2008/5/2
NAFのパウのインド旅行記 ― 第二部 ―
第11章 IN BUDHA GAYA
一人目は俺だった。
ラナのバイクの後ろに乗り
おそらくブッダガヤーの中心地に向かっている。
「シーユー、アゲイン」という社交辞令を真に受け
乗り合いジープの終着点で
我々を待ち構えていたこの男、ラナ。
さすがに断りづらく
我々はひとりずつラナお奨めの安宿に連れて行ってもらうことになった。
インドまで来て知らないおっさんの腰に掴まり
リクシャーでもタクシーでもなく250CCのバイクで移動。
俺は何をやってるんだろう・・・。
どうも今回旅運というものが無い気がする。
そんなことを考えているうちに
ものの5分でバイクは安宿に到着。
「ヘイッ!ここで待ってろ!もう一人を連れてくる。」
俺を安宿の前に置き去り
ラナは今度はM上を迎えに行った。
到着した宿はプージャゲストハウス。
宿の前はちょっとした路地になっていて
でこぼこした道の上を鶏やヤギが歩き回り
レンガを重ねた向かいの家の軒先では
サリーを着た女性が朝食の支度をしている姿が見える。
子供たちも早起きで
土埃を巻き上げながら
ゴムの外れた自転車の車輪を転がして遊んでいた。
そんなのどかな田舎町の風景をぼんやり眺めていると
バイクのエンジンのけたたましい音と共に
M上を乗せたラナが戻ってきた。
「おい、お前ら今日はどこ行くんだ?
どこでも俺が連れてってやるぞ!
さぁ、どこだ?!どこへ行きたい?!」
「いや、ちょっと待ってくれ。
俺ら長旅で疲れてるんだ。
少し寝たい。」
つうかブッダガヤーになにがあるかもよく知らんし。
昨日のデリーでの一件もあり
我々は本当に疲れていた。
「そうか、じゃぁ昼からだな!
2時にお前らを迎えに行くからな!!
ぐっすり寝ろよ!!」
ぐっすり寝れそうもないんですけど・・・。
本日の予定が勝手に決められてしまった。
我々はそのままプージャゲストハウスに泊まることにし
部屋の鍵をもらった。
ダブルルームで150ルピー。
悪くない。
1日目は空港のロビー。
2日目は列車の中。
とにもかくにも3日目にしてやっとベッドで眠れる。
部屋は清潔で
冷房こそ無いものの
窓からそよぎ入る風が心地よかった。
ホットシャワー完備というのもありがたい。
そういえば日本を出国してから風呂にも入ってない。
眠る前にシャワーでも浴びるか。
インドの砂埃と喧騒にまみれ
疲れきった身体を少しでもほぐすため
我々はホットシャワーを浴びることにした。
M上が先にバスルームに入ることになり
俺はそれを待つ間
硬いベッドの上でガイドブックを眺めながらごろごろ。
・・・・・
「いてぇっ!!!」
長旅の疲れでうとうとしだしたころ
突然、M上の悲鳴が響く。
なにをやってるんだあいつは・・・。
程なく濡れた頭を拭きながら
M上がバスルームから出てきた。
「・・・お前、気をつけろよ。」
何を?!
M上に次いで俺もバスルームに入る。
まったくバスルームで何を気をつけろというのだろう。
水シャワーでないだけ全然ましだ。
あの水シャワーってのはほんとにダメだ。
浴びる前に体を温め
気合を入れ
精神の平衡を保ちながら挑む。
もはや修行である。
まったく疲れが取れる気がしない。
その点このホットシャワーは最高だ。
やはりシャワーは温かくあるべきなのだ。
蛇口をひねり
壁に固定されたシャワーヘッドの上部にある
湯沸かし器のスイッチを入れる。
水圧の関係か
水の勢いは非常に情けないものだったが
それでもシャワーはシャワーだ。
そろそろ温かくなってきたかな。
バスルームに湯気が立ち込めてきたころ
シャワーから出る水が熱すぎないことを手を伸ばして確認し
体をシャワーヘッドの下へ滑り込ませる。
乾き、疲れた身体に染み入るように
やわらかく降り注ぐ温水。
やっぱ3日ぶりのシャワーは良いね!
気持ちいい〜・・・
「いでぇーっ!!!」
身体中に文字通り電気が走る。
これ漏電してんじゃねぇか!!!
M上が言ってたのはこれか・・・。
ホットシャワーで感電。
インドの湯沸かし器恐るべし・・・。
つづく
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