日録●太田代志朗●2026年

4月25日(土) 昼前から晴れ。ゆめ、な語りそ。
小家の楓が勢いよく葉をしげらせ、鮮やかな緑に映える。
小さな庭の手入れも、何やかや閑に任せ手入れしている。
エビネが咲き、しゃが(胡蝶花)3本を植えたりした。
甕の中で卵からかえった小さなメダカが泳ぎ回っている。

ゆめ、な語りそーー老愁の日に奇(あ)やしく崩れ。
・咎あり生きむにさやぐ東雲のわがサンタ・マリア・ブランカ
・駄法螺ふき年積もりぬる小夜更けて熱狂と憎悪の拾遺詩篇
・居直りあざ笑って首刎られたるに花のあけぼのわが秘伝抄
・新派水谷八重子八十七歳新橋演舞場休演の晩春
・こは夢ならんーー昏るればゆれみだれあはれ知れとも人亡びゆく


4月23日(木) 福島泰樹歌集『下谷万年物語ーー唐十郎篇』(晶文社)
福島泰樹氏より献本受ける。
不義理、ご無礼つづく中、誠に忝く渾身の第36歌集。
下谷に過ごす時代の奔流を鮮やかに浮びあがる。二人の下谷、坂本小学校の源郷が明かされ、ここに「言葉と肉体、この有機的関係」の全開発射を浴びる。
それにしても「太田代志朗は浪漫と高志をかかげる最期の文学者なり」と激励うけつつ、何一つ溶かし撃ちきっていない。背を向け春が終わったか。筐底4.500首の選別構成がはかどらぬ。

・菊姫を飲みて朝まで乱声(らんじゃう)の風の行方を誰にか告げむ
・月明に義のあかさざる若き日を叛きゆくはやゆめのまぶたよ
・つひにことばうるはしくひきちぎらるきみがふゞきのちかひのあした


4月22日(水) 晴後曇り。黄砂飛来。
午後から曇る。来客あり老いのよしなし。
毒性ありというしゃが(胡蝶花)3輪、小庭に植える。
PCのX(旧(ツィッター)の英文表記をサポート受け元の日本語に変換。

・西行庵に立寄り不慮に手痤受け相果てぬれば花の俤
・堕ちる女を決して辱しめてはならぬーーパリ艶事秘話訴訟判決
・胡蝶花に毒性あり初夏に植えきてうつつ瞼閉じゐる
・年老いし情婦に「袂の露の如何」なる手紙の添へ書
・駄法螺ふきなすこともなく小夜更けて熱狂と憎悪の拾遺詩編


4月21日(火) 午後から晴れ。
最大震度5強の地震による北海道~福島の「津波情報」が解除される。
小庭の楓が今年も枝折戸をおおって大きく葉を揺らしている。

またも銀行通帳なくし薫風に入魂のショパン公演迫る
・人愁ひ一夜限りの協奏曲なればはつなつの墓参にゆかづ
・後白河法王屋敷跡のホテル閉館し焼かる白拍子の置手紙
・晩夏(おそなつ)に母は帰らづしかるのち赤い金魚を三匹殺す
・筋トレもせず茶会を欠礼し歌書焼き捨てむわが十六夜日記



4月19日(日) 晴れ。27℃夏日
青葉若葉が萌え、夢幻庵、釣り窯、うす茶点前。
跛行3.500歩。浪漫も高志も潰えゆくひとときの絶唱ならば。

・かの魔術的芸術なる講義録より薔薇と唇を盗みとり幻野を奔る
・ポロネーズ第五番つひに弾かざる夏に逝きし老友(とも)の手紙焼く
・<わが果ての旅>の清算書できぬまゝ姑息な会議始まる深夜
・骨が生きるために蝋燭に火をつけて紐説く亡命文学論
・もとより<紅旗>など関はりしらづも何ぞ紅葉ちり眠らぬ瞼



4月17日(木) おおむね晴。
若葉の季節になった。一挙に匂う緑がふきだしている。
躑躅、蒲公英、山吹ーー公園ウォーク4.000歩。
世にAI小説が話題を読んでいるが、もう小説を書く気力も体力もなくなった。
短歌韻律に魂が遊行し、鬱勃としている。

・敗走の道ぞいに蜥蜴は美しくふりかへりわれらを嘲笑ふ
・寝たきりの悪友に「七騎落」謡ひあへかに波間の酒宴
・王宮の馬丁らはその夜の雪姫辱め大和にくだる
・暴君の愛せし鸚鵡逃がしきて燕子花図屏風たてかける寝室
・岳父の手記に赤い蹴出しの女義太夫とつれそひし三年とや


4月14日(火) 晴れ。葉櫻になり、モッコウバラ満開。
6時起床。熟睡しているやら、毎夜睡眠にマイスリー錠飲み。
公園をウォーキングポール4200歩。モッコウバラが美しい。
歯科院で奥歯は仮に塞がれたが日々の食欲さえず。
書室散乱、夕方から風がでてくる。*右写真は城址公園の鬱金櫻

・茶会記続編の書簡集に「花をたて香をたき死す」一字掠れ
・バルザックの邸宅の花劇とともにはじまる演奏会の招待状忘れ
・繚乱の鈴蘭を踏みゆき未明の集会に遅参すれば赦さづ 
・無人機ドローンが街を壊滅させる早朝も 粥すゝりゐる
・パレルモに行つてきたのよ、ほゝえみて海辺の墓地に花束投げる


4月9日(金) 断続的な雨。
春が過ぎゆき、雨が時々降る。風あり、花びらが玄関回りまで散乱。
終日、蟄居。老年の日々のよすがの歌日記。

・そしてまた夢のなかにはいってゆく悲しい泪の深さを計るために
・モーレツからビューティフルへ突っ走りし父を赦せよわが櫻子よ
・背負いたる女が鬼になり花時雨に消えこみあげるかなしみ
・わがひそやかなざわめき 夕日と葡萄のしたたり醒めない世界の憎悪
・背徳と秘密が人生を彩るのね 花曼荼羅につぶやきそむき
・いまさら愛恋などの嘘っぱちは死んだ蛍に伝えておくわ
・三十七階タワーマンションのティコーナー、それが二人の別れの場所だった
・モーツアルトもプルーストもヴィスコンティも贅沢な憎悪の産物だったか
・希望と哀愁、夕日と葡萄のしたたり きみはいつも謎のように笑っていた
・そうなのね鬱金桜が満開だった それが最期の思い出になった


4月5日(日) 時々晴れ。
時々陽が射し、家人と一緒に城址公園。
花の盛りに揺れ、風に舞っている。
人で賑わい、鬱金櫻がひっそり咲き誇っている。

傍らの説明看板には以下あり。「鬱金櫻の花弁は7~18種あり淡黄緑色、しばしば花弁先端が淡紅紫色を帯びる。八重桜の一種、江戸時代から知られる」。ーー鬱金、歌集の名前にいたしたくも。



4月4日(土) 花雨。
雨となる。花がしおれ、舞っている。気温も下がる。
ここのところPCに向かい根を詰めた。
削除されたサイトから雑詠、総数7.000首ーー同じことばかしうたっている。  
・花は秘すべきものならずこころせよ闇にひしめくや贋花伝書


4月3日(金) 花しぐれ。
晴天。穏やかな流れ、春日和。
家人の定例茶会。「春入千林処々鶯」。
春を讃え、春を惜しむ。塞ぐ炉の名残。

女、鬼、男、満開の桜の下でーー再録。
男は満開の桜の花の下で急に不安に駆られる。
背中に負つているのは愛してきた女でなく鬼女だつた。
たちまち振り落とすと男は首を締めて鬼女を殺す。
だが殺したと思つてよく見るとそれは彼の美しい女だつた。
舞ひ落ちる花びらが2人を包む。男は女をゆさぶり大泣きする。
花が四方の果てまで静かに散り舞うてゆくだけだつた・・・・。


4月2日(木) 花曼荼羅。
冷たい雨雲がかかる中、運動スクールで90分。
昼過ぎから晴れ上がる。
花と風に誘われ、花曼荼羅の公園を歩いてくる。

短歌作品は第一歌集以降3.3000首掲出。
450首に整理すべく。

4月1日(水) 新年度。花の雨。
早朝の城址公園にゆくと、一部明るく陽がさしている。
だが、それもほんの束の間でまた雲におおわれてしまう。
花が葉桜になり、鶯が啼き、風に散りはじめた。
桜花(さくらばな)を愛でる心、そしてその刹那の美しさ。
わが人生の終盤において彩なされる日々のささやかな出来事。
誰かまた花をたずねてーーと古歌にありしや夢幻。

17℃、次第に雨の範囲がひろがり、昼過ぎから雨。
ーーさて、PC向かい未だ書かれざる一章、一節。

 
日録サイト:2002年7月~2026年3月

WEBサイト「花月流伝」は2002年7月より開信。
掌篇、短歌、高橋和巳研究、書評、エッセイ、著書目録など随時編纂・発信。
しかるに、多くのデータが遺憾ながら消失されている。

鋭意検討中だが、その大半は老学無才にて手に負えないのが現状だ。

さあれ、ネットワーク時代をひめやかに思索、迷走、
わが意識の天頂をいろどる暗黒の形而上学。
「文学終焉」の荒野に、ロマンと鎮魂の黙示録をたどる



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