日録●太田代志朗●2024年 |
7月30日(火) 猛暑。 パリ五輪の歓声に ーー40年前、わがパリ滞在記 ・幻(ゆめ)にまた雪の夕べにうたひてやセーヌ左岸の若き彷徨 ・ガス燈にマルテの手記をかざすかないづこへゆけど夜の石畳 ・黄昏に酩酊船が揺れをりてモンマルトルの丘を下りぬ ・霧深く場末の宿に項垂れる 不明のボードレールを捜す ・風の夜のカフェ・ドゥマゴの珈琲よ奴がれひとり詩集焼き棄て ・なにゆゑにまた墜ちくれば祷りてよ聖堂寺院の夜のミサ曲 ・さればとよ愛(かな)しく過ぎし物語イリュミナシオンの都市(まち)の夜明けに 7月27日(土) パリ五輪始まる。 PARIS 2024年。開会式がパリ中心部を流れるセーヌ川で始まる。 雨の中、各国選手団は船に乗り、約6キロをパレード。 聖火に「平和を願うメッセージ」、エッフェル塔が鮮やかにライトアップされている。 記憶の中に霞んでいく優雅で華麗な大通り、藝術の街が懐かしい。 猛暑がつづく。コロナ第7波の感染拡大。 体調不良で、家で静かに過ごしている。 7月23日(火) 連日猛暑。 ゴミ捨てや、小庭の水やりでたちまち汗びっしょりになる。 茶がけに井上康史大人の書。 「夏山多奇峰、雨後蝉声一面響ーー清風を御身のもとへ」。 ふうらんの花が香ぐわしくゆれ、南方流の一席が思いだされる。 井上さんは元赤阪・無畏庵の茶室開きにお教えいただいた。 まさに一期一会、南方流の茶人の黒紋付のいでたちは凜としていた。 その井上さんからの書簡の一つを軸装にしたのであるが、淡墨の筆づかいの余情が夏にゆらめく。 7月20日(土) 梅雨明け、連日猛暑。 早朝に起き、風呂に入りサッパリした気分で朝食。 小庭の水やりで汗をかき、またシャワー浴びる。 炎天37℃の昼下がり、思いたって小公園をウォーキング30分。 「熱中症指数・極めて危険」であるが、蝉が啼き、樹々の葉が眩しい。 木陰にいると夏の時間がゆったり流れる。深呼吸、瞑想、波羅密多。 適度な運動はしているつもりだが、腹が出てきて体重アップ、体力維持? ーーもうすぐPARIS 2024、パリオリンピック。 さて、それでも”暑い夏に熱い読書”。 恩田侑布子の『余白の祭』『混沌の恋人』、豊かな詩感がひらく世界に酔った。 2024年夏、曠野ゆく身にちかづくや雲の峰(蕪村)。 気軽に旅にも出られないが、鰻重でも食べ、夏を乗り切るや。 7月16日(火) 雨。 ・世に反き浮き世烏の老いざれば悪王子町に雪降りしきる ・今朝ママンが死んだーー海はるけしもせめてやつがれ稲荷寿司もち ・隠れ棲む茶数寄の活けし椿なれなぜかあかとき風の告げなむ ・リルケなれ愛も祷りも欺けば詩集を炎やす夜の果樹園 ・おもひかね雨の武州にながらへば祇園囃子のかすかに聞こゆ ・かくなればその唇に問ふなかれカサブランカの霧の彼方よ ・鳥羽院に駆けゆき申す月明かりいかゞ引き裂く歌集(うた)のあらざれ ・宇宙船地球号いかなるも詩歌きらめき永遠(とは)なれ明日 ・愛(かな)しきを行きて負ひゆくうつせみの悪業なりて花散りゆかな * ・夜もすがらゆめかとぞ軍馬いなゝきて流れ棲みをり武州古城下 ・少年はいつもひとりで遊びけり父の義眼を村に葬り ・塚本邦雄の掛け軸「美ならぬ」、淡墨(うすずみ)さやかにわれの晩年 7月14日(日) 白磁の大皿。 これは旅先の平戸の骨董店で手にいれた逸品である。 平戸は松浦藩の城下町、南蛮貿易の先駆けとして栄華を誇った。 小路をぶらぶらして入った古ぼけた店での出会いだった。 ひと昔前のことで平戸は夏祭り、夜には花火があがった。 釡印に「平戸産・三川焼」、すなわち松浦藩のお庭焼きである。 純白の磁肌に藍色(平戸系はコバルトブルー)の呉須一色。 七人唐子は、松浦家から公卿や幕府への献上品である。 藍絵に童子たちの踊りも楽しく、清く静かに澄んでいる。 *現在、ウエブサイトから消失の「愛玩ノート」の採録なり。 7月12日(金) 松山で豪雨、土砂崩れ。 当地は朝から雨がしとしと降る。梅雨寒で、気温も低く助かる。 運動トレーニング50分。ひと汗かき、身体がほぐれる。 食事は家人(パートナー)任せで何もつくれない。 京阪の箱寿司、うどん、お好み焼きを食べたいとしきりに思う。 *大阪寿司は、東京では西武渋谷店の「すし萬」だけになってしまったか。 神楽坂の大〆、また新宿駅西口ロータリーの店もなくなった。 門巷閉ざした雨の昼過ぎの転寝。 徒然に「結城信一全集」、「此ほとり一夜四歌仙評釈」。 7月10日(水) 連日猛暑。 熱中症で救急搬送が相次ぎ、死者もでている。 武州古城下、つましく冷房のきいた部屋で過ごす。 わが悔いなき晩年ーー涼しさは錫(すゞ)の色なり水茶碗。 ゆったり体力保存とはいえ、ブログを書くのも億劫になった。 気になる1冊を開くも、当節の学識のソシュール思考による文学論にはお手上げだしね。 それでも昨日は思い立って、ケルヒャーの高圧洗浄機を手にもつ。 玄関周り、駐車場、小庭をきれいにする。力がいり、びしょ濡れになっていた。 水をガブガブ飲み、ひと仕事終え、ダウン寸前なり。 ーー都知事選が終わった。どうなる、東京? 7月6日(土) 猛暑。日が暮れ雷鳴、稲光、大雨。 起床5時。血圧129-65-80。小暑。朔・新月。 前田英樹著『保田與重郎の文学』(新潮社)は、膨大圧巻の800ページ。 倭し麗し、萬葉集、雄武の悲しみ、大君の思想、山河滅びず、身余堂の日々。 伝説のその生涯と文学が、当今の言語の闇をぬけて痛切に浮かびあがってくる。 さても、『保田與重郎全集』全45巻(講談社)は書庫に眠る。 何かに檄しながら風に流され、これはついに読み切れなかったか。 7月5日(金) 列島猛暑。熱中症警戒アラート。 連日の猛暑35℃、熱中症警戒アラート。 不要不急の外出は控え、水をこまめに飲むようにと管内放送あり。 ごみを出し、小庭に水、風呂の水を変え、そしてクラブ、靴、バッグを拭く。 ーー家人(パートナー)がシニアサポートの運動教室、きょうからトレーニング本格開始。 7月3日(水) 野田パブリック・けやきコース。 夏空が高く、陽が容赦なく照りつける。18H、5.447Y、P71。 深い樹々に囲まれて、変化に富む戦略性豊かなコース。 炎天もものかわプレーに興じ、ボールを追う。 昼食はカレーライス。ゆったりくつろぎ四方山話。 バックナインになり、足腰が重たくなる。 ギブアップ寸前だが、自然の中で楽しみ、闘う。 なんたって健康的で充実した時間。 友人仲間と相好を崩し、お互い元気であることに感謝。 それにしても5番ユーティリティとサンドウェッジを忘れてくるやら、とんだ耄碌の次第。 ーー混雑する16号線を走り、夕方6時前に帰宅。 7月2日(火) 梅雨の晴れ間に。 朝5時前にめざめ、ベランダで眩しい陽の光りを浴びる。 朝食に白粥、鯵の開き、納豆、梅干し、糠漬けの胡瓜。 青空に雲がおおっているが、中天の陽が眩しい。 家から久伊豆神社(茅の輪くぐりをやって)~岩槻公園とまわってくる。 緑が萌え、木陰にいると涼風が通りぬけていく。 新しいシューズの履き心地よくウォーキング70分。 茶事のあとの生け花にハンゲショウ、タイマツソウ、ガンピ、ホタルブクロ。 ・道化師が解剖台に睡りいり夜明けに裂けし黒きパラソル ・いづかたも夢を断ちきり動乱の何でう史書に血の滲みけり ・山櫻散り舞ひ乱れかぎろひの大和のくにに幾夜目覚めぬ 7月1日(月) 半夏生。 6時に起きる。雨がしとしと降っている。 警報級の大雨が伝えられるが、夏、7月になった。 ーー夏河を越すうれしさよ手に草履(蕪村)。 今朝の血圧138-70-69なり。 山折哲雄著『日本人の霊魂観』(河出書房1976年)。 古書のネット申し込み、郵貯銀行払い込み650円(運賃込み)。 ありがたくもクリックポストですぐ届けられた。 |
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