五月の桔梗


 


さみだれの日々、老いておろかな・・・・と呟き。 

ナジャたる女など知らず愛せしを右派論壇ブロガー昨日逝去

海にきて還らざる日の愛(ルビ=かな)しきに無名の老いたるサックス奏者

楼酒老身にしむ近江の朝よかへりゆかむかわれの楽浪(ルビ=ささなみ

悠々となれば急ぎて参らうと詩仙堂丈山忌雨降る

暁闇にめざめておもふことありぬ老いておろかなわれならなくに

歌はざるもなほ決然と松風よボルサリーノの帽子を擲げぬ

カリブ海サン・バイテル島よりの絵葉書に新婚の姪の喧嘩沙汰 


はつなつの小庵、また小庭に花々が咲き乱れていった。 

武州岩槻城本丸跡小庵にさればおもひの夏椿かな

色このまざらん男など知らねば好物の鮎寿司に舌鼓

詩人追放せしプラトン『国家』篇 国亡びゆく日に焼く歌集

晴隆公記の写本 歌舞音曲酒宴東隣放火盗賊襲来と

老文楽太夫は水中ウォーキング後コーヒーを飲み呵呵大笑

しきしまのやまとのくにのはつなつに真幸(ルビ=まさき)く坐(ルビ=ま)せと風に祷るを

ケニアの薔薇栽培家の夜のメールに「思ひ乱れてひとり涙か・・・・」

すべからくわが晩年に告げざれば夜の洛東鹿ケ谷密議


前立腺肥大症の入院・手術後、朝夕の緑陰のウォーキング。 

祇園料亭梅むら女将十三回忌 備前瓢形徳利行方知れずも

髭剃れば聖句となへむおお悪、美、エロス、菊千代、夢のまほろば

京・重兵衛の磯巻き絶品にて母の初恋知りうつ鼓

海辺、ピストル、太陽ーーなにがゆえにわがムルソーの昼餉をつくる

若きファンドマネージャー死すあかときの上海老街(ルビ=シャンハイラオジエ)五月の桔梗



【2010年5月】

 

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