第一章
ワインシルバーの指輪


2005 08/01 UP

 

満月よりややかけた月が、ほんの少しだけ夜を明るく照らしていた。
     
その夜の街を黒装束の男達が三人、何かを必死で探している様子だ。

「見つけたか?」

「いや見失った!」

「ちくしょう!・・・」

 それとは別に、人気の無い建物の影に馬車が潜んでいた。馬車の中から声が聞こえる。

「一匹のこそ泥に・・・なんてざまだ」 フードをした男の顔は暗くてよく見えない。

「申し訳ございません・・・」 馬車の外で膝ま付き応える男は仮面をしている。
              
「あの身のこなし・・・メキアのシーフの残党かと・・・」 仮面の男は言い訳をする。

「そんな事はどうでも良い。問題はこれで指輪と魔書が奴らの手に入り易くなったと言う事だ・・・」

フードの男は拳を握り締めて怒りを隠せない表情で言う。フードより時より見せる肌の色は黒く、

髪の毛の色は白・・・いや銀色である。そして目の色は・・・

死んだ魚のような表情で薄気味の悪い赤色であった。

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シーンは変わってその街の居酒屋である。
          
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 店の主人(マスター)は洗い物をかたずけながら 「おじょうちゃん。ここは大人の来る所なんだよ」

「大人です!!」 カウンター席に着いた少女はとっさに嘘をつく。

すると、店の扉が開き一人の少年が入ってきた。

「飲ましてやんなよ。俺がおごるぜ・・・」

少年はかっこよくセリフを決めた。

「ジミーじゃねえか・・・」 店の主人(マスター)は嬉しそうな顔つきで言った。
           
「なにしろ、土産はレッドストーンだからな・・・」 

ジミーと言う名の少年は巾着から赤い宝石を取り出して店の主人(マスター)に見せた。

「へい!ラム一丁!!」 景気の良い声とともにカップに入ったラム酒がカウンターを滑る様にして

少女の席まですっ飛んでいく。

少女はそれをナイスキャッチでつかんだ。

ジミーは少女の隣の席について 「君ここらでは見かけない顔だね」

問い掛けに答えず、ラムの飲み続ける少女。

なんと少女はラムを一気に全部飲んでしまった。

「あー・・・おいしかった・・・」 少女は気持ちよさげな、満足そうな笑みを浮かべた。

ジミーはただあっけに取られている。

「飲みほしちめーやがった・・・」 マスターも驚きである。

「ごちそうさまでした」 少女はそう言うとクルッとドアのほうを向き、立ち去っていく・・・

「あの・・・ちょっと・・・」 ジミーは声をかけるが、少女は出て行った。

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「何なんだよ!あの子は!オレはまた重要人物かと思って・・・ただの客かよ!」

ジミーは納得がいかない表情で叫んだ。

「ところで、ジミー。よくレッドストーンが手に入ったな・・・」 そんな客より宝石に興味を示す店のマスター。

「実はな、おっちゃん・・・それはな・・・」 ジミーの顔がシリアスになる。

「実は?」 負けずに、マスターの顔もシリアスになる。

とその時!

「いやあああぁぁぁー!!」 少女の悲鳴が聞こえた。

「何だ!悲鳴か?」 マスターはカウンターを乗り出してジミーの頭を押えつつ言った。

「悲鳴だよ!」 ムカついたジミーが体勢を立て直してマスターのスキンヘッドをつかみ

カウンターに叩きつける!事件の匂いに両者ともにデッドヒート!

体格のいいマスターは叩きつけられて内股になっている。

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 重装備な鎧をまとい、その上からサーコート(マント)を羽織った騎士が三人・・・

少女は囲まれていた。

そして豪華な馬車より白い肌と金髪で長髪の男が現れた。
            

なにやら貴族のおえらいさんが少女を付け狙っているのか!

少女の名はメルク・・・このユニークな少女をめぐって

一体何が起ころうとしているのか・・・

つづく・・・

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