夏の日々ーー2007年

8月09日(木)
猛暑、長崎原爆忌。
鐘の鳴るこのひとときに佇ちゐれば怒り祈りしわが蒼穹よ
戦後欺瞞の 戦後平和の過ぎしかば無告の夜々に叫びしものを

8月10日(金)
『ゴヤの手紙ーー画家の告白とドラマ』(岩波書店)読む。
宮廷アカデミーわれはなだれきて描きし王妃マリアに告ぐる
聖ヨセフ昇天せしよこの夜にかなしくあらば燃へたる僧衣
修道士に手紙書きたり顔料のこと老けこみしわれの夕べよ
煌きの首都マドリード一刻も早く下絵を描きたしものを
宮廷画家フランシスコ・ゴヤ亡命すあかときわれに風はうたへよ

8月11日(土)
倅一家と食事ーー孫娘・真理子と遊ぶ。
何思ふその白き掌(て)に夢あふれきらめく夏になれはうたふや
あどけなくわれにあゆみて手をのべる小(ち)さきいのちの熱きたまゆら
その軽き身体を抱き歩めるに蝉時雨かな真理子の微笑
(て)をうちてよろこび語るひとときを頬寄せうたふわれにてあるか

8月13日(月) 
月遅れ盆迎え火。
奈良坂のコスモス揺れてあかときのほゝゑむをみなあはれ夢影.
伝ふべきひかりのこゑのつゆくさのゆきてかへらな黒髪なびく

8月15日(木)
猛暑ーー芙蓉の花揺れる。
かえらざる夏にしのびて咲きほこるきみがかぎりの放つゆらめき

8月18日
書棚整理ーー本をミカン箱10コ処分。
今さらに読むつぐことの淡くして処分する蔵書の山に流し目向ける
愛書家のはしくれうつつ日の暮れて拠るべくもなく茶をすするかな
叫びしを都市の叛乱日々のデモ共同幻想ゆゑにわれあり
捨てよ書を捨てよ唇 ときめきのわが幻のバリケードかな
老いぼれの夢うごめきぬ一冊にさらばばらばら青春(はる)を砕きぬ

8月25日(土)
納涼盆踊り大会。
盆踊り夜のつどひのひとときに住みたる日々のリズム流るる
雪洞の灯りの揺れて踊る輪に駆け入り笑みし孫の真里子よ

8月29日(木)
足利の町を散策ーー足利学校にて。
(あ)けぬべし扁額「学校」に刻まれて人は語らやそのこころざし
学舎(まなびや)にわが血の燃へて年月(としつき)のまた説(よろこばし)からずや夕べ

ーー伊万里一万点収蔵の栗田美術館にて。
散りぬるを羞しき風に伝へてよ夢刺しとほす伊万里花皿

▲INDEX▲