえか?」
二人は身を潜めた。
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「私はレマの村へ帰るわ!ドーラおばさんもきっと心配してるもん!」 プイッと顔をそむけるメルク。
豪華な馬車より重装備の騎士がもう一人現れた。
「グゥイントよ手ぬるい!私に任せろ!」
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その時!
何者かの襲撃を受けた!
グゥイントは召使いが守りつつ馬車の中へ、一時避難する。
三人のアサシンが闇から不意打ちをして来たのだ。
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「こちらの持ち駒が三人殺された所から始まる戦闘とは割があわないな・・・アサシンか・・・」
馬車の中でグゥイントはつぶやいた。
「貴様ら〜!重騎兵三人は高くつくぞ!」 パイレルは叫びつつ剣を振り下ろし
瞬時にアサシンを一人、屠った。
残りの二人のアサシンは、この一撃に恐怖を感じずには居られなかった。
「ジミー!どこへ行くんだ!?」 マスターが振り返るとジミーは行動に移ろうとしていた。
「心配するなて、裏から回るんだよ」 何か思いついたのかジミー!
二人のアサシンは一斉に攻撃を開始する。
「はっ!挟み撃ちか!?」 パイレルにも緊張がみなぎる。
パイレルはマント越しに・・・
「笑わすな!その腕ごと切り捨ててやるぜ!」 アサシンの全力攻撃!!
もう一人は空中にジャンプし上から攻撃する!
見事なタイミングであった。最初にやられたアサシンがこの間に絡んできたら
パイレルとてやられていたかも知れない。
だが、パイレルは一枚上手であった。
上からの攻撃をしてきたアサシンへカウンター攻撃!
ロングソードのリーチがここでものを言う。
アサシンが使っていたショートソードではパイレルに簡単にカウンターを取られてしまうのだ。
「あぐ!!」 軌道を変える術の無い空中から、むなしくパイレルのロングソードへ突っ込むしか無かった。
パイレルの見事な快進撃でアサシンどもは瞬時に倒されていく。
これほどの強者になると正面から戦闘をしてもアサシンには勝ち目は無い。
しかしその時・・・
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後方の建物の屋根の上からワイヤー製のボーラが音を立てて飛び掛ってきた。
そしてそれは見事にパイレルの足に絡まったのだ。
どうやらこの狐面のアサシンがリーダーらしい。
「ちっとも帰ってこんと思っとったら、まんだやっとるのか!」
リーダーは部下の不始末に腹を立てながら言う。
「お前ら世話ばっかかけとってかんて!二人も死んでまって・・・どもならん!」
とは言いつつ、リーダー達三人の加勢のおかげで形勢逆転した。
少女メルクの所有権はパイレル達からアサシン共に移った形となった。
建物の隙間からジミーは様子を見ている。
「あれは・・・アサシンか?」 足が少し震える。
ジミーは後ろを振り返った。何人居るか解らない奴らの仲間に背後を取られていないか心配なのだ。
「あの子は何者なんだ?」 たかが一人の娘に組織的な対立と目の前の抗争・・・
ジミーは震えが止まらなかった。
「これは何かあるぜ・・・」 ジミーは強がった笑みを浮かべた。
そして狐面のリーダーは倒れたパイレルに剣を抜いて近付く。
倒れながらも剣を振り回すパイレル。
リーダーはその剣を軽く弾き飛ばした。
そしてヘルメットをはがした。
「悪いが、面(ツラ)を見してまうでな・・・」
「おのれ・・・アサシンごときが・・・」 パイレルは倒れて立ち上がれず、最高の屈辱を与えられた。
「面も確認したし、始末させてもらう!」 リーダーはパイレルの首をはねた。
つづく・・・