春麗日詠ーー2008年4月

●4月5日(土)
 また春にめぐりあふーー
花しぐれゆるがるかなたすべもなきわがうつそみのいのちあらしめ


●4月10日(木) 花が散っている。
春立つと思へば詩歌(うた)のいづくにかあかときやみのことば引き裂き
春が馬車に乗つてくる夕べほゝゑみて届けし決闘書 ドルヂェル伯に

●4月18日(金) 雨の一日、亡娘命日。
比良坂になびく黒髪ほゝゑみて告げむ朝(あした)の紅きくちびる
十六歳そのかなしみの頬染めて父にいふべきことありぬれば
わが明日香 春の雨降るゆふべにて一合二合の酒のかなしも

●4月19日(土) 夜来の雨上がるーー仮住まい1カ月半なり。
またけふも春の一日過ぎゆくを老いにけらしな夢にこととひ
何することもなく春の日のさはれ”家は漏らぬほど”と『南方録』
ながらへて武州の街の春雨に遊びの笛を吹きてゆくかも

●4月20日(日) 上野・j聚楽第が閉店。
休日の一日上野で遊びけり幼き吾子の思ひ出深し
何を食べたのだつたか語りしか聚楽第の春の夕暮れ

●4月21日(月) 宴席ヤミ献金疑惑沸騰の新東京銀行に捜査のメスか。
”石原慎太郎銀行”に捜査の手、春の嵐に都知事辞任も

●4月23日(水) ”地球温暖化は二酸化炭素が主因”なるは欧米の世論操作と。
暁闇に目覚めておもふことありぬ老いておろかなわれならなくに
しきしまのやまとのくにの春の日にふとすれちがふ首斬人よ

●4月24日(木) 観世栄夫著述『華から幽へーー観世栄夫自伝』読む。
花いずこ舞ひゆくかなたなほうたへ春にさらばとかぎろふ扇
またけふもうらうら過ごしぬ夕暮れの街の小路の灯り恋しき
仮住まい一カ月半、あはあはと体力気力を削ぎて暮らしぬ
このままに遂げずまぎれてあかときの夢の流れにただよひゆくか

●4月29日(火) 岡部伊都子さんご逝去。ーー昭和の日。
古都ひとりゆきあひたればかなしみのゆふべしづかに春の雨降る
あへかにもひとり力のあるかぎり夜のとばりに愛(かな)しくうたふ
たちよそふ思ひ暮れぬることなりて世にぞ語らむ風よ伝へよ
岡部伊都子さんは『おむすびの味』の一書でデビュー。
おむすびの味を探りてこととひぬ女ひとりの旅にてあるか
京・円山公園内茶亭で話す夭(わか)き日の風光る午後
みほとけにゑみて祈りてほのかなるまぶた羞しきあはれきみはも
昭和の日々に問ひかけることありて謡へばあかねきざすはつなつ
この国の暴走、環境破壊ーー人の世の夢のつむぎに醒めざらめやも

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